本日ここに、第73回一関市議会定例会の開会に当たり、提案をいたしました議案等の説明に先立ち、今後の市政運営について、所信の一端と主要施策の概要について申し上げます。

1.はじめに 

令和という時代は、当市にとって、大きな分岐点と捉えております。
ILCの動向を踏まえつつ、一関の新しい時代のまちづくりに向けた検討を進めていかなくてはならないと考えております。
一方、大規模な自然災害が各地で発生し多くの被害が出ておりますが、地域住民の生命や財産を守り、安全、安心な地域社会を構築していくことが求められており、国土強靭化の取組を着実に進めていくことも重要な施策と認識しております。 

2.(S)さぁ (D)ダッシュ (G)元気に進もう (s)新時代

令和2年度は、総合計画前期基本計画の最終年度であります。
刻々と変化する社会経済情勢に的確に対応しながら、計画事業の着実な実施を図るとともに、令和3年度を初年度とする新たな総合計画を策定し、さらなる市勢の発展に結び付けていかなければならないと考えております。
今議会に提案している令和2年度予算については、市の総合計画で掲げた「みつけよう育てよう 郷土の宝 いのち輝く一関」という将来像の実現に向けた取組を展開していくため、これまで進めてきた施策の継続を基本としながらも、SDGsの理念を踏まえ積極的な予算編成を行ったところであり、その予算規模を641億円としたところであります。 

3.持続可能な発展のためのSDGsの実現

2015年9月の国連サミットにおいて「持続可能な開発目標」であるSDGsが全会一致で採択されました。
これは、国際社会全体の普遍的な目標としての2030年のあるべき姿に向けた道筋を示した羅針盤と言えます。
市勢のさらなる発展のため、このSDGsの理念を踏まえ四つの項目に重点を置いて取り組んでまいります。

(1) 未来につなぐ いちのせきのまち

一つ目の項目は、未来につなぐいちのせきのまちであります。
この一関のまちを未来につないでいくために、今、私たちが取り組むべきことが数多くあります。
その取組のキーワードがSDGsであります。
SDGsのゴールやターゲットは相互の関連性が重視されており、問題解決に向けた1つのアプローチが複数のゴールにつながっていく仕組みになっております。
そのため、SDGsに対する市と市民そして企業がこの理念を共有し、理解を深めていただくための活動に取り組んでまいります。
特にも、当市の豊かな環境を次の世代に引き継ぐため資源・エネルギー循環型のまちづくりを一層進めてまいります。

まず、廃棄物減量化、資源化について、有価物集団回収の対象品目の拡大や生ごみ減量機器購入への支援の拡充などを図り、市民の皆様、企業や事業所の協力をいただきながら、一層の推進に取り組んでまいります。

また、当市の豊富な木質バイオマスの活用に向けた取組としては、バイオマス産業都市構想に基づき、市民が主体の集材活動による地域に根差した木質バイオマスの利用を促進し、薪ストーブの普及や整備を進める室根地域統合小学校へのチップボイラー導入による需要の拡大を図り、地域資源のさらなる活用を進め、資源・エネルギー好循環のまちを目指してまいります。 

(2) ILCを基軸としたまちづくり

二つ目の項目は、ILCを基軸としたまちづくりであります。
ILCを取り巻く状況は、平成31年3月、日本政府が初めてILC計画への関心を表明いたしました。それを受け、高エネルギー加速器研究機構が国際ワーキンググル―プを設置し、ILC計画の推進体制や経費分担のあり方を文部科学省に提言したところであります。
また、令和元年10月には仙台市で開催されたILCに関する国際会議において、日本におけるILC建設を国際プロジェクトとして推進する「仙台宣言」が、世界の研究者の総意として発表され、さらには、令和2年1月30日には、日本学術会議のマスタープランの学術大型研究計画に位置付けられたことにより、ILC実現に向け、一歩一歩着実に前に進んでいる状況にあると捉えております。
このあとは、日本政府による判断を待つ段階となっております。そう遠くない時期に、必ずや世界に向け日本誘致へのメッセージが表明されるものと信じております。
私は、ILCを見据えた新しいまちづくりを、市民の皆様とともに考え、ともに実現できるよう、これからも全身全霊で取り組んでまいります。
 

(3) まち・ひと・しごとの創生

三つ目の項目は、人口減少への対応としてのまち・ひと・しごとの創生であります。
当市では、今後も人口が減少することが見込まれておりますが、その影響をできるだけ緩やかにし、持続可能なまちづくりを進めるため、次期まち・ひと・しごと創生総合戦略を策定し取組を進めてまいります。

➀ しごとづくり


当市においても、ほかの多くの地方都市と同様に、若者が進学や就職を機に地元を離れる傾向が続いております。特に就職を希望する新規高卒者の昨年春の管内就職状況を見ると、半数以上が一関市外に就職していることから、若者の地元定着の取組が重要であると認識しております。

若者の地元定着、地元就職の促進のため、若者や女性、UIJターンを希望する人を中心とした起業支援に取り組むとともに、地元企業に対し、新規学卒者やUIJターン就職者の資格取得などへの支援をしてまいります。
また、地元企業への理解促進を図るため、ハローワークやジョブカフェ一関、大学などと連携した企業見学会やインターンシップへの支援、さらには、中学校や高校で地元企業を紹介し、地元で働く魅力を伝える取組を進めてまいります。

当市の自然条件と地域資源を生かした産業振興も欠かせないものと認識しており、農業の持続的発展につながるよう、園芸ハウス団地の整備や地産外商による生産者のビジネス展開への支援に取り組んでまいります。
また、地域農業の発展には、新規就農者の確保が不可欠であることから、これまでの支援の充実に加え、農業経営の次世代への円滑な承継や農業法人への雇用就農を支援してまいります。
 

➁ ひとづくり(子育て支援)


少子化が進む当市にあって、子育て世代への支援は大きな柱として取組を進める必要があります。
一人の子どもが生まれてから社会人として自立するまでの成長過程に応じ、点から線へ、その線をより太いものへ、そして、その太い線がやがて面となっていくような切れ目のない支援を行うための取組を進めてまいります。

まず、子育てしやすいまちづくりの取組として、新たにロタウイルス予防接種を追加するなど、乳幼児の予防接種費用の助成を拡充してまいります。
また、天候に左右されることなく、親子で気軽に利用できる屋内型のあそび場の整備を進めるほか、子どもが医療機関を受診した際の窓口一部負担の現物給付について、現在、小学生までとなっている対象範囲を、令和2年8月から中学生までに拡大し、子育て世代の経済的負担の軽減を図ってまいります。

仕事と子育てを両立しながら安心して子育てができる環境づくりとして、保育施設の待機児童の解消と小学生が放課後に安全に活動できる居場所を確保するため、保育人材確保と放課後児童クラブ等の整備に努めるとともに、子ども食堂への支援を拡充してまいります。

女性の農業者が安心して出産、子育てができるよう、出産、育児期間における労働力の確保を支援してまいります。

小中学校のICT環境の整備を進め、子どもたちが未来社会を自立的に生き、社会の形成に参画するための資質、能力を育んでまいります。

➂ 地域(まち)づくり


高齢化が進む社会に対応していくためには、地域で安全に安心して暮らせる環境の整備や充実を図っていくことが必要であります。

高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられる地域づくりを進めるため、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく提供される「地域包括ケアシステム」の構築に努めてまいります。
地域の実情に応じた住民主体による介護予防活動や高齢者の社会参加、社会貢献活動を促進するとともに、日々の暮らしを支える助け合い活動の支援に努めてまいります。
また、高齢化の進行に伴い介護を必要とする高齢者が増加すると見込まれることから、介護人材の確保、育成、定着に向けた取組を推進してまいります。

健康で安心して暮らせるためには、地域医療の充実が必要であり、医療、介護分野における人材の育成、確保が不可欠であります。
市内の医師不足や偏在が深刻な状況にあることから、医師修学資金貸付事業や医療介護従事者修学資金貸付事業の取組を継続するとともに、医療、介護人材の確保に努めてまいります。
また、藤沢病院と自治医科大学とのこれまでの連携を大切にしながら、地域医療の確保に努めてまいります。
厚生労働省では、地域医療構想の実現のため、再編、統合の議論が必要な公立、公的病院を公表しました。
地域医療の確保に向け懸命に取り組んでいる中にあって、医療資源が不足する地域の実情を考慮せず、このような公表をされたことについて疑問を禁じえません。
国の適切な対応を求める要望を岩手県市長会を通じて提出しておりますが、今後も地域医療確保のため行動していくつもりであります。

災害に強いまちづくりには、災害が発生した場合でも、その被害を可能な限り抑えることが重要です。そのため、安全、安心な市民生活の実現に向け、令和元年に発生した台風19号の教訓を生かし、地域防災計画に基づく取組を進めてまいります。
併せて、安全、安心に暮らせるまちづくりに向け、自助、共助による防災意識の高揚を図ってまいります。 

 (4) 東日本大震災からの復旧復興


四つ目の項目は、東日本大震災からの復旧復興であります。
東日本大震災から、間もなく9年の歳月が経とうとしております。
三陸自動車道の整備も順調に進み、沿岸部の交通ネットワークが充実する中、震災復興をさらに加速させ、沿岸被災地と内陸部の相互交流を益々活性化するためには、新笹ノ田トンネルの整備が不可欠であるということを、様々な機会を通じ国や県に要望してまいりました。
しかしながら、未だに進展がみられない状況であることから、事業実施主体となる県に対し新トンネルの早期実現に向けた道筋を示すよう強力に働きかけてまいります。

東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質による汚染対策については、農林業の生産基盤の再生、側溝土砂の最終的な処分方法など、未だ解決に至らない課題が多く残されている状況の中で、復興期間内の解決に向けた国の対応を強く求めていくとともに、原発事故前の環境を取り戻すため、引き続き取り組んでまいります。

また、当市に隣接する陸前高田市及び宮城県気仙沼市に対しては、近いところが助ける「近助」の精神のもと、引き続き職員派遣などを中心とする後方支援を行ってまいります。

 

 

4.中東北の拠点都市一関の形成


次に、中東北の拠点都市一関の形成に向けた令和2年度の取組について、総合計画のまちづくりの目標に沿って申し上げます。 

 

(1) 地域資源をみがき生かせる魅力あるまち 

 

 一つ目の目標は、「地域資源をみがき生かせる魅力あるまち」についてであります。
まちを持続的に発展させていくためには、地域を支える産業を振興し、一人ひとりが力を発揮できるよう、活躍の場を創出することが必要であります。

農業の振興については、地域農業のあり方や中心的担い手への農地の集積、集約化による効率的な農地利用を定める地域農業マスタープランを推進していくことが重要であることから、県などの関係機関と一体となり、プランの実質化に向けた集落での話合いを支援してまいります。
また、産地の形成とブランド化に引き続き取り組むとともに、基盤整備事業の推進や有害鳥獣対策事業の強化により、生産意欲と生産性の向上を図ってまいります。
さらに、農業の多面的機能の発揮のための地域活動や地域の農村活性化活動への支援、束稲山麓地域の世界農業遺産の認定に向けた取組を進めるなど、農村の維持、発展を図ってまいります。

林業の振興については、森林環境譲与税を活用し、里山保全活動の支援など森林資源の適切な管理に取り組んでまいります。

工業の振興については、品質管理能力の向上を図り、地元企業の高品質、高付加価値なものづくりを支援してまいります。
また、関係機関との連携を強化し、地元企業間などの交流を活発にしながら、新たな事業展開や農商工連携などの取組を支援し、地域内発型産業の創出に努めてまいります。
さらに、企業の設備投資などへの優遇制度や立地環境の優位性をアピールし、企業誘致や事業誘致、また企業の事業展開の場の整備に積極的に取り組んでまいります。

商業、サービス業の振興については、関係機関と連携した経営相談や経営指導の充実、事業資金の低利融資や利子補給、創業支援などを行い、工業分野も含めて、中小企業の経営の効率化、健全化を図ってまいります。
また、商店街の賑わいを取り戻すため、起業や事業承継などへの支援のほか、空き店舗への入居支援や集客につながるイベントの開催を支援してまいります。

観光は、交流人口の拡大や地場産品の消費拡大、新たな雇用創出などにより、地域づくりや地域経済に大きな効果を生み出す産業であることから、当市の様々な地域資源を生かした取組を進めてまいります。
全国的に知名度が高まっている全国もちフェスティバル、全国地ビールフェスティバル、一関・平泉バルーンフェスティバルを当市の3大フェスティバルと位置づけ、そのイベントと併せ市の観光情報を国内外に発信してまいります。
また、当市を訪れる観光客は増加傾向にあり、特にも外国人観光客数が大きく伸びておりますが、取り組むべき課題は多くあります。その課題解決のため、観光協会などの関係団体と連携を図りながら、より広域的な視点で取組を進めてまいります。

(2) みんなが交流して地域が賑わう活力あるまち


二つ目の目標は、「みんなが交流して地域が賑わう活力あるまち」についてであります。
活力ある地域となるためには、市内外で交流し、連携し、市民活動や経済活動を活性化させていくことが必要であります。

 人々の交流の基盤となる道路については、広域的な幹線市道や生活道路の整備を計画的に進め、市民生活の利便性の向上に努めてまいります。
また、道路環境、交通安全施設については、安全で快適に利用できるよう維持管理に努め、道路、橋梁の長寿命化を図ってまいります。

磐井川周辺においては、まちと水辺が融合した空間の整備と活用を進めてまいります。

移住定住については、移住を希望している方に対する窓口のワンストップ化を図り、各種支援制度の情報提供やお試し移住の斡旋を強化し、Uターンや子育て世帯など新たな人材や若い世代の移住定住を促進してまいります。

また、いちのせきファンクラブ事業を拡充し、当市を身近に感じファンになってもらう取組を進め、「観光以上、移住未満」と言われる関係人口の創出を進めてまいります。

公共交通については、花泉地域の一部と藤沢地域の全域でデマンド型乗合タクシーの試験実証運行を行い、利用者ニーズと地域の実情を踏まえ、市民にとって必要とされる公共交通に再編し、市民の移動手段の確保に努めてまいります。

地域づくり活動については、地域おこし事業などにより、地域協働体や自治会などの自主的な活動を支援してまいります。

令和2年度の「全国川サミット」が「黄金(くがね)花咲く北上川~悠久の歴史と未来~」をテーマとして当市を会場に、また令和3年度には「奥の細道サミット」が当市と平泉町を会場に開催されることから、その開催に向けた準備を進めてまいります。

国際交流については、新たに設立された一関市国際交流協会が自主的な活動に取り組めるよう支援を行うとともに、同協会と連携を図りながら、多文化共生社会の形成に努めてまいります。

テレビ、ラジオ放送は、災害時の情報収集の手段として重要な役割を担っております。
市民の安全、安心が実現したと言うためには難視聴の抜本的な解決が不可欠であります。
国や県に対し強力に働きかけけるとともに、テレビ共同受信施設の改修や維持管理などの支援を拡充してまいります。

(3) 自ら輝きながら次代の担い手を応援するまち 

三つ目の目標は、「自ら輝きながら次代の担い手を応援するまち」についてであります。
将来にわたって誇れるまちづくりを進めるためには、家庭、地域、学校、企業、行政等が一体となり、次の世代を担う人材を育てることが必要であります。

次の世代を担う子どもたちの育成のため、「教育に関する大綱」で定めた基本目標である「学びを広げ、人と地域が共に育ち、一関の未来を創る」、この実現に向けて、教育委員会と連携して取り組んでまいります。

学校施設の整備については、室根地域統合小学校及び花泉地域統合小学校の新校舎建設に向けた取組を進めてまいります。

社会教育については、生涯の各時期に応じた多様な学習機会を提供するとともに、市民センターの指定管理者に対する社会教育事業に関する助言や研修機会の充実を図ってまいります。
また、小学生及び中学生の英語力やコミュニケーション能力の向上など国際感覚を養う取組を実施し、国際的視野を持つ人材の育成に取り組んでまいります。

次期いちのせき男女共同参画プランを策定し、男女共同参画社会の実現を目指してまいります。

令和2年度は、東京2020オリンピック・パラリンピックが開催され、市民のスポーツに対する関心が高まることが期待されることから、関連事業を積極的に展開してまいります。
また、誰もが生きがいや健康づくりを目的にスポーツを楽しむことのできるよう、東口体育館を開館するなどの環境整備に努めるとともに、関係団体と連携し各種教室やイベントを開催するなど、スポーツの振興を図ってまいります。
さらには、スポーツ合宿の受入について支援をしてまいります。
地域文化の伝承については、「本寺地区神楽」や「夏山神楽」のように、地域の伝統芸能であった神楽が復活し、伝承する取組が生まれていることから、地域の歴史や文化への理解をより深められるような環境整備に取り組んでまいります。

骨寺村荘園遺跡については、世界文化遺産「平泉」への拡張登録の実現に向けて、文献研究や発掘調査を継続するなど、県、関係市町と連携して取組を進めてまいります。

(4) 郷土の恵みを未来へ引き継ぐ自然豊かなまち 

四つ目の目標は、「郷土の恵みを未来へ引き継ぐ自然豊かなまち」についてであります。
豊かな自然は市民の心の支えであり誇りでもあります。この貴重な自然の恵みを確実に次の世代へ引き継いでいかなければなりません。

まず、汚水処理については、宅地化が進行し、事業所や商業施設が密集する地域への下水道の管路整備を集中的に進めるほか、浄化槽の設置を促進するとともに、関係団体と連携した普及活動により下水道などへの早期接続を促進し、公共用水域の水質保全と快適な生活環境の向上に努めてまいります。
また、施設の長寿命化に向けた予防保全型の維持管理と公営企業として健全な事業経営を行い、持続的かつ安定的な経営基盤の確立を図ってまいります。

水道事業については、老朽化した施設の計画的な更新と耐震化、長寿命化を進めるとともに、効率的な維持管理を図り、水道水の安定供給に努めてまいります。
また、水道未普及地域においても、早期に安全な飲用水が確保できるよう、飲用井戸の整備などに対し、集中的に支援を行ってまいります。

公園の整備については、新たに萩荘地区への整備を進めるとともに、遊具の安全点検や更新を行ってまいります。

また、住宅用の新エネルギー利用設備の設置を支援するなど、新エネルギー、省エネルギーの取組を推進し低炭素社会の実現を目指すとともに、空家の適正管理、利活用などに取り組んでまいります。

(5) みんなが安心して暮らせる笑顔あふれるまち 

五つ目の目標は、「みんなが安心して暮らせる笑顔あふれるまち」についてであります。
誰もが健康で心豊かに自立した生活を送るためには、市民みんなが一体となって安全な環境を築き、互いに支え合い、安心して暮らせることが必要であります。

高齢化の進行に伴い健康長寿の取組が一層重要となってまいります。
市民一人ひとりが自ら健康づくりに取り組むことができるよう、各種健康づくり事業を推進するとともに、がん検診をはじめ各種検診の受診率向上を図ってまいります。 
また、生活習慣病予防と重症化予防の取組の強化を図り健康の増進に努めるとともに、医療費の適正化につながる取組を進めてまいります。

がんの治療により医療用補正具が必要となる方に対して、その購入費用の一部助成を実施し、がん患者の療養生活の質の向上や社会参加を支援してまいります。

障がいのある方々に対しては、障がい者自身が一層の自立と社会参加を目指せるよう相談支援事業所との連携を図りながら、障害福祉サービスの提供体制の充実に向け取り組んでまいります。

また、支えあいや協働による福祉の充実を推進するため、次期地域福祉計画及び高齢者福祉計画の策定に取り組んでまいります。

国民健康保険については、厳しい事業運営が見込まれておりますが、引き続き県と連携を図りながら健全な運営に努めてまいります。

消防、救急、救助については、各種災害などに対応するため、消防施設や設備などの計画的な整備を進めるとともに、防災行政情報システム、FMあすもなどの多様な手段により、災害時の迅速で的確な情報提供に努めてまいります。

治水対策は、市民の生命と財産を守り、安全な市民生活を実現するための根幹的な事業であります。一関遊水地事業をはじめとする治水事業の早期完成を目指して取り組むとともに、一関遊水地事業では、供用開始に向け早期の地役権設定と、JR東北本線磐井川橋梁の早期架け替えについて要望してまいります。
また、土砂災害警戒区域などの周知、農業用ため池の防災対策、耐震性に問題のあるブロック塀除去、大規模盛土造成地の調査など地域防災上のリスク軽減を図る取組を進めてまいります。

交通安全及び防犯については、安全に対する意識の啓発を図るとともに、地域が取り組む交通安全、防犯活動を支援してまいります。

以上、令和2年度の取組の中から主なものを申し上げました。

 

5.市政運営の基本

これからの市政運営については、より一層グローバルな視点が求められてまいります。私はこれに対応するためには、SDGsの理念を踏まえた取組が不可欠であると認識しております。
何ができるかではなく、何をすればよいかを考えることが大事であり、戦略的に取り組むことが求められてきております。
当市の施策の形成過程や意思決定の際にSDGsの理念を取り入れ、事業を計画し実施してまいります。

また、この取組が市民運動的に市民や産業界に広がり、さらには当市のみならず、近隣自治体と広く連携し取組を進めることにこそ大きな意義があると考えております。
そのため、その中核となる宮城県栗原市、同じく登米市、そして当市及び平泉町、この「栗登一平」の連携が、より一層強固なものになっていくよう取り組むとともに、連携のスケールメリットを生かして地域課題の解決につなげてまいります。
また、「栗登一平」の連携のみならず、姉妹都市、友好都市をはじめ、歴史的ゆかりのある自治体との交流にも積極的に取り組んでまいります。

持続可能な地域を築いていくためには、協働のまちづくりが欠かせない仕組みであり、これをさらに充実させていく必要があります。
そのため、第2次一関市地域協働推進計画に基づき、協働のまちづくりがより地域に根付くよう理解を深めるための啓発を行うとともに、各地域、各分野でリーダーとなる人材の育成、地元企業の参画などを促進してまいります。

これまで申し上げましたような各種施策を確実に推進していくためには、その裏づけとなる財政の健全性の確保が求められてきます。
そのため、市民起点で質の高い行政サービスを持続的に提供できるよう、組織の見直しや事務事業の民間委託の推進、定型的な業務の自動化による業務の効率化など、一層の行財政改革を進めてまいります。
また、公共施設等総合管理計画に基づき、持続可能な施設運営の取組を進めるとともに、電力供給事業者の見直しによる維持管理経費の削減に努めてまいります。

6.おわりに

今、世界中で国や地域の将来を見据え取組が活発化しているSDGsは、人間の尊厳や自然環境との調和を大切にした持続可能な地域を創造する取組であります。
私は市長就任以来、「中東北の拠点都市一関の形成」をスローガンに掲げ市政運営に邁進してまいりましたが、その基本とするところはこのSDGsの理念と何ら変わらないものであります。
「バイオマス産業都市構想」や「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」だけではなく、子育て支援や教育環境の充実、産業振興の取組など、これまで一関市が取り組んできたまちづくりの歩みそのものが、このSDGsの取組であったといっても過言ではありません。

今後、ILCを日本で、この北上高地で実現するということは、世界でただ一つの、世界最先端の実験研究施設がある場所として世界から注目される地域となるばかりではなく、イノベーションを生み出す新たな産業への挑戦やさらなる技術進歩、多文化が共生する国際都市の形成など、これまでの日本にはない新たなモデルとなる地域を目指すことになります。
そのためには、SDGsの理念というものを、すべての市民が共有した上で、ここ一関を中心とした地域で実現させることによって、次の時代を担う子どもたちが夢と希望と誇りを持って活躍できる地域として、持続可能な地域につながるものと信じ取組を進めてまいります。
 

課題が山積する時代であるからこそ、新しい時代に夢を描き、その実現に向け取り組んでいく、そのようなまちづくりを市民の皆様とともに進めてまいる所存でありますので、議員各位並びに市民の皆様のご理解とご協力を心からお願い申し上げます。
以上、今後の市政運営についての所信の一端と、施政方針について申し述べさせていただきました。