平成23年度施政方針
本日ここに、第31回一関市議会定例会が開会されるに当たり、平成23年度の施政の方針を申し上げます。
1 グローバル化と地域の自立
世界的な経済危機の荒波は、大局的には落ち着きを見せつつあるように思いますが、バブル崩壊以来、日本経済の足かせとなってきたデフレからの脱却が急がれるなど、我が国が受けたダメージはいまだに根深いものがあり、特に地方の経済情勢は依然として厳しい雇用環境にあるなど、危機的状況から抜け出せない状況に置かれております。
それに加え、アジア諸国の成長やTPP問題への対応など、グローバル化の波の中にあって、私たちは、常に新しい課題に立ち向かわなければなりません。
その危機を乗り越えるためには、私たち一人ひとりが直面する課題を自分の問題として受け止め、解決に向けて行動を起こすことが必要であり、これが地域としての自立につながっていくものと考えております。
2 課題に立ち会う平成23年度予算
私にとりまして、今回の予算編成は市長就任以来、2回目となりますが、この間、私は、雇用対策を柱とする経済対策や震災からの完全復興を重点施策とし、市民生活の安全安心を第一に市政運営に努めて参りました。
当面の課題であった震災復興は現実の姿となって震災前の機能を取り戻しており、また、企業誘致などの面では、他の都市に先駆けて明るい兆しが見え始めております。
昨年の第27回一関市議会定例会に、私は平成22年度の当初予算を「守りを固めて踏み出す予算」として提案、議決をいただき、経済対策や震災復興に向け一歩を踏み出しました。
迎える平成23年度は、市民生活のさらなる安定を図り、各種の施策を着実に前進させることが必要であると認識しており、多くの分野で明日につながる確実な一歩を踏み出す、さらに、市民生活に重要な分野においては、より力強く踏み出すことを念頭に予算編成に当たったところでございます。
景気がこのように低迷状態にある時こそ、思い切った対策を講じて、地域経済の活性化を図っていくことが必要であります。
そのため、中東北の拠点都市としての基礎を築くため早急に取り組むべき事業については、特別に事業予算を確保し、その事業実施を図ることとしたところであり、さらには、約37億円の経済対策を講じたところであります。
この結果、平成23年度当初予算の総額を604億5千9百万円、前年度に比べ2.7%増としたところであります。
当初予算の総額としては合併以降最大であった平成22年度予算をさらに上回る規模となっており、私は、この予算案を「中東北拠点都市への基礎づくり予算」という積極型にすることができたと考えております。
3 重点施策
(1)子育てを応援するまちづくり
それでは、平成23年度の重点施策について申し上げます。
重点施策の一つ目は、子育て支援を中心とした施策であります。
住みよいまち、安心して暮らせるまちをつくるための施策を一つひとつ積み上げることが、中東北拠点都市としての基礎をつくることにつながります。
そのためには、働く場の確保とともに、安心して子どもを育てられる環境づくりが必要であります。
このため、私は、医療費無料化の対象年齢を就学前から小学生に拡大し、子どもの健康増進と保護者の経済的負担の軽減を図って参ります。
また、子宮頸がん予防ワクチン、ヒブワクチンおよび小児用肺炎球菌ワクチン接種事業を全額公費助成により実施し、疾病の予防に努めて参ります。
さらに、子育ての各段階に応じ、必要な相談や支援が行えるよう、指導員などのスタッフの充実を図るとともに、発育期における支援が必要な子どもたちに対する特別支援教育を拡充して参ります。
これらの施策により、子育てしやすい環境づくり、そして定住促進へとつなげて参りたいと考えております。
(2)雇用対策(入口から出口まで)
重点施策の二つ目は、雇用対策と産業振興であります。
雇用を支えるための施策は、働く側、雇用する側、それぞれへの支援が必要であります。
また、就職する前のキャリア教育、職に就いてからのスキルアップ、職を失った場合の対応と、支援策も各段階に分かれております。
雇用対策は、いわゆる「職に就く」ということの入口部分から出口に至るまで、一貫した施策が必要でありますが、現在の国の施策は、入口と出口に軸足を置いた施策であり、県の施策も、これを補完するものが多いと認識しているところであります。
このような施策体系の中で、当市としては、国・県の施策に追従する形ではなく、入口と出口の真ん中、即ち、職に就いている間の人材育成のための施策として、働く側、雇用する側の双方に対する支援策を講じて参りたいと考えております。
具体的には、技能・技術などの資格取得を支援するほか、雇用の安定・定着を図るため、地域企業パワーアップ支援事業および中小企業の魅力発信力向上事業を実施いたします。
また、ふるさと就職支援事業を実施し、新規高卒者の地元就職を支援するとともに、介護保険事業所等人材確保支援事業などの拡充を図り、地域で働く人材の確保を支援して参ります。
産業振興(地産外商に挑戦)
産業振興については、当市の物産や観光資源のブランド力を高め、全国に売り込んでいくことに力を注いで参ります。
当市の農産物や特産品は、豊かな自然と優れた技術に培われ、全国に誇れるものが数多くあります。
「一関産」ということが、そのまま全国に通用するブランドとなるよう、首都圏をはじめとする県内外に、産地としての一関を、そして、その特産品を売り込んで参ります。
このため、新たに「地産外商」の看板を掲げ、販路拡大と情報発信の両面から強力に施策を展開することとし、一関のめぐみブランド化推進事業や一関の物産と観光展の開催、地域資源販路開拓事業などを強力に推進して参ります。
一関地方の豊かな自然や歴史文化は、私たち市民の誇りであるとともに、何ものにも代え難い貴重な観光資源であります。
本年は、平泉の文化遺産の世界遺産登録再挑戦の年であり、その登録実現を期すとともに、平成24年度に予定されている「いわてディスティネーションキャンペーン」のプレ・キャンペーンを展開し、各種PRイベントなどの取り組みを通じて、地域の観光資源を内外にアピールしていく必要があり、全国、そして海外を意識した発信力を高めて参ります。
さらに、栗駒山を囲む宮城県栗原市、秋田県湯沢市並びに東成瀬村と連携して、広域的な視点から新しい観光ルートを開発するなど、県境を越えた中東北としての観光商品づくりに取り組んで参ります。
(3)中東北の拠点都市一関の形成
次に、「中東北」の拠点都市一関の形成についてであります。
当市は、岩手・宮城の中間に位置しているだけでなく、自動車関連産業の集積など、産業面から見ても、東北の中心地域としての役割が大いに期待されております。
このため、基幹となる道路網の整備を進めるとともに、地域医療や観光などの県際連携を積極的に推進していくことが必要であると認識しております。
地域がグローバル化する中で、一関の将来を担う子どもたちが最先端の科学技術に触れる機会をつくることも大切であると考えており、子どもたちを筑波研究学園都市に派遣し、研究者と交流する機会をつくります。
また、将来における地域の特性を活かしたプロジェクトの導入に向け、学術研究都市としての構想策定にも取り組んで参ります。
磐井川堤防改修事業については、30年後、40年後の市街地の将来を見据え、世代間交流や街なか回遊などのエリアを設けるなど、市民の方々とともにゾーニングについて検討して参ります。
市民との協働については、平成22年度に策定した協働推進アクションプランを実践するため、市内30公民館の区域を基本とし、市民が主体となって進める横断的な組織づくりに取り組んで参ります。
また、市民主体の地域づくりを積極的に進めるため、市民活動団体が活動しやすい基盤づくりを促進するとともに、地域おこし事業をはじめとする各種施策により、取り組みを支援して参ります。
さらに、市全域を通じたコミュニティの醸成と災害防災情報の迅速な提供をめざし、コミュニティFMラジオ局の開局に向けて、準備を進めて参ります。
私は、市民の声を市政に反映させるためには、現場での視点が大切であると認識しており、昨年、初めて実施した移動市長室を通じて、地域の方々と多くの対話を重ねることができ、地域の皆さんの思いの一端に触れることができました。
平成23年度におきましては、この移動市長室の実施のほか、いちのせき元気な地域づくり事業を拡充し、市民との創意工夫により、市全体の活性化につなげて参りたいと考えております。
平泉文化遺産の世界遺産登録に向けた支援については、登録実現に向けて最大限の支援を行うとともに、登録実現後は、県が企画実施する「いわて平泉年」の取り組みと連携し、関係機関とともに登録の盛り上がりを地域づくりに活かして参ります。
また、「平泉ナンバー」の実現に向けた運動を強力に進めて参ります。
以上、平成23年度の重点施策について申し上げました。
次に、分野別の主な施策について、総合計画基本構想のまちづくりの目標に沿って申し上げます。
4 分野別の施策
(1)地域資源を生み育て賑わいと活力あふれるまちづくり
第1に「地域資源を生み育て賑わいと活力あふれるまちづくり」の施策について申し上げます。
農業については、米、畜産、園芸作物などにおいて、全国に誇れる品質の高い多彩な農畜産物が生産されていることから、生産体制の強化と担い手の育成、高付加価値化と販路拡大を総合的に進めて、所得の向上や活性化に結びつけ、農業、農村の振興に努めて参ります。
農畜産物のブランド化については、岩手南農協・いわい東農協やいわて南牛振興協会と連携し、情報発信力を高めながら、消費者に評価され、信頼される産地づくりをめざして参ります。
担い手の育成については、関係機関と連携し、経営感覚に優れた農業者や効率的な営農組織の育成に努めるとともに、新規就農や農林業分野での新たな雇用、さらには、加工・販売など農業の6次産業化に向けた人材の育成に努めて参ります。
集落営農や農地保全については、中山間地域等直接支払制度や農地・水保全管理支払交付金などを活用した取り組みを支援して参ります。
水田農業については、需要の動向を踏まえて、地域の特徴ある特別栽培米や有機栽培米をはじめ、安全・安心でおいしい米づくりを促進するとともに、水田の基盤を活かした作物再編を進めて参ります。
また、国の農業者戸別所得補償制度については、新たに畑作物の所得補償が加わり本格実施となることから、経営の安定化と国内生産力の確保を図るとともに、戦略作物への作付転換を促進し、食料自給率の向上と農業の多面的機能の維持をめざすため、関係機関・団体と一体となって、その推進と活用に努めて参ります。
園芸・特産作物については、なす、トマト、小菊、乾椎茸を中心とした生産振興策を講じ、市場に信頼される安定産地の確立をめざすとともに、地産地消の拡大を進めて参ります。
ハクビシンや熊などによる農作物の被害対策については、一関市鳥獣被害防止対策協議会を中心に、その対策に取り組んで参ります。
畜産については、経営基盤の確立や優良素牛の導入による能力と品質の向上、公共牧場の効果的な活用促進により、経営体質の強い畜産農家の育成に努めて参ります。
また、県との連携により、口蹄疫、高病原性鳥インフルエンザなどの家畜防疫対策に取り組んで参ります。
花泉農業開発センターおよび大東農業技術センターを統合し、研究成果に関する情報提供や研修を通じて、生産技術の向上、農産物加工などの取り組みを促進し、農業の振興を図って参ります。
農業生産基盤の整備については、一関第1地区などの整備を促進するとともに、新たに山口地区に着手するなど、県と密接な連携を図りながら、ほ場整備事業を促進して参ります。また、必要な予算の確保を、国、県に対し、強く要望して参ります。
農業用施設の保全については、ため池等整備事業や農業水利施設保全対策事業および土地改良施設耐震対策事業により、新たに瑞山地区に着手するなど、施設の適切な更新や改修を行い、機能確保と長寿命化を図って参ります。
林業については、市有林や民有林の除・間伐を進め、森林の健全な育成と資源の活用を促進するとともに、CO2の削減や水源の涵養など、森林の持つ公益的機能の維持増進を図って参ります。
また、国の森林・林業再生プランに基づく、森林整備計画の見直しや森林経営計画制度の創設に対応し、森林組合との連携を図り、適切な森林施業の実行に取り組んで参ります。
なお、TPPへの対応については、全産業分野にわたる日本としての産業の形づくりにつながる大変重要な課題と捉えており、国民的な議論が深まるよう、国に対して慎重な対応を要請して参ります。
工業については、企業における人材育成の視点と経営強化の視点の両面から支援して参ります。
人材育成については、一関高専が設置する「(仮称)中東北ものづくり技術者育成支援センター」との連携により、企業の核となって活躍できる質の高い技術者の養成を推進するほか、当市を会場に品質管理検定を実施することにより、地域企業の品質管理能力を高めるなど、世界に通用する高品質なものづくりを支援して参ります。
経営強化については、首都圏で開催される展示会への企業の積極的な出展など、情報発信を支援して参ります。
また、工業団地のリース制度や立地企業の設備投資に対する助成措置などにより、積極的な企業誘致を展開するとともに、新たに立地する企業の操業に際しては、新規採用者の人材育成を支援するなど、フォローアップに努めて参ります。
一関東第二工業団地については、立地企業の早期操業を支援して参ります。
雇用対策については、地域企業パワーアップ支援事業などのほか、求職者を対象とした情報化研修の実施や職業訓練施設を活用した離職者の再就職訓練事業を支援するとともに、新たにキャリア教育支援についても取り組んで参ります。
求職者への相談体制については、本庁内の無料職業紹介所、千厩支所内の「ふるさとハローワーク」を運営するほか、関係機関・団体と連携しながら、一人でも多くの採用が実現するよう、地域企業に対する要請活動を行うなど、雇用機会の創出に積極的に取り組んで参ります。
商業については、中小企業振興資金の融資枠を確保しながら融資制度の活用を図り、中小企業者への支援を図って参ります。
また、一関商工会議所や地元商店会とも連携しながら、ど市、互市、夜市などの各種イベントを通じた商業振興を図るほか、一関市連合大売り出しでの共通商品券事業を支援して参ります。
観光については、増加が見込まれる外国人観光客にも対応するため、平泉と市内の観光地を周遊するパンフレットなどを作成するほか、観光地を結ぶ二次交通の整備や新幹線一ノ関駅における観光案内を強化するなど、観光客の利便性の向上に努めて参ります。
物産については、関係団体の活動を支援するとともに、産業まつりや姉妹都市である福島県三春町、友好都市である埼玉県吉川市や気仙沼市など、交流のある都市との物産と観光展などを通じて、地場産品の宣伝と販路拡大に努めて参ります。
国土調査については、地籍調査事業により、地籍の明確化を図り、土地利用の高度化に資するため、北霻霳地区などの調査を計画的に実施して参ります。
(2)みんなで支え合い共に創る安全・安心のまちづくり
第2に「みんなで支え合い共に創る安全・安心のまちづくり」の施策について申し上げます。
市民の健康づくりについては、健康いちのせき21計画および食育推進計画の周知啓発に努めながら、市民の自主的な健康づくりや健全な食生活のあり方について、意識の高揚を図って参ります。
健康づくりの拠点施設である一関保健センターについては、子育て支援部門などを併設した新たな「保健福祉センター」として整備するため、その基本設計に着手いたします。
健康診査については、疾病の早期発見、早期治療を図るため、循環器系健康診査をはじめ、各種がん検診や妊婦健康診査などを実施して参ります。
国民健康保険については、特定健康診査の受診促進による被保険者の健康増進や各種制度の周知、税収の確保を図り、事業の健全な運営に努めて参ります。
後期高齢者医療については、岩手県後期高齢者医療広域連合との連携を密にしながら、保険料の収納確保に努め、制度の適切な運営に資して参ります。
地域医療については、新たに地域医療・介護連携推進事業に取り組み、地域における医療機関相互の連携や機能分担、医療と介護の連携体制づくりを進めるとともに、長期的な視点から医師確保を図るため、医師修学資金貸付事業を実施して参ります。
また、医師会などの協力をいただきながら、休日当番医制事業や小児・成人夜間救急当番医制事業などにより、初期救急医療の確保に努めて参ります。
さらに、市民フォーラムの開催などにより、医療機関の適正受診やかかりつけ医についての住民意識の啓発に努め、県立病院などの負担軽減を図るとともに、医療機関、市民、行政、それぞれの役割や連携を強化しながら地域医療体制の充実を図って参ります。
子育て支援については、第3子以降の保育料無料化のほか、保育の一層の充実に向け、川崎保育園において0歳児保育を開始し、また、0歳児保育を実施しているすべての市立保育園において、生後2カ月からの受け入れを行って参ります。
さらに、発達の遅れが認められる児童などの健全な成長をうながす「かるがも教室」を拡充し、就学前から指導や訓練を行う、早期療育事業の一層の充実に努めて参ります。
また、生後4カ月までの子どものいる全ての家庭を保健師または助産師が訪問し、母親への育児に関する情報提供や不安・悩みへの相談に対応するとともに、婦人相談員の増員やDV被害者を対象とした緊急一時宿泊事業の創設により、支援が必要な女性に対する相談体制の充実を図って参ります。
障がい者福祉については、地域におけるきめ細かな就労支援・相談支援体制の充実や、日中の活動の場として新たに生活介護事業所および自立訓練事業所の整備促進を図り、障がい者の地域での生活を支援するとともに、多様なニーズに対応するため、障がい者福祉計画の見直しを行います。
高齢者福祉については、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活ができるよう、健康づくりや生きがいづくりの活動を支援して参ります。
また、特別養護老人ホーム入所待機者の解消に向け、施設の整備を促進して参ります。
さらに、ひとり暮らし高齢者や高齢者のみの世帯を支援するため、バスやタクシーの利用料の一部を助成する高齢者福祉乗車券交付事業の対象年齢を、80歳以上だったものを70歳以上に拡大し、社会参加の一層の促進を図って参ります。
今後さらに進行する高齢社会に的確に対応するため、一関地区広域行政組合が策定する第5期介護保険事業計画との整合を図りながら、高齢者福祉計画の見直しを行います。
生活保護世帯への対応については、適正な保護の実施に努めるとともに、その自立を支援するため、新たに社会参加推進プログラム事業を実施し、ボランティア活動などの社会参加や就労体験の場の提供に努めて参ります。
一関遊水地事業については、狐禅寺地区管理用通路および小堤の整備促進を図るとともに、磐井川堤防改修については、用地買収や家屋移転についての支援、協力を行うほか、国に対して、事業促進を要望して参ります。
なお、堤防改修工事に当たっては、市民行事や景観への影響を最小限に抑えるよう関係機関と協議して参ります。
また、伐採を余儀なくされる桜並木については、水害犠牲者を慰霊し災害復興事業を後世に伝えるという60年前の植樹の想いを引き継ぎ、市民と一緒に再生を図って参ります。
一関遊水地下流部に位置する狭隘地区の治水対策については、砂鉄川合流点から宮城県境までの川崎地域、花泉地域および藤沢町の区間について、関係機関との調整や事業支援を強く働きかけて参ります。
岩手・宮城内陸地震により被災した旧祭畤大橋および市野々原土砂ダムについては、災害遺構として活用し、市民の防災意識の高揚を図って参ります。
また、災害への備えとなる砂防えん堤の建設、嵩上げなどについて、国・県に要望して参ります。
消防防災については、近い将来、高い確率で宮城県沖地震の発生が予想されており、大規模災害に備えて、市内全域に防災情報を一斉伝達できるよう、防災行政情報システムおよび消防救急無線デジタル化などの実施設計に着手して参ります。
また、防災マップを作成し、市民の防災意識の高揚と被害の軽減を図るとともに、地上デジタル放送のデータ放送を活用し、防災情報を提供する仕組みを構築して参ります。
さらに、大規模災害発生時のボランティア活動に必要となる資機材の整備を行います。
土砂災害から住民の生命を守るため、土砂災害ハザードマップを作成し、警戒避難情報の周知を図って参ります。
木造住宅耐震改修工事助成事業を実施し、一般家屋の耐震化を図るとともに、緊急経済対策住宅リフォーム助成事業を実施し、雇用機会の創出に努めて参ります。
消防救急体制については、市民の生命・財産を守るため、防災拠点としての一関南消防署の建築や消防車両の更新、防火水槽の設置などを進めて参ります。
交通安全および防犯については、安全安心まちづくり市民大会の開催など交通安全および防犯思想の意識高揚を図るとともに、地域が取り組む防犯灯の設置を支援するなど、安全で住みよい地域社会の構築に努めて参ります。
消費生活相談については、本庁および千厩支所に消費生活センターを設置し、消費生活や多重債務に関する相談へ対応して参ります。
自殺対策については、うつ・自殺予防講演会や地区健康相談、地域での身近な存在となる傾聴ボランティアの養成講座などを開催するとともに、臨床心理士による「こころの健康相談」や保健師などによる訪問・相談体制の一層の充実を図り、自殺予防に努めて参ります。
(3)人を育み文化を創造する生きがいのあるまちづくり
第3に「人を育み文化を創造する生きがいのあるまちづくり」の施策について申し上げます。
人材の育成については、地域の活力を創造し、まちづくりを推進していく土台となるものであり、地域の将来を担う子どもたちが、しっかりとした勤労観・職業観を身に付け、さまざまな問題に柔軟に、かつ、たくましく対応し、社会人として自立できるようキャリア教育に取り組んで参ります。
また、読書は豊かな人間性や創造性を育み、人づくりに大きくつながることから、学校図書館への読書普及員の増員など読書環境の向上を図るとともに、人や地域を支える情報拠点として、一関図書館および花泉図書館の実施設計に着手して参ります。
なお、一関図書館の開設準備と市立図書館全館による一体的なサービス体制の構築を図るため、新図書館の開設準備室を設置いたします。
学校教育施設の整備については、平成25年4月の開校をめざし、(仮称)大東小学校の校舎建設に着手して参ります。
また、千厩小学校校舎、興田中学校校舎などの耐震改修工事を実施するとともに、山目小学校・東山中学校校舎の耐震補強・改修工事を進め、安全確保と教育環境の向上に努めて参ります。
スポーツ振興については、本年8月に全国高等学校総合体育大会の体操競技が当市で開催されますことから、大会の円滑な運営と全国からの選手・関係者の受け入れ体制を整えて参ります。
また、磐井川堤防改修事業の進捗に合わせ、一関水泳プールおよび青葉テニスコートの移転整備を進めて参ります。
男女共同参画については、平成28年度を目標年次とする第2次男女共同参画推進プランの策定を進めて参ります。
骨寺村荘園遺跡については、ガイダンス施設を開館するとともに、展示棟の建築に着手して参ります。
また、世界遺産の追加登録に向けて、調査研究や国との協議を進めて参ります。
なお、教育行政の具体については、教育委員長より申し上げます。
(4)人と情報が活発に行き交うふれあいと連携のまちづくり
第4に「人と情報が活発に行き交うふれあいと連携のまちづくり」の施策について申し上げます。
国・県道の幹線交通網の整備については、国道284号室根バイパスの早期工事着手のため、用地買収を促進するとともに、弥栄地区の道路改良について要望して参ります。
国道342号厳美バイパスおよび花泉バイパスについては、早期完成を促進するとともに、花泉バイパス以南から宮城県境までの整備促進について要望して参ります。
国道343号大原バイパスおよび主要地方道一関大東線生出・流矢地区については、関係機関と連携しながら整備促進に努めて参ります。
国道456号摩王地区の交差部については、関係機関と連携しながら整備促進に努めて参ります。
また、歩行者の通行環境改善を図るため、国道4号一関大橋以南の四車線化について要望するとともに、広域幹線道路となる(仮称)栗原北上線の県道昇格を関係市町一体となって要望して参ります。
市道については、医療、消防、工業団地などの基幹施設と地域を結ぶ重要な路線として、矢ノ目沢金沢線・清水原一関線、松川駅館下線、沖線などの整備を推進して参ります。
また、市民からの要望が多い生活道路や通学路への歩道設置についても、私自身がなるべく現地に足を運び、じかに見て状況を把握し、順次、整備を進めて参ります。
橋梁については、橋梁点検と修繕計画の策定を進め、長寿命化を図るとともに修繕費用の縮減に努めて参ります。
街路については、山目駅前釣山線の整備を進め、交通渋滞の緩和を図るとともに、中心市街地の回遊ルートとなる歴史の小道の整備に着手いたします。
バス交通については、平成22年度に実施した公共交通利用者予測調査結果をもとに、市営バスなどの運行のあり方について検討するほか、室根方面から磐井病院への直通乗り入れの試験運行を行い、利用者ニーズの把握に努めて参ります。
また、JR利用者など地域住民の利便を図るため、トイレが無い8カ所の駅前にトイレを整備して参ります。
一ノ関駅西口北駐車場については、拡張整備を図り、利用者の利便性向上に努めて参ります。
テレビ放送のデジタル化への対応については、本年7月の完全デジタル化に向け、中継施設の整備などの対策を進めるとともに、市が設置する「地デジ支援センター」を活用し、受信対策を進めて参ります。
また、光ファイバーの民間利用を促進し、携帯電話の通話不安定地域の解消、インターネットの光通信サービスエリアの拡大により、情報格差の是正に努めて参ります。
(5)水と緑を守り育み自然と共生するまちづくり
第5に「水と緑を守り育み自然と共生するまちづくり」の施策について申し上げます。
地球温暖化対策については、市民で組織する一関地球温暖化対策地域協議会と連携し、学習会の開催、広報紙の発行など、市民の意識啓発を図るとともに、住宅用太陽光発電システムの導入支援などによる新エネルギー・省エネルギービジョンの推進に努め、CO2削減に取り組んで参ります。
ごみの減量化、資源化については、市民の意識啓発を図るとともに、不法投棄防止対策専門員の配置および監視カメラの設置を行うなど、不法投棄を許さないまちづくりを推進して参ります。
公園については、一関東第二工業団地およ萩荘高梨地区に新たな公園の設置を行うとともに、既存の公園の整備および遊具の点検・更新など、適切な管理に努めて参ります。
簡易水道事業については、厳美・萩荘のほか、真滝・弥栄、舞川、興田・猿沢、磐清水・奥玉・小梨および田河津の簡易水道事業を推進し、水道未普及地域の解消に努めるとともに、施設の老朽化に伴う改修・更新についても実施して参ります。
水道事業については、新たに水道施設の耐震診断を実施し、施設の計画的な更新を進めて参ります。
また、水道施設管理システムの構築、前堀および上巻浄水場の整備などを実施し、安全な水の安定供給に努めて参ります。
公共下水道事業については、千厩地域を供用開始するとともに、一関、花泉、千厩および東山地域の供用区域を拡大し、快適な生活環境の向上に努めて参ります。
また、下水道未接続世帯への普及や合併処理浄化槽の設置を図り、水洗化の促進に努めて参ります。
景観形成については、市民が主体的に取り組む景観まちづくり活動への支援を行い、自然と共生するまちづくりを推進して参ります。
5 一関の明日を描く
以上、分野別施策の主なものを申し上げましたが、これらの施策については、将来を見据えた明確な目標を持って、計画的に進めていくことが何よりも必要であります。
平成18年度に総合計画基本計画の前期計画を定め、まちづくりを進めてきたところでありますが、平成23年度においては後期計画を策定し、新たな一歩をスタートさせることとしております。
当市の財政状況は、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」に基づく健全化判断比率などでは、国が定めている「早期健全化基準」以下ではあるものの、少子・高齢社会の進行、人口減少などにより、市の財政を取り巻く環境は、厳しさを増していくものと見込まれますことから、多様な市民ニーズや行政課題に的確に対応していくため、より一層、財政の健全化を図り、持続可能な行財政基盤の確立に努めていかなければならないと考えているところであります。
このため、行政改革大綱および集中改革プランの次期計画を策定するなど、行財政改革に取り組んで参ります。
新たなまち、新しいスタート
本年は、藤沢町との合併の年であります。
大きく、かつ、急速に変化する時代に対応していくためには、施策の確実な実行、地域としての基盤強化および地域間競争力を持つことが不可欠であります。
一関市と藤沢町がこれまで創り上げてきた、それぞれの資源を活かし、より深い絆と連携のもと、新たな地域づくりに邁進して参る決意であります。
建部清庵の教え
今、一関地方は人口減少と急速な高齢化の中にあり、地域の姿は大きく変化しようとしています。
私たちの生活の基盤となっているもの、地域のコミュニティを支えてきたものが形を変え、あるいは、失われようとさえしております。
郷土の先達である建部清庵は、民間備荒録という、飢饉を生き延びる術を著した我が国最初の書物の中で、実例を挙げながら、その対処法を紹介する一方、飢饉に備えて、食糧となる草木を栽培するといった事前の対策の重要性を訴え、その対策の責任は、肝煎や組頭といった村役人にこそあると断言しております。
私は、市政の責任者として、このような厳しい状況にある時であればこそ、建部清庵の教えに学び、地域課題の解決のため果敢に挑戦していく、そういう強い気持ちを持って取り組んでいくことにより、危機を希望へ変えることができると確信しており、希望あふれる一関の実現に向け、全力で取り組んで参ります。
議員各位並びに市民の皆様のご理解とご協力を心よりお願い申し上げ、平成23年度の施政方針といたします。
(平成23年2月22日 第31回一関市議会定例会)