新市二代目の一関市長となった勝部修市長は10月9日、市役所本庁舎に初登庁。

幹部職員を前に就任のあいさつを行いました。

このページでは、10月20日に開催された第25回市議会臨時会で勝部市長が述べた所信表明の全文を紹介します。

勝部修市長

本日ここに、一関市議会臨時会が開会されるにあたり、今後の市政運営について、私の所信の一端を述べさせていただきますが、その前に、過日の台風18号の被害について申し上げます。
台風18号は、10月8日に知多半島付近に上陸し、日本列島を縦断し、三陸沖に抜けました。
当市でも、災害警戒本部を設置して、万全な態勢で警戒に当ったところでございます。
幸いにも大きな災害は発生いたしませんでしたが、強風による住家・非住家の一部損壊、ビニールハウスなどの農業施設や農作物などに被害を受けました。
被害に遭われた市民の皆様に心よりお見舞い申し上げますとともに、私は、災害に強いまちづくりを進めることについて、決意したところであります。

さて、この度の選挙におきまして、見事ご当選の栄誉を得られました議員各位に対しまして、心からお祝いを申し上げます。
私も、市民の皆様から、今後4年間の市政運営を負託され、市政を担当することになりましたが、改めて、その責任の重さに身の引き締まる思いをいたしているところでございます。
一関市長として、市民の負託に応え、ふるさと一関の自立と発展のために全力を尽くして参りますので、議員各位、並びに、市民の皆様のご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。
私は、この度の選挙を通じ、市民の皆様の声を直にお聞きするとともに、それぞれの地域において、個性豊かな地域づくりに努力されている姿に接し、深い感銘を受けたところでございます。
また、豊かで美しい自然環境、魅力ある歴史、文化や伝統芸能など、一関が持つ高い潜在力を改めて肌で感じ取ることができました。
このような潜在する力を引き出しながら、市民の皆様の市政に対する期待にお応えすることが、私の使命であると決意を新たにしたところでございます。

私は、厳しさを増す雇用環境や人口流出、地域における医療確保の問題など、様々な課題が横たわる現状を見るとき、「今こそ、地域を守らなければならない、地域に活力を取り戻さなければならない」と強く感じたところでございます。
市内大手企業の相次ぐ年内工場閉鎖により、多くの市民が職を失い、或いは、県外の関連工場への配置転換が現実化するなど、雇用情勢は、かつて経験したことのないほどの危機的状況にあると言っても過言ではありません。
今、求められておりますのは、グローバル化に適合した力強い産業構造の構築であり、若者の雇用の場を確保し、県外への人口の流出に歯止めをかけることが急務であります。

また、地方分権が進み、地方自治体の果たす役割、責任が増大しているこの時こそ、将来を見据えた確かなまちづくりが肝要であり、同時に、安定した財政基盤の下で、少子高齢社会における医療、福祉、教育など、市民生活の基本とも言えるサービスを、効率的、効果的に提供していくための仕組みづくりも不可欠であると認識しております。 

三つの「きょうせい」を掲げて

このような状況下にありまして、私は、3つの「きょうせい」を掲げて、一関市政を担って参る所存でございます。

1つ目の「きょうせい」は、競い合いながら成長していく地域づくりであります。
岩手県南から仙台北部までの圏域を「中東北」と位置づけ、その拠点都市としての一関市の発展を目指す、攻めの地域づくりの「競生」であります。

2つ目の「きょうせい」は、お互いの存在を認め合って共に生きる社会を目指す取り組みであります。
生まれ育った地域で安心して暮らし、そこに住んでいることを誇りに思えるまちづくりを目指す、共に生きる「共生」であります。

3つ目の「きょうせい」は、市民と行政とが協働で取り組む仕組みの確立であります。
市民と共に行動する市長と市役所を目指す「協生」であります。

これによりまして、市役所のサービス力を向上させていきたいと考えております。
この3つの「きょうせい」を柱に、市民の幸せと地域の発展を図るため、私は、10の政策を掲げ、その実現に全力を注ぐ決意であり、その具体例をいくつか申し上げます。 

「中東北」の拠点都市を目指し

まず1つ目は、「中東北」の拠点都市一関の形成であります。
一関市は、岩手・宮城両県の政策調整の要になり得るところに位置していることから、両県の政策的課題協議の場を設置することについて働きかけるとともに、県際地域の文化的交流を積極的に推進して参りたいと考えております。

2つ目は、雇用対策であります。
雇用対策に待ったなしで取り組んでまいります。
先ず、職を失った方々へのセーフティーネット(安全網)を国、県との連携を強化しながら、進めて参ります。
また、生活相談や雇用相談と職業訓練の機能を関連づけた再就職支援のメニュー化を図るとともに、地元就職を希望する新卒者の全員が就職できるよう、受け入れ企業側に対する支援についても強化して参ります。

3つ目は、企業育成であります。
地元企業への技術移転を含めた事業誘致に積極的に取り組み、また、異業種間の情報交換を活発にし、新たなビジネス機会を創り出すためのネットワークを構築して参ります。

4つ目は、産業振興であります。
私は、一関市の第一次産業は、幅広くバランスが良くとれていると思っておりますので、生産のみならず、加工、流通、そして、販売までを一体的に取り組むための仕組みや、地場産品のブランド化に向けた首都圏向けの情報発信力を高めて参ります。
また、商店街の振興については、産業振興施策にとどまらず、文化施策にも着目した取り組みなどにより、人の行き来を取り戻すための努力をして参りたいと考えております。

5つ目は、教育・人材育成であります。
子供たちが、明確な目的意識を持って日々学業に取り組み、主体的に自己進路の選択・決定ができる能力やしっかりとした勤労観・職業観を身に付け、さまざまな問題にたくましく対応する社会人として自立できるよう、地域の総合力による「キャリア教育」を充実させて参ります。
また、科学技術に対する市民の関心を高め、学術文化研究機能の集積を目指して参ります。 

6つ目は、保健・福祉・医療の連携強化であります。
全世代、地域全体の参加による子育て環境の整備を推進するとともに、障がい者の雇用促進のため、積極的な取り組みを行います。
また、医療・介護・福祉の切れ目のないサービス提供が確保できるように、県および関係機関と、より確かな連携を深めて参りたいと考えております。

7つ目は、地域コミュニティーの自立支援であります。
地域の祭りや歴史、文化を守り伝える活動、NPO、ボランティア、自治会などが行う自主的活動など、地域全体を元気にさせる取り組みを支援して参ります。
合併により、市の枠組みが大きくなったからこそ、地域における、このような取り組みを支援していくべきと考えております。

8つ目は、環境対策であります。
地球規模の環境問題が叫ばれている今日、自然という財産を確かな状態で次世代へ引き継ぐことが私たちの責務であります。
このため、自然保護活動の推進や、各家庭、事業所などから出るゴミの減量化と資源リサイクルなどについては、全市民挙げて取り組む必要があると考えております。

9つ目は、昨年発生した内陸地震からの復興と教訓を生かしたまちづくりであります。
内陸地震の復旧工事は、国・県・関係機関各位のご尽力により、順調に進捗しているところでありますが、被災地の完全な復旧・復興には、もうしばらくの時間が必要であります。
引き続き、復興のため、ハード・ソフト両面から取り組むとともに、危機管理体制の確立に努めて参ります。

10番目として、平泉文化遺産の世界遺産登録に向けた支援であります。
私は、平泉町の世界遺産登録に向けた取り組みを尊重し、「一関市は平泉町の最大最良のパートナー」というメッセージを発しながら、市民ともども支援をして参りたいと考えております。
また、骨寺村荘園遺跡が世界遺産の構成資産として、追加登録に結びつくよう、最大限の努力をして参ります。

雇用対策を最重点に取り組み

以上、10の具体的な政策について述べさせていただきましたが、特にも最優先で取り組まなければならないのが、雇用対策と考えております。

アメリカ発の金融危機から始まった世界的不況は、日本経済を直撃し、雇用の縮小やリストラなど、大きな社会問題となりました。
現下の情勢は、政府の経済対策なども相まって、不況も底をつき、好転の兆しが見えてきたとの見方もありますが、地方には、未だにその実感がなく、大企業の工場閉鎖や事業集約に伴う社員の異動など、雇用の維持と離職者への支援対策、新卒者の地元定着支援が急務となっており、私は、この対策を最重点課題として取り組んで参ります。

また、平成17920日に新一関市が誕生してから4年が経過したところでありますが、市政推進のビジョンとして、市民の熱い思いで策定した新市建設計画、および、それをもとに策定された総合計画を基本に据えて施策を推進する考えであります。
行政だけではなく地域全体として、この計画に対する共通認識を持つことが大事であると考えており、市民の皆様とともに行動する協働のまちづくりに全力で取り組んで参ります。

また、これまで市が取り組んで参りました、藤沢町との合併研究会や、磐井川堤防改修事業に伴う一ノ関駅周辺整備事業等々、喫緊の課題が山積しておりますが、これら課題に正面からしっかりと向き合い、解決に向けて全力を傾注する覚悟でありますので、議員各位、並びに、市民の皆様からの力強いご支援ご協力をお願い申し上げまして、私の所信表明といたします。