10月15日に開かれた市議会臨時会で2期目のスタートにあたり勝部修市長が述べた所信表明の全文を紹介します。

当面する課題、優先すべき政策

勝部修市長

私は「中東北の拠点都市一関の形成」という言葉を、全てを集約したスローガンとして掲げ、これまで、子育て支援や雇用対策、産業振興、災害に強いまちづくりなどを重点施策として市政運営に努めて参りました。
こうした取り組みを継続してきたことにより、中東北の拠点都市としての基礎づくりは概ね順調に推移しているものと認識しているところではありますが、一方で、一関市が直面する課題は山積しており、今、最優先で取り組むべき課題の一つは、東京電力福島第一原子力発電所事故に起因する放射性物質による汚染への対策であります。
生活空間における放射線影響の低減を最優先に取り組んで参ります。
特に、農林産物については、食の安全を守り、産地としての信頼を回復していくため、汚染された牧草・稲わら・堆肥・しいたけほだ木の一時保管と処理を前進させ、向う5年間で市内の汚染廃棄物の処分を終えるとともに、食の安全安心を発信することにより風評被害を払拭しふるさと一関を確実に取り戻して参ります。
また、現在、市内の道路側溝には、放射性物質に汚染された土砂が2年半を越えて放置されたままの状態で堆積しております。もはや、これ以上現状のままにしておくことは限界であります。
汚染土砂の現状を踏まえ、具体的な処理方策を速やかに示すよう、国に対して強く申し入れをして参ります。

2つ目の課題として、高齢化、人口減少社会への対応も大きな課題であると認識しており、人口減少と高齢化がさらに進む中、特にも高齢化社会への対応が課題となっております。
行政サービスのあり方を、社会構造の変化を見据えたものに、お年寄りにやさしいものに変えていくことが必要と認識しており、問題を先送りすることなく、具体的な検討を進めて参ります。
また、高齢化社会への対応とともに大きな課題となっているのが人口減少への対策であります。
これまでも、子育てしやすい環境づくりを重要施策として、子育て世代への支援を中心に、小学生までの医療費無料化、各種予防接種の無料化、保育料の軽減などに取り組んで参りましたが、子育て支援のさらなる充実に向け、総合的な視点で検討を進めて参ります。
さらに、急激な人口減少に伴う地域コミュニティの活力の低下が危惧されておりますことから、移住定住の受け入れに向けた環境整備や結婚活動支援に取り組むとともに若者の地元定着への支援を行って参ります。
子育て支援、キャリア教育、就職支援、地元定着支援へと子どもの成長過程に合わせ一連の施策により子育て世代を支援していく考えであります。

3つ目は、「協働のまちづくり」の推進についてであります。
国際リニアコライダーの国内候補地が北上高地に決まったところでありますが、私は、このプロジェクトを「一関発展の骨格」と位置付けて、市民の皆さんと一緒に国際化に対応したまちづくりに取り組んで参りたいと考えております。
この場合に重要なことは、「協働によるまちづくり」という視点であります。
私が4年前、市長に就任した時に感じたことは、市政に対する市民の皆さんの関わり方について、どちらかと言えば一方通行の傾向にあったのではないか、ということであります。
私は、この一方通行気味だった関係を「相互乗り入れ」の方向に転換することが必要と考え、市政のあらゆる課題について、可能な限り市民に情報を提供し、それに対する意見を引き出し、市政に対する関心を高め、その結果として市政への参加が実現していくという形、即ち、市民との協働。
これを市政運営の基本として、

  • 協働推進アクションプランの策定と、その着実な推進

  • いちのせき元気な地域づくり事業や地域おこし事業の実施

  • 地域づくりの活動の主体となる地域協働体の設立支援と強化

などを行って参りましたが、これらの取り組みは、緒に就いたばかりであります。
真の意味での協働の取り組みを実現するには、まだまだ時間を要します。しかしながら一関発展のためには、何としてもやり遂げなければなりません。
市民一人ひとりが、まちづくりの当事者としての意識を持って取り組めるよう協働の取り組みを進めて参ります。

この他、取り組むべき施策につきましては、市総合計画後期基本計画に基づいて確実に推進して参りますが、これら施策の展開に当たっては市民の皆さんの積極的な市政への参加をいただきながら取組んで参りたいと考えております。

市政運営の基本姿勢

当市の財政見通しは、平成17年合併に係る合併特例期間の10年が経過する平成28年度以降は、普通交付税の算定の特例、いわゆる合併算定替が段階的に縮減され、平成33年度以降は特例が適用されなくなることから、中長期的には厳しい財政状況が見込まれているところであります。
このため、将来のまちづくりに向けて、限られた財源をいかに有効活用していくかが重要であると認識しており、平成23年度に策定した第2次行政改革大綱及び集中改革プランを着実に実行し、歳入・歳出全般にわたる徹底した見直しを行い、事業の優先度を吟味し、不要不急の経費を節減するなど行政改革に努めながら、市民にとっての有効な施策を展開して参りたいと考えております。
現在の市総合計画は、市町村合併時に策定した新市建設計画及び新市基本計画を基本として策定したものであり、平成27年度を期限としているところであります。
この間、新市としての基礎づくりに加え、地域の特色を生かした事業への取り組みや地域課題に対応してきたところであり、8地域それぞれの地域課題についても、概ね解決が図られていると受け止めているところであります。
平成28年度以降の新たな総合計画を策定し、さらなる市勢の発展に結び付けて参らなければならないと考えているところであり、計画策定に向けて、早急に具体的な検討をして参りたいと考えております。
私は、市民の皆さんからの負託に応え、ただ今申し上げました諸課題の解決に向けて、一つひとつ正面から向き合い、全てを賭して、不退転の決意でやり遂げていく覚悟でありますので、議員各位並びに市民の皆さんのご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。

世界を観る眼で 一関を拓く

国際リニアコライダーは、世界中の研究者の英知を集め、人類の夢を実現する国際プロジェクトであり、我が国が学術研究分野で国際貢献できる数少ないプロジェクトであります。
また、私にとっても、このプロジェクトの実現は20年来の悲願でもあります。
世界に一つだけの、この実験研究施設を、この中東北に、このふるさと一関にこそ実現させたい、
「世界と日本の多様な文化が出会うまち」
「人類の夢が実現する科学のまち」
「世界が集い世界に羽ばたくまち」
そのようなまちづくりをしたい、
そう強く願っているところであり、強い信念を持ってこのプロジェクトの実現に取り組んで参ります。
私は、今を生きる全ての市民の快適で安全な日々の暮らしというものを何よりも大切にしなければならない使命を課せられていると認識しておりますが、同時にまた、次の世代を担う、子や孫のことも忘れてはならないものであると考えております。
新しい夢を持つことを忘れずに、また、その夢を現実のものとするため、私は、固い信念とともに、いささかの野望を抱いております。積極的、果敢に、そして情熱的に全てを賭して努力をしていく覚悟であります。
市民の皆さん! 
世界の人々から親しみをもたれる地域 一関
世界の人々から信頼される地域 一関 
そういう一関を一緒につくっていきましょう。

おわりに

結びになりますが、議員各位と私どもは、今後4年間の、新たなスタート地点に立っております。
議会と執行部が常に緊張関係を保ちながら切磋琢磨して、共に市勢発展のための車の両輪の如く、それぞれの職責を果たす。
これは、民主主義の原理であります。
私は、4年前の市長就任時以来、このことに忠実であるべきとの認識で今日に至っております。
山積する課題に正面からしっかりと向き合い、解決に向けて全力を傾注する覚悟でありますので、議員各位並びに市民の皆さんからの力強いご支援ご協力をお願い申し上げまして、私の所信表明とさせていただきます。