本日ここに、第69回一関市議会定例会の開会に当たり、提案をいたしました議案などの説明に先立ち、今後の市政運営について、所信の一端と主要施策の概要について申し上げます。

1.はじめに 

我が国においては、人口減少や少子高齢化が進み、経済活動の中核となる生産年齢人口の減少が今後も続くものと見込まれており、全世代型社会保障制度への取組を進め少子高齢化という課題に対応していくこととしております。

一方、地方においては、東京一極集中が強まる中、多くの地域において人口減少の流れは続いており、地方が直面している様々な課題の解決のため、それぞれの特色を生かして、自らのアイディアで未来を切り拓く取組を進めていく必要があります。 

2.節目の年、将来世代のために

当市を取り巻く社会経済情勢は、少子高齢化の進行や一関を代表する企業の閉鎖、撤退など厳しいものがありますが、このような時代であればこそ20年先、30年先を見据えて将来世代のために、しっかりとした施策を打ち出していく必要があります。
今議会に提案している平成31年度予算については、市の総合計画の将来像に掲げている「みつけよう育てよう 郷土の宝 いのち輝く一関」この実現に向けた取組を着実に展開していくため、これまで進めてきた施策の継続を基本としながらも、「節目の年、将来世代のために」ということを念頭に予算編成を行ったところであり、その予算規模を648億円としたところであります。 

3.新たな可能性を拓く新時代のまちづくり

平成31年度は、平成の次の時代の始まりであり、私はILCの光が差し込む新時代への幕開けの年になると確信しており、新たな可能性を拓く新時代のまちづくりに向け、四つの項目に重点を置いて取り組んでまいります。

(1) ILCを基軸としたまちづくり

一つ目の項目は、ILCを基軸としたまちづくりであります。
私はこれまで、関係機関と連携してILCの実現に向けた取組を進めてまいりました。
昨年12月に、日本学術会議は「国際リニアコライダー計画の見直し案に関する所見」において、財源の国際分担など現状において不明確であるとする一方で、ILCの学術的意義を認めるとともに、高度研究人材が世界に輩出される拠点としての意義は大きいと評価をしたところであります。
今、ILC実現の鍵は、日本政府の判断に委ねられています。
私は、政府に対し早期に意思表明を行うよう、関係団体、関係自治体と連携して、要望活動を展開してまいりましたが、政府判断が間近に迫っている今、これまで以上に積極的な要望活動を行うとともに、ILCの最新の動向を可能な限り市民の皆様にお知らせし、さらなる理解促進に努めて、ILCの誘致実現のため不退転の決意で臨むつもりであります。 

(2) 資源・エネルギー循環型のまちづくり

二つ目の項目は、資源・エネルギー循環型のまちづくりであります。
資源・エネルギー循環型のまちづくりによる「エネルギーの地産地消」の取組を今まで以上に推進してまいります。
当市の豊富な木質バイオマスの活用に向けて、市民による集材活動をはじめとする地域に根差した木質バイオマスの利用促進や、東山小学校へチップボイラーを導入するなどの取組を進め、地域資源のさらなる活用を図ってまいります。

廃棄物の減量化をさらに進めるためには、家庭や職場の取組が不可欠であることから、市民の皆様、企業や事業所の協力をいただきながら、排出抑制や資源化に向けた各種事業を推進し、資源・エネルギー好循環のまちを目指してまいります。

また、当市からの提案をきっかけに実現した、2020年東京オリンピック・パラリンピックのメダルをリサイクル金属でつくる「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」に、全国の1500を超える市町村や多くの市民の皆様が参加し、小型家電の回収にご協力をいただいているところでありますが、プロジェクト終了後においても、引き続き使用済み小型家電回収に取り組み、資源の活用を図るとともに、オリンピック・パラリンピック東京大会以後の大会でも、この取組を継続するよう国際社会に要請してまいります。
 

(3) まち・ひと・しごとの創生

三つ目の項目は、「まち・ひと・しごとの創生」への対応であります。

➀ 人口減少社会における持続可能なまちづくり


当市においても、ほかの多くの地方都市と同様に、若者が進学や就職を機に地元を離れる傾向が続いております。特に就職を希望する新規高卒者の昨年春の管内就職率を見ると47.9パーセントとなっており、半数以上が一関市外に就職しているのが現状であります。
若者の地元定着、地元就職の促進を図ることがまちの活気につながっていくものと考え、次の取組を進めてまいります。

まず、働く場の確保が不可欠であることから、貸し工場や貸しオフィスなど新たな雇用の場の整備に努め、地域の産業に対する支援や若者のほか、女性やUIJターンの方々を中心とした起業支援に取り組んでまいります。
地元企業への理解促進を図るため、ハローワークやジョブカフェ一関、大学などと連携した企業見学会やインターンシップへの支援、さらには、中学校や高校で地元企業を紹介し、地元で働く魅力を伝える取組を進めてまいります。

また、新たに平泉町と連携して、民間法人が行っている給付型奨学金事業に出資するとともに、奨学金返還者への支援を行い、地元就職を促進してまいります。

若者の地元定着のためには、雇用の場の確保だけではなく、若者自身と「ふるさと一関」との心のつながりが必要であると認識しております。
心のつながりを育むものとして、私は、地域の歴史や文化が大きな役割を果たすのではないかと考えており、若者が地元に戻り、地元に根を張るための取組として、地域文化への理解促進とともに、その保存、伝承に一層取り組んでいく考えであります。
自分の生まれ育った地域の文化を誇りに思い、それを堂々と胸を張って語ることのできる、そういう若者を育てていく努力をすれば、自ずと地域の発展の大きな力になっていくものと信じているところであります。

さらに、当市への人の流れを創る取組も重要であることから、移住を希望している方に対して、当市での生活体験や各種支援制度の情報提供を強化するとともに、移住者の住宅取得に対する助成については、子育て世帯への支援を重視することとし、若い人材の移住定住を促進してまいります。
 

➁ 子育てしやすいまちづくり


平成30年3月末における当市の就学前の子どもの数は4,357人と前年同期と比べると174人減少しており、年々少子化が進んでいるところであります。
このことが当市の大きな課題であることから、子育て世代への支援を大きな柱として取組を進める必要があります。
一人の子どもが生まれてから社会人として自立するまでの成長過程に応じ、点から線へ、その線をより太いものへ、そして、その太い線がやがて面となるような切れ目のない支援を行うため、次の取組を進めてまいります。

まず、安心して出産ができるよう、不妊に悩む方への助成の対象者を拡充し、経済的、精神的な負担の軽減を図ってまいります。
また、この地域における周産期医療体制が将来にわたって安定的なものとなるよう、助産師の人材育成に向けた研修会やセミナーの開催など、関係機関と連携した取組による支援を推進してまいります。

地域全体で子育てを支援していく取組の普及、啓発に努め、交流の場を提供するとともに、様々な保育ニーズに対応した保育環境の充実を図るため、施設整備や事故防止対策に取り組むほか、認定こども園化の推進、保育人材の育成に努めてまいります。

小学生が、放課後に安全に活動できる居場所を確保するため、放課後児童クラブの整備を進めるとともに、医療機関を受診した際の窓口での一部負担金の支払いが不要となる対象を本年8月から小学生までに拡大し、受診環境の改善を図るなど、子育て世代への支援を充実させてまいります。

また、新たに子育て世代を対象とした自動車運転免許の取得に対する支援をしてまいります。

➂ 安全・安心に暮らせるまちづくり


平成30年12月末における当市の65歳以上の高齢者は41,512人と前年同期と比べ188人増加して、高齢化率も35.32パーセントと前年同期より0.67ポイント上昇しており、高齢者の健康増進や医療費の適正化を進めていく必要があります。
これからの人口減少社会にあって、高齢者は地域の担い手として期待されており、「支えられる側」から「支える側」へ、そして相互に支え合う関係を築くことが重要となっていると認識していることから、次の取組を進めてまいります。

高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられる地域づくりを進めるため、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく提供される「地域包括ケアシステム」の構築に努めてまいります。

地域の実情に応じた介護予防活動や地域の支え合い活動を進め、高齢者の社会参加、社会貢献活動を推進するとともに、地域において質の高い介護サービスを安定的に供給するため、介護人材の育成に向けた取組を推進してまいります。

高齢化の進行に伴い健康寿命を延ばす取組が求められており、そのため、市民一人ひとりが自ら健康づくりに取り組むことができるよう、各種健康づくり事業を推進するとともに、がん検診をはじめ各種検診の受診率の向上を図ってまいります。

また、自助、共助による防災意識の高揚を図ることも重要であります。
災害時に市民が円滑かつ安全に避難できるよう、自主防災組織の結成の促進と訓練の充実、防災リーダーの育成に努めてまいります。

➃ 地域の「宝」を生かすまちづくり


平成30年に当市を訪れた観光客数は250万人を超え、外国人観光客数も大きく伸びているところであり、当市の様々な地域資源を、地域の「宝」として捉え、その「宝」を生かすため、次の取組を進めてまいります。

観光ホームページの充実を図るとともに、知名度が高まってきている全国地ビールフェスティバル、一関・平泉バルーンフェスティバル、全国ご当地もちサミットなどのイベントを通じて、一関の観光情報を国内外に発信してまいります。

また、ふるさと納税の返礼品として地元の特産品や農産加工品などを活用し、販路拡大と新たな雇用の創出など、地域経済の好循環につながる取組を展開してまいります。

骨寺村荘園遺跡については、世界文化遺産「平泉」への拡張登録の実現に向けて、発掘調査や文献調査を継続するなど、県、関係市町と連携して取組を進めてまいります。
また、束稲山麓地域の世界農業遺産の認定についても、県と関係市町などが一体となり、実現に向けた取組を進めてまいります。
 

 (4) 東日本大震災からの復旧復興


四つ目の項目は、東日本大震災からの復旧復興であります。
東日本大震災から、間もなく8年の歳月が経とうとしております。
沿岸津波被災地では、三陸自動車道の整備も順調に進み、交通ネットワークが充実する中、震災復興をさらに加速させ、沿岸津波被災地と内陸部との交流を一層活発にするためには、いわゆる横軸道路となる路線の整備が極めて重要であり、県は東日本大震災後の復興支援道路として国道343号を横軸の一つとして示したところであります。
当市と陸前高田市を結ぶ交通の難所を解消するためには、新笹ノ田トンネルの整備が不可欠であるということを、様々な機会を通じ、県をはじめ関係機関に要望してきたところでありますが、残念ながら未だに進展がない状況であります。
私は、新トンネル実現のための署名活動に参加いただいた9万余名の思いを受け、平成31年度を新トンネル整備の第一歩の年となるよう不退転の決意で新笹ノ田トンネル整備促進期成同盟会とともに関係機関に働きかけを強めてまいります。

東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質による汚染対策については、農林業の生産基盤の再生、側溝土砂の最終的な処分方法など、未だ解決に至らない課題が多くあることから、早期解決に向けた国の対応を強く求めていくとともに、原発事故前の環境を取り戻すため、引き続き重点的に取り組んでまいります。
農林産物については、汚染された稲わらなどの最終処分に向けた技術的、財政的な支援について、引き続き国に働きかけるとともに、汚染されたほだ木や落葉層の処理を適切に進め、原木しいたけの生産再開、産地再生に向けた取組を支援してまいります。

また、当市に隣接する陸前高田市及び宮城県気仙沼市に対しては、震災以降継続して職員派遣などを中心とする後方支援を行っているところでありますが「近助」の精神のもと、この支援を継続してまいります。

4.中東北の拠点都市一関の形成


次に、中東北の拠点都市一関の形成に向けた平成31年度の取組について、総合計画のまちづくりの目標に沿って申し上げます。 

(1) 地域資源をみがき生かせる魅力あるまち 


まず一つ目の目標は、地域資源をみがき生かせる魅力あるまちについてであります。
まちを持続的に発展させていくためには、地域を支える産業を振興し、一人ひとりが力を発揮できるよう、活躍の場を創出することが必要であります。

当市の基幹産業である農業の振興については、持続的な発展を図る上で、農業所得の向上が不可欠であり、そのため、農畜産物の高付加価値化や販路拡大などの取組を一層強力に進めていくとともに、これからの担い手の中心となる新規就農者への支援の充実を図ってまいります。
地産外商については、これまでの首都圏での取組を踏まえ、ビジネスとしての展開につながる取組を推進してまいります。
さらに、基盤整備を契機とした集落営農の推進などにより、農村の振興とコミュニティの維持、発展を図るとともに、農業の多面的機能の維持、発揮のための地域活動や営農活動を支援してまいります。
また、新たに創設された森林環境譲与税を活用し、林業の成長産業化と森林資源の適切な管理の両立を図ってまいります。

工業の振興については、技能、技術習得研修による品質管理能力の向上を図り、地域企業の高品質、高付加価値なものづくりを支援してまいります。
また、関係機関との連携を強化し、地域企業間の交流を活発にしながら、新たな事業展開や農商工連携などの取組を支援し、地域内発型産業の創出に努めてまいります。
さらに、企業の設備投資などへの優遇制度や立地環境の優位性などをアピールし、企業誘致や事業誘致にも積極的に取り組んでまいります。

商業の振興については、関係機関と連携した経営相談や経営指導の充実、事業資金の低利融資や利子補給、起業支援など、工業分野も含めて、中小企業の経営の効率化、健全化を促進してまいります。
また、商店街の賑わいを取り戻すため、新規創業や事業承継などへの支援のほか、空き店舗への入居支援や集客につながるイベントの開催を支援してまいります。

地域経済を維持し、所得向上や雇用創出を図るため、一関・平泉エリアにおける観光地域づくりをマネジメントする日本版DMO候補法人を平泉町とともに支援し、観光客の増加による経済効果を実感できるよう取組を進めてまいります。
 

(2) みんなが交流して地域が賑わう活力あるまち


二つ目の目標は、みんなが交流して地域が賑わう活力あるまちについてであります。
活力ある地域となるためには、市内外で交流し、連携し、市民活動や経済活動を活性化させていくことが必要であります。

人々の交流の基盤となる道路については、広域的な幹線市道や生活道路の整備を進め市民生活の利便性の向上に努めてまいります。
また、道路環境、交通安全施設については、安全で快適に利用できるよう維持管理に努め、道路、橋梁の長寿命化を図ってまいります。

一関の歴史を振り返るとアイオン、カスリン台風の災害からの復旧、復興、これが一関のまちづくりの基本であったといっても過言ではありません。
今、国が実施する磐井川堤防改修事業が最終段階を迎えております。
磐井川周辺の整備も重要なまちづくりのひとつであることから、市民の憩いの場として一体的に活用できるような取組を進めてまいります。

公共交通については、交流の促進と地域の暮らしを支える公共交通ネットワークの形成を図るとともに、高齢化が進んでいる地域であるからこそ必要な公共交通を確保し、その利便性の向上に取り組んでまいります。

地域づくり活動を活発化させるために、地域協働体や自治会などの活動の支援を継続するとともに、地域おこし事業、いちのせき元気な地域づくり事業などにより地域づくり活動を支援してまいります。

市内における外国人在住者は増加傾向にあります。外国の方にも暮らしやすいまちづくりを進めていくため、多文化共生の推進に向けた取組や国際交流団体との連携を深め全市的な組織の設立を目指してまいります。

テレビ、ラジオ放送の難視聴対策は、当市にとって未だ解決に至らない大きな課題のひとつであります。
テレビ、ラジオ放送は、災害時の情報収集の手段として重要な役割を担っていることから、抜本的な解決を国や県に働きかけるとともに、テレビ共同受信施設の改修や維持管理などの支援を行ってまいります。

(3) 自ら輝きながら次代の担い手を応援するまち 

三つ目の目標は、自ら輝きながら次代の担い手を応援するまちについてであります。
将来にわたって誇れるまちづくりを進めるためには、家庭、地域、学校、企業、行政などが一体となり、次の時代を担う人材を育てることが必要であります。

次の時代を担う子どもたちの育成のため「教育に関する大綱」で定めた基本目標である「学びを広げ、人と地域が共に育ち、一関の未来を創る」この実現に向けて、教育委員会と連携して取り組んでまいります。
学校施設の整備については、東山小学校の校舎改築、室根地域統合小学校及び花泉地域統合小学校の新校舎建設に向けた取組を進めてまいります。
また、すべての小中学校の普通教室などへ冷房設備の整備を進めてまいります。

社会教育については、生涯の各時期に応じた多様な学習機会を提供するとともに、市民センターの指定管理者に対する、社会教育事業に関する助言や研修機会の充実を図ってまいります。
また、子どもたちの英語力の向上や国際感覚を養うため、小学生及び中学生を対象とした英語の森キャンプを実施し、グローバルな人材の育成に取り組んでまいります。

スポーツ振興については、誰もが生きがいや健康づくりを目的にスポーツを楽しむことのできる環境整備に努めるとともに、関係団体と連携し、各種教室やイベントを開催してまいります。

また、全国レベルで活躍する児童生徒を応援するとともに、国際大会などで活躍するアスリート育成のための支援を継続してまいります。
市のスポーツ施設や補助制度などを広く周知し、スポーツ合宿の誘致に向けた取組を進めてまいります。

(4) 郷土の恵みを未来へ引き継ぐ自然豊かなまち


四つ目の目標は、郷土の恵みを未来へ引き継ぐ自然豊かなまちについてであります。
豊かな自然は市民の心の支えであり誇りでもあります。この貴重な自然の恵みを確実に次の世代へ引き継いでいかなければなりません。

そのため、住宅用の新エネルギー利用設備の設置を支援するなど、新エネルギー、省エネルギーの取組を推進し低炭素社会の実現を目指すとともに、空家の適正管理、利活用などに取り組んでまいります。

汚水処理については、事業所と住宅が混在し、商業施設が密集している赤荻、前堀地域の公共下水道の管路整備を集中的に進めるほか、浄化槽の設置を促進するとともに、関係団体などと連携した普及活動により下水道などへの早期接続を促進し、公共用水域の水質保全と快適な生活環境の向上に努めてまいります。
また、施設の長寿命化に向けた予防保全型の維持管理と公営企業会計への移行により、持続的かつ安定的な経営基盤の確立を図ってまいります。

水道事業については、老朽化した施設の計画的な更新と耐震化、長寿命化を進めるとともに、効率的な維持管理と経営基盤の強化を図り、水道水の安定供給に努めてまいります。
また、水道未普及地域においても、早期に安全な飲用水が確保できるよう、飲用井戸の整備などに対し、集中的に支援してまいります。

(5) みんなが安心して暮らせる笑顔あふれるまち


五つ目の目標は、みんなが安心して暮らせる笑顔あふれるまちについてであります。
誰もが健康で心豊かに自立した生活を送るためには、市民みんなが一体となって安全な環境を築き、互いに支え合い、安心して暮らせることが必要であります。

健康で安心して暮らせるためには、地域医療の充実が必要であり、そのため、医療、介護分野における人材の育成が不可欠であります。
特にも市内の医師不足や偏在が深刻な状況にあることから、医師修学資金貸付事業の継続した取組を進めるとともに、医療、介護従事者の地元定着を図ってまいります。

障がいのある方々に対しては、障がい者自身が一層の自立と社会参加を目指せるよう、基幹相談支援センターと連携を図りながら、障害福祉サービスの提供体制の充実に向け取り組んでまいります。

国民健康保険については、厳しい事業運営が見込まれておりますが、引き続き県と連携を図りながら健全な運営に努めてまいります。

災害に強いまちづくりは、災害が発生した場合でも、その被害を可能な限り抑えることが重要であります。そのため、安全、安心な市民生活の実現に向け、地域防災計画の充実に努めてまいります。
また、各種災害に対応するため、消防施設や設備などの計画的な整備を進めるとともに、防災行政情報システム、FMあすもなどの多様な手段により、災害時の迅速で的確な情報提供に努めてまいります。
さらには、栗駒山火山防災対策として、緊急時の避難のために必要な情報をマップ化し、市民、登山客、観光客などに対して広く周知に努めてまいります。

治水対策は、市民の生命と財産を守り、安全な市民生活を実現するための根幹的な事業であります。一関遊水地事業をはじめとする治水事業の早期完成を目指して取り組むとともに、一関遊水地事業で計画されているJR東北本線磐井川橋梁の早期架け替えについて要望してまいります。
また、土砂災害の警戒が必要な危険箇所の点検を実施するとともに、土砂災害警戒区域などの情報や警戒避難体制の周知を図ってまいります。

交通安全及び防犯については、安全に対する意識の啓発を図るとともに、地域が取り組む交通安全、防犯活動を支援してまいります。

市民一人ひとりの「生きる」を支えるため、自死対策の取組を包括的に推進してまいります。

以上、平成31年度の取組の中から主なものを申し上げました。

5.市政運営の基本

当市は、これまで平成17年と平成23年の市町村合併や岩手・宮城内陸地震、それに続く東日本大震災など、様々な節目を乗り越えながら今日に至り、平成の次の時代が始まり、ILCの光が差し込む新たな時代の幕開けという大きな節目を迎えようとしております。
私は、まちづくりにおける節目とは、竹の節のように節の前後との連続性を持たせ、その地域をしっかり作っていく土台となるものと考えております。
竹は、節があるからこそ丈夫に成長し、まっすぐに伸びていくものであります。
節や節目というものは、成長していく上で欠かせない成長点でもあり、このことはまちづくりにおいてもあてはまると考えております。

私は、これまで、その節目、節目を大切にしながら市政運営に努めてまいりましたが、その基本的な考え方は、市民との協働によるまちづくりであります。
地域の将来を築いていくために、この協働のまちづくりは欠くことのできない仕組みであり、これをさらに充実させていく必要があります。
そのため、協働のまちづくりがより深く根付くよう理解を深めるための啓発を行うとともに、各地域、各分野でリーダーとなる人材の育成、地域企業の参画などを促進してまいります。

こうした中で、これまで申し上げましたような各種施策を推進していくためには、その裏づけとなる財政の健全性の確保が求められてきます。
そのため、市民起点に立った質の高い行政サービスを提供できるよう、組織の見直しや事務事業の民間委託、PFIなどの公民連携の取組の検討も含め、一層の行財政改革を進めてまいります。
また、公共施設等総合管理計画に基づき、持続可能な施設運営の取組を進めてまいります。

近隣自治体との連携、すなわち中東北エリアでの連携について、私はスローガンとして「中東北」というものを掲げ、その中核となるエリアの宮城県栗原市、同じく登米市、そして平泉町と連携した取組を進めてまいりました。そのスローガンが、今「栗登一平」という枠組みに進化し、具体的な取組となって動き出しております。
この連携が、より一層深いものになっていくよう取組を進め、スケールメリットを生かして地域課題の解決につなげてまいりたいと考えております。

6.おわりに

私は、県職員時代の平成5年、当時の岩手県知事であった故工藤巌氏からリニアコライダーの誘致に取り組むよう指示を受け、そのことを私に与えられた使命として、これまで、ILCの実現に向けた取組に全力を投じてまいりました。
ILCは、当市のみならず、東北や日本の未来を大きく変える可能性をもった、さらに言えば、世界の歴史を変える程の大きな意義をもったプロジェクトであります。
日本は固有の資源に乏しい国であり、科学技術を基盤とした国づくりが不可欠であります。そのためには、次の時代を担う若者たちを鼓舞し、有能な科学者、技術者を増やしていくことが必要になります。このことは、国民が科学に関しての知識を活用する能力、いわゆる「サイエンス・リテラシー」を高めることにもつながるものであると確信しております。
産、学、官、政、そして地域が連携し、日本が主導する初めての国際プロジェクトとして、さらには明日の日本を担う若者たちに夢や希望を与えるプロジェクトとして、宮沢賢治が愛したこの北上高地にILCが実現することを固く信じているところであります。

ILCの実現によって、この一関が、50年、100年以上にわたり、科学技術の国際研究拠点として世界をリードしていく地域になるためには「世界の国々から親しみをもたれるまち」「世界の国々から信頼されるまち」へと成長、発展していかなければなりません。
そのために、一ノ関駅周辺の整備をはじめ、資源・エネルギー循環型まちづくりの推進、最先端技術による新しい産業や新たな雇用の創出への取組を果敢に、かつ、戦略的に進めていかなければならないと考えております。
私は、この国際プロジェクトを一関発展の基軸として位置づけ、次の時代を担う子どもたちが、夢と、希望と、誇りを持ち、活躍できる「まち(地域)」となるよう「ふるさと一関」発展のために全身全霊で取り組んでまいる決意でありますので、議員各位並びに市民の皆様のご理解とご協力を心からお願い申し上げます。

以上、今後の市政運営についての所信の一端と、主要施策の概要について申し述べさせていただきました。