本日ここに、第51回一関市議会定例会が開会されるに当たり、提案をいたしました議案等の説明に先立ち、今後の市政運営について、所信の一端と主要施策の概要について申し上げます。

 1.はじめに

わが国の経済状況についてでありますが、安倍内閣による経済政策、いわゆるアベノミクスの効果等により、東京圏などの大都市部や一部業種においては、明るい兆しが見えておりますが、当地域においては、未だ、景気回復が実感できていない状況にあり、地方と都市部の二極化の進行を懸念しているところであります。

このような中、政府は、魅力あふれる地方を創生し、地方への人の流れをつくるため、地方創生の方針や人口減少対策を盛り込んだ長期ビジョン及び今後5か年の政策目標などを示した総合戦略を閣議決定したところであり、地方の活性化に向けて、取組の効果が早急に浸透することが期待されているところであります。

その一方で、我が国の人口は、今後、少子化や高齢化により急激に減少していくことが予想されており、経済成長や地域コミュニティの維持が困難になるおそれがあります。
地方においては、この傾向はさらに強く、私は、このことに強い危機感を持っております。

そのため、人口減少問題の課題を多角的に分析し、施策を複合的に実施していくことが必要であると考えており、社会構造の変化を見据え、行政サービスのあり方についても、時代に合ったものへと抜本的に見直していくことが必要となっております。

平成27年度予算案をはじめとする議案は、当市の未来に向けて、重点施策を明確に位置付け、確実に実施するとともに、直面する課題や多様な市民ニーズに的確に対応していくため熟考を重ねたものであります。

2.未来に向けた 子育て応援予算

私は、市長就任以来、「中東北の拠点都市一関の形成」を政策の柱に掲げ、施策を推進して参りました。

実質1年目となる、平成22年度予算から平成25年度予算まで、それぞれ前年度の予算額を上回る積極型予算を、また、平成26年度においても厳しい財政状況の中、可能な限り積極的な予算編成をしたところであります。
東日本大震災により、道路などの社会資本や住宅のほか、放射性物質による汚染など甚大な被害を受けたところでありますが、震災からの復旧を復興に結び付ける取組や市独自の経済対策事業等を実施し、地域経済の活性化を強力に進めたことにより、放射性物質による汚染問題への対応の部分を除いて、私が目指す地域像の実現に向けて、概ね順調に推移してきていると認識しております。

こうした中、平成27年度予算については、大型事業が平成26年度でピークを迎えたことにより前年度当初予算額を、5.8パーセント下回る、662億4千4百万円としたところであり、直面する市政課題の解決に向けて、国際リニアコライダー(ILC)計画を「一関発展の基軸」と位置付けて、子育て世代への支援、高齢化と急激な人口減少への対応を重視した予算編成に努めたところであります。

 3.国際リニアコライダー(ILC)の実現とまちづくり

(1) ILCを基軸としたまちづくり

ILCの実現に向けては、ILCの意義と価値や将来のまちの姿、新たな産業、仕事などについて広く市民の皆さんに理解を深めてもらえるよう、自治会、企業、各種団体をはじめ、小学生、中学生、高校生までを対象に様々な機会を活用して、これまで、私自身が延べ130回を超える講演を行ってきたところであります。

国においては、昨年5月に文部科学省に「国際リニアコライダー(ILC)に関する有識者会議」が設置され、ILCの建設費や運転コスト、国際的経費分担や経済的波及効果等について、2、3年かけて検討することとされており、本年中には、中間報告が取りまとめられ、平成27年度中にも、最終的な報告がなされることが想定されております。

政府は、その報告を踏まえて日本への誘致の是非を判断すると見込まれており、早ければ、平成28年度にも、ILCの日本誘致を表明することが期待されております。
このように本年は、ILCの誘致、実現にあたって、正しく正念場であり、非常に重要な1年になると考えております。

市といたしましては、政府に対して、ILCを国際プロジェクトとして進めていくための国内体制を整備し、早期に日本誘致を表明するよう、関係自治体、関係団体と共に要望していくとともに、本年度実施した、サイエンスカフェのような市民向けの事業を継続することなどにより、ILCの意義と価値について、一層の普及啓発を図って参りたいと考えております。

 (2) 資源エネルギー循環型のまちづくり

私は、ILCを基軸としたまちづくりを進める中で、資源やエネルギーが循環するまちを目指して参りたいと考えております。

具体的には、一関地方で発生する一般廃棄物やバイオマスなどを資源として、再資源化やエネルギーを生み出し、活用することにより、地域内で資源やエネルギーを循環させようとするものであります。

昨年、庁内に設置した、資源・エネルギー循環型まちづくり推進本部において、
・太陽光や風力のほか、森林資源を活用したバイオマスなど地域の様々な資源を組み合わせてエネルギーを生み出す仕組みづくり
・効果的かつ効率的にエネルギーを生み出すためのごみの分別方法や処理方式の導入
などについて、調査、研究を行っているところであります。

また、エネルギーや環境について学習・研修機能をもち、国内外から多くの人が訪れるような、先進的な複合施設のあり方についても検討をして参ります。
ILC関連施設や平泉の世界遺産と共に、この資源エネルギー循環施設を、地域の発展に繋がる、世界最高水準の機能を備えた交流拠点施設にしたいと考えております。

私は、この取組を、一関のまちづくりに極めて重要なプロジェクトと位置付けて参りたいと考えておりますが、その実現のためには、市民の皆さんの協力が不可欠であり、市民と行政が一体となって、世界に誇れる、資源やエネルギーが循環するまちを目指して参りたいと考えております。

4.最優先で取り組むべき施策

 (1) 放射性物質による汚染問題への対策

それでは、平成27年度に最優先で取り組む施策として、大きく3点について順次申し上げます。

まず、一つ目は、放射性物質による汚染問題への対策であります。
東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質による汚染問題は最重要課題であり、早急に解決に向けた道筋を付けるため一つひとつ前に向かって取り組んでいかなければなりません。
原発事故前の環境を取り戻すために、市民の皆さんと共に、農林業の生産基盤の再生、側溝土砂の除去など、市民の安全安心に向けた対策を最優先の課題として取り組んで参ります。

農林産物については、産地としての信頼をより強固なものとするため、汚染された牧草などの一時保管と処分を進めるとともに、引き続き農林産物の放射性物質の測定を実施し、食の安全安心を発信することにより、風評被害の払拭に努めて参ります。

なお、農林業系放射能汚染廃棄物の処理については、一関地区広域行政組合と連携して取り組んでいるところであり、牧草については、現在、一般廃棄物との混焼により焼却をしておりますが、今後、牧草以外の農林業系放射能汚染廃棄物についても、国が設置する仮設焼却施設において、同様の処理をする計画としております。

このような中、原木しいたけの生産については、施設栽培での出荷制限が一部解除されるなど、明るい兆しもあり、一部の生産者は、生産再開に向けた第一歩を踏み出されております。
県内有数の産地を守るため、ほだ場の環境整備や施設整備をはじめ、露地栽培での出荷制限の一部解除や原木購入への支援などにより、生産意欲の向上と産地再生に取り組んで参ります。

道路側溝土砂の処理については、側溝機能が著しく損なわれ、土砂除去が必要な箇所について、行政区、自治会と一時保管場所の確保や保管方法の協議を行い、住民の皆さんのご理解をいただきながら、取組を進めて参ります。
なお、土砂の最終処分については、国に対して、具体的な処理方針を示すよう、引き続き強く申し入れを行い、早期解決に結びつくよう努力して参ります。

また、東京電力に対する損害賠償請求については、引き続き、県や県市長会などと連携して、早急な対応を求めて参ります。

東日本大震災から、間もなく4年が経とうとしております。
これまでも、復旧復興に向けて優先して支援に努めてきたところでありますが、今なお、避難先の住宅で生活せざるを得ない方が多数おられることから、県内の内陸部では初めてとなる災害公営住宅を建設し、住宅の自力再建が困難な方々の居住の安定を確保して参ります。

また、「近助」の精神のもと、隣りまちである陸前高田市、宮城県気仙沼市への職員派遣の継続など、沿岸津波被災地の復旧復興に向けた後方支援を続けて参ります。

  (2) 子育て世代への支援と人口減少社会への対応

最優先で取り組むべき施策の二つ目は、子育て世代への支援と人口減少社会への対応であります。
当市の本年2月1日現在の住民基本台帳人口は、12万4,190人であり、1年前に比べ、1,612人の減少となっております。
また、65歳以上の高齢者数は4万80人であり、前年比626人の増加、高齢化率は32.27パーセントであり、前年比0.91ポイントの増加となっております。
一方で、昨年の出生数は、757人であり、初めて800人を下回った一昨年に比べて、さらに少なくなっております。

 人口減少の影響は市民生活の様々な場面に及んでおり、人口減少に歯止めをかけるため、子育て支援や雇用対策などの若者の定住対策をはじめ、市外からの移住定住の促進などに努めてきているところでありますが、少子化の進行に歯止めをかけることは容易なことではありません。
中東北の拠点都市として、市勢の継続的な発展のため、引き続きこの問題を最重点課題と位置付け、若者が結婚し、子どもを生み育てやすい環境づくりに向けて、更なる施策の展開を図って参ります。

まず、子育て支援については、個々の事業から関連付けが可能な部分をそれぞれ連携、体系化させ、子育て支援、キャリア教育、就職支援、地元定着支援へと、子どもの成長過程に合わせて、保健、医療、保育、教育、就職、結婚などの各分野において、点ではなく、それぞれが線でつながる一連の施策をさらに推進し、切れ目のない子育て支援をして参ります。

このため、特定不妊治療を受けている方への助成額の拡充、全ての所得階層における保育園保育料の軽減や第3子以降の幼稚園・保育園保育料の無料化、予防接種の公費助成などを継続するほか、平成27年度において、新たに医療費無料化を中学生まで拡充し、子どもの健康増進と子育て世代の経済的負担の軽減を図って参ります。

また、子ども・子育て支援新制度の活用により、小規模保育事業所を増やすほか、保育士の確保を図り、待機児童の解消に努めて参ります。

本年4月に開所する新一関保健センターに、子育て支援担当課、子育て支援センター、かるがも教室等 市の子ども子育て支援部門を集約し、子育て支援の拠点と位置付け、体制を充実して参ります。

雇用情勢については、現在の有効求人倍率は1倍を超えており、一昨年から高い水準で推移し、改善傾向にある一方で、求人は、正社員よりも期間雇用やパートなどの短期間の雇用が多い状況であることから、引き続き、雇用する側、雇用される側、そして、それを支える側、それぞれへの支援を進めて参ります。

移住定住の促進については、地域コミュニティの維持と活性化を図るため、単に居住するだけではなく、住民同士あるいは移住者との交流を進めることが必要であると考えており、新たな人材を地域で受け入れるための環境整備に引き続き取り組むとともに、結婚を希望する男女の出会いの場づくりなど結婚活動への支援を継続して参ります。

また、一関・平泉定住自立圏共生ビジョンに基づき、平泉町と連携し、定住施策の推進を図って参ります。
さらに、産業経済や教育文化の交流連携など広域行政の推進に取り組んで参ります。

高齢者が、住み慣れた地域で自分らしい生活を送るためには、医療、介護、住まい、生活支援、介護予防が日常生活の場で適切に提供される地域包括ケア体制の構築が求められており、行政、地域、関係機関、事業者などがこれまで以上に連携し、高齢者の生活を支えていく必要があります。

このため、次期高齢者福祉計画及び一関地区広域行政組合が策定する第6期介護保険事業計画に基づき、限られた医療資源を有効活用した医療と介護の連携強化や介護サービスの拡充を図るとともに、地域包括支援センターなど相談支援体制の充実に努めて参ります。

高齢者世帯の見守りについては、地域包括支援センターなどの相談機関や民間事業者などと連携して、地域における見守り体制の充実に努めて参ります。
また、地域福祉計画を策定し、地域、事業者などと協働し、助け合いによる福祉を推進して参ります。

高齢者の生きがい、健康づくりについては、生活習慣病予防や介護予防を推進し、地域の中で生きがい、役割を持って生活できるような居場所づくり、出番づくりを支援するため、介護予防の担い手となるボランティアの育成に取り組むとともに、なのはなプラザ内に設置したシニア活動プラザの利用を促進し、シニア世代の社会参加や社会貢献活動を積極的に推進して参ります。

暮らしやすいまちをつくるためには、道路や上下水道などの都市基盤の整備が必要であります。

国道4号の交通安全対策の促進や復興支援道路に位置付けされている国道284号、342号及び343号の急カーブや急勾配、狭隘部の解消による道路網の強化を促進して参ります。
また、津波被災地の復興のためには、内陸との物流、産業振興の基盤となる新笹ノ田トンネルの整備が不可欠であり、その事業化に向けて、関係自治体と共に、取組を強化して参ります。
このほか、医療、消防、工業団地などの基幹施設と地域を結ぶ市道の整備や歩道の設置、また、橋梁の点検や修繕工事を進め、長寿命化を図って参ります。

市街地の回遊、散策、憩いの場として歴史の小道の整備を進めるほか、一関保健センター跡地を駐車場として整備して参ります。

水道事業については、水道未普及地域の解消を図るため、簡易水道事業の拡張を実施するほか、浄水場の建設など施設の改修、更新事業を実施して参ります。
公共下水道事業については、引き続き管路整備を進め、快適な生活環境及び公共用水域の水質保全の向上に努めて参ります。
また、水洗化率の向上に向け、下水道未接続世帯へ早期の接続を呼びかけるとともに、合併処理浄化槽の整備を進めて参ります。
併せて、これら都市基盤施設の長寿命化に向けた維持管理にも努めて参ります。

 (3) 「協働によるまちづくり」の推進

最優先で取り組むべき施策の三つ目は、協働によるまちづくりの推進であります。
地域、行政を取り巻く環境の変化に伴い、行政だけの取組や行政主導のまちづくりには限界が見えてきており、従来の行政主導型から地域と行政が連携して進める地域協働型への転換が不可欠であります。

協働のまちづくりをスローガンに終わらせることなく、全ての市民に、これから自分達の地域を築いていくために欠かせない仕組みであるということを十分に理解していただき、市民と行政が一体となって推進していくことが重要であります。
市民一人ひとりが市政への関心を高め、まちづくりの当事者としての意識をもって取り組めるよう、市民との協働を基本として市政運営にあたって参ります。

本年4月から、市内の公民館は市民センターに生まれ変わります。
これまでの公民館に、地域づくりの拠点としての機能を加え、多様な活動ができる施設とし、地域の特性を生かしたまちづくりを進めて参ります。

また、協働推進アクションプランの着実な推進を図るとともに、いちのせき元気な地域づくり事業や地域おこし事業などにより、地域づくり活動を支援するとともに、地域づくり活動の主体となる地域協働体の設立とその組織体制の充実を支援して参ります。

このほか、市民生活の足を確保するため、市民、運行業者、関係機関と協議しながら、持続可能なバス公共交通体系の確立を目指しており、予約利用型の乗合タクシーを試験的に実施するほか、料金体系や負担軽減制度などの検討を進めて参ります。

 5 重点施策:中東北の拠点都市一関の形成

次に、平成27年度の重点施策である、中東北の拠点都市一関の形成に向けた取組として大きく7点について申し上げます。

 (1) 明日を拓く人材育成と産業振興

まず一つ目は、人材育成と産業振興についてでありますが、
雇用対策については、昨年、3年連続で、新規高卒者の100パーセント就職を達成したところでありますが、引き続きジョブカフェ一関などの関係機関と連携して、若者の地元企業への就職、職場定着に積極的に取り組んで参ります。
また、新しく事業を起こす、女性や若者の起業支援に取り組むとともに、女性がいきいきと働くためのキャリアアップや就業支援に努めて参ります。
さらに、震災からの復旧復興への対応や支援に係る事業を実施する、震災等緊急雇用対応事業を実施し、雇用の場の確保と地域で働く人材の育成を支援して参ります。

次に、工業の振興及び企業の育成については、地域ニーズに応じた人材育成支援として技能、技術の習得を目指す研修の機会を設けるとともに、地域企業の品質管理能力の向上を図り、質の高いものづくりを支援して参ります。
また、関係機関との連携を強化して、地域の特性や資源を生かした振興を図るため、事業誘致への積極的な取組を進めるとともに、企業間の活発な交流を促進し、新産業、新技術の創出支援や農商工連携などの支援に努めて参ります。

さらには、立地環境や企業の設備投資に対する助成措置をはじめとした優遇制度など当市の優位性をアピールするとともに、多様なネットワークを活用した積極的な誘致活動を展開して参ります。
また、企業の初期投資を軽減し、当市への進出や地域企業の事業拡大などを支援するため、多様な企業ニーズに対応する新たな貸し工場の整備に取り組んで参ります。
併せて、操業開始時における新規採用者の人材育成や地域企業との連携を支援するなど、立地後のフォローアップに努め、当市への産業集積を図って参ります。

農林業の振興については、当市の基幹産業である農業の振興と農村地域のコミュニティの維持、発展のため、国の農林水産業・地域の活力創造プランに掲げられた施策を積極的に活用し、事業を展開して参ります。
当地方では、全国に誇れる品質の高い、多彩な農畜産物が生産されております。
JAや関係機関、団体と一層の連携を図ることにより、生産体制の強化や担い手の育成を軸に農畜産物の高付加価値化、6次産業化を進めるとともに、販路拡大など農業所得の向上に向けて取り組んで参ります。
また、農地の基盤整備事業を通じて集落営農組織の育成を図り、中山間地域をはじめとする農業・農村の活性化に努めて参ります。

当市の美味しい農畜産物を、優れた観光資源と共に全国に売り込んでいくため、積極的にトップセールスを行うなど「地産外商」の取組を展開し、一関のブランド力を高めて参ります。
また、引き続き、首都圏などでの情報発信や販路の開拓を進め、消費者ニーズを的確に捉えながら、一関ファンの拡大に努めて参ります。

林業については、東北有数の規模を誇る一関地方森林組合の組織力を生かした木材生産コストの削減や地元産木材の利用促進への取組が期待されるところであり、当市の林業振興施策などとの連携を強め、地域の林業振興と木質バイオマスなどの森林資源の活用を図って参ります。

当地方の歴史と伝統のある「餅」文化については、全国ご当地もちサミットや各種イベントなどの取組を通じて、引き続き全国に情報発信をするとともに、「2015年ミラノ国際博覧会」において、餅つきの実演と振舞いによるピーアールをして参ります。
一関・平泉バルーンフェスティバルについては、「2015熱気球ホンダグランプリ」として開催することとしており、全国地ビールフェスティバルと同様に、東北を代表するイベントに育てて参ります。

また、観光客の誘致に向けて、平泉の世界遺産と猊鼻渓、厳美渓などの周遊観光に向けた交通の確保を支援するとともに、仙台圏における観光キャンペーンを継続して参ります。

 (2) 教育環境の充実

二つ目は、教育環境についてでありますが、
教育委員会制度の改正に伴い、市長と教育委員で構成する総合教育会議を設置し、当市の教育の課題やあるべき姿を教育委員会と共有しながら、連携して教育振興を図って参ります。

幼稚園については、子ども・子育て支援新制度のもと、私立幼稚園の保護者負担の大幅な軽減を図るとともに、公立幼稚園についても、私立幼稚園との格差が生じないよう配慮し、子育て世代を支援して参ります。

学校施設の整備については、千厩地域の小学校の建設に向けて、用地取得、校舎建築の実施設計を行うほか、山目小学校プールの整備、桜町中学校特別教室棟の整備、磐井中学校北校舎の大規模改修、東山中学校校舎の耐震補強などを進めて参ります。

社会教育については、教育委員会との連携のもと、教育振興基本計画に定める施策の基本方向に沿って実施して参ります。

  (3) 健康長寿のまちづくりの推進

三つ目は、健康長寿のまちづくりについてでありますが、
私は、健康づくりは、イコール地域づくりであると考えております。
健康づくりは、高齢化社会が進んでいく中で、地域政策の中心となる分野であり、それぞれ個々の事業のみならず、互いに関連する事業を含めて検証し、新しい社会を見据えた政策を、より戦略的に打ち出していくことが重要であると認識しております。

また、高齢になっても、健康で日常生活を普通に送ることができるよう、即ち、健康寿命を延ばすことに、力を入れていくべきであると考えております。
さらには、豊かな自然、歴史、文化、芸術などに触れる機会を増やし、社会に参加していると実感できるような意識、いわゆる「生きがい」を持っていただくこと、そこまでを念頭において、事業を組み立てていくべきと考えております。

健康寿命が延びることにより、本人だけでなく、家族、隣近所も幸福感を得られます。
このことが、医療費の適正化、地域の活力維持にも繋がっていくと考えられ、健康づくりが、地域づくりに結びつくことになります。
健康で長生きすることが何よりであり、健康で長寿という「健康長寿」を重視して取り組んで参ります。

健康長寿のまちへ向けた取組として、新一関保健センターを健康づくりの拠点施設とし、生涯を通じて市民一人ひとりが、自ら健康づくりに取り組むことができるよう生活習慣病の発症と重症化予防、介護予防を含めた高齢者の健康づくり、こころの健康づくりを推進して参ります。

地域医療については、医療と介護を考える公開講座の開催などにより、引き続き、医療機関の適切な受診のあり方の周知に努めるとともに、限られた貴重な医療資源を守るため、地域の担い手である市民、医療機関、行政がそれぞれの役割分担や連携を強め、地域医療体制の強化を図って参ります。

また、医療・介護分野における人材の育成、確保が不可欠であり、医師修学資金貸付事業を継続するなど、医師確保に努めて参ります。
介護分野においても、介護人材の確保、介護技術の習得、介護職員の定着支援などを目的に、介護人材育成事業を実施して参ります。

特にも、医師確保については厳しい状況があり、本年度には、一時的ではありましたが、診療所常勤医師が不在となったところでもあります。
そのため、地域内における医療連携を強化するとともに、診療所との連携、調整を図るため、地域医療の支援を担当する職を新設いたします。

障がいのある方々に対しては、第4期障がい福祉計画に基づき、基幹相談支援センターと連携を図りながら、障害福祉サービス等の提供体制の確保に向けた取組を推進して参ります。

高齢者が、健康と体力の維持や増進を図りながら気軽にニュースポーツに触れ合い、高齢者相互の交流を深めるための事業を実施して参ります。

国民健康保険については、社会保障改革プログラム法に基づく改革の一環として、国保運営の都道府県化に向けた準備が進められております。
当市の国保運営については、引き続き厳しい状況が見込まれておりますが、平成27年度から、国の財政支援が拡充されることを踏まえ、被保険者の負担軽減を図るため、国保税率等の引下げを行います。

 (4)  文化、芸術及びスポーツの振興

四つ目は、文化、芸術及びスポーツについてでありますが、
文化、芸術の振興につきましては、市内の芸術文化団体や文化施設の指定管理者等との連携を図り、市民の多様で活発な文化芸術活動を促進するとともに、市民が優れた芸術に触れる機会の充実に努めて参ります。

スポーツの振興については、青少年の健全育成や地域住民の健康保持を図るため、スポーツ関係団体等と連携しながらスポーツ教室やスポーツイベント等を開催するほか、競技力の向上と気軽にスポーツを楽しむことができる環境の整備に努めるとともに、国内トップレベルのプレーに触れる機会を提供して参ります。

また、平成27年度には、「希望郷いわて国体・希望郷いわて大会」のリハーサル大会が実施されることから、各種団体や企業の協力を得ながら、オール一関で受入体制を整え、競技会場地として市民の関心を高めるとともに、大会運営について万全を期して参ります。

さらに、国内外の学会や会議、スポーツ大会等の当市での開催誘致に取り組んで参ります。

 (5) 環境対策

五つ目は、環境対策についてでありますが、
環境対策については、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素排出量の削減を図るため、引き続き住宅用太陽光発電システムの設置を促進して参ります。
また、公共施設への太陽光発電システムの導入や防犯灯、道路照明灯、公園灯、商店街街路灯などのLED化を計画的に進め、新エネルギー・省エネルギーの取組を推進するとともに、低炭素社会の実現に向けた意識啓発に努めて参ります。

ごみの減量化、資源化については、古着や小型家電の回収を推進するほか、資源集団回収事業などの活動を支援し、環境意識の高揚を図るとともに、不法投棄やポイ捨ての防止を図るなど、住みよい快適なまちづくりを推進して参ります。

また、空き家等対策計画を策定し、利活用を含めた対応策などについて検討して参ります。

 (6) 防災のまちづくりの推進

六つ目は、防災のまちづくりについてでありますが、
防災のまちづくりの推進については、地域防災計画に基づき、大規模災害に備えた訓練を実施するほか、毎年3月11日の「となりきんじょ防災会議の日」や自主防災組織に対するリーダー育成などの支援を継続して、防災意識の高揚を図って参ります。

防災情報については、防災行政情報システムやコミュニティFM放送によるほか、多様な広報媒体を活用し、迅速な情報提供に努めて参ります。
また、一関南消防署藤沢分署の建設を進めるとともに、災害活動における消防力の強化を図るため、消防車及び消防団車両の更新を進めて参ります。
併せて、消防団の活動が広く市民にも理解していただけるよう、情報発信等に努めて参ります。

一関遊水地事業については、一昨年12月に第一遊水地大林水門が、昨年11月には第二遊水地長島水門が着工されるなど順調に事業が進められておりますが、小堤及び水門の整備促進と併せて狭隘地区の治水対策を促進して参ります。
磐井川堤防改修に伴うまちづくりについては、国土交通省と連携しながら進めて参ります。

さらに、JR東北本線磐井川橋梁架け替えに向けた早期協議について、要望を継続して参ります。

中小河川の治水事業については、一昨年7月の大雨災害を教訓として、関係機関と連携を図りながら対策を進めて参ります。

また、危機管理事案の庁内における情報共有、初動態勢の確立など災害発生の兆しを捉え、迅速かつ万全な対応に努めて参ります。

災害対策基本法に基づき、自ら避難することが困難な方々の名簿を整備したところであり、地域の避難支援等関係者と情報共有し、支え合いによる災害時の避難支援や日頃の見守りなどを促進して参ります。

また、土砂災害から住民の生命及び財産を守るために、関係機関と連携を取りながら、警戒が必要な危険箇所の点検を実施するとともに、土砂災害ハザードマップを作成し、土砂災害警戒区域等の情報や警戒避難体制の周知を図って参ります。

 (7) 未来のまちづくりの推進

七つ目は、未来のまちづくりについてでありますが、
ILCを見据えたまちづくりについては、環境や景観への配慮や外国人研究者の受入態勢などについて検討を行うとともに、学術研究都市構想の策定に向けた取組を継続して参ります。
次代を担う人材の育成に向けて、中学生最先端科学体験研修、英語の森キャンプ事業、子どもたちによる地域の情報発信事業や科学に親しむための事業を実施するほか、子どもの頃から国際感覚を身に付ける機会を増やせるように努めて参ります。

また、新たに国際化推進員を配置し、当地方の豊かな自然、歴史、文化、農畜産物などの素晴らしい地域資源やILC実現に向けた地域の取組などについて、情報発信して参ります。

住民の利便性を向上させるとともに、行政運営の効率化を図ることを目的として、平成28年1月から交付が始まるマイナンバーカードについては、円滑な交付体制を整備し、普及を推進して参ります。
また、市民サービスの向上を目指し、窓口体制の拡充を図るとともに、マイナンバーカードを活用した住民票等のコンビニ交付に向けた準備を進めて参ります。

世界遺産「平泉」と連携した地域づくりについては、骨寺村荘園遺跡の発掘調査及び文献研究を重点的に実施するとともに、岩手県、関係市町と連携しながら世界遺産拡張登録の実現に向けた取組を進めて参ります。
また、平泉ナンバーの普及を進めるとともに、世界遺産「平泉」を核として、この地域の一体的な地域づくりに取り組んで参ります。

 6.市政運営の基本

以上、重点施策の中から主なものを申し上げましたが、平成27年度は、平成17年の合併から10年が経過する年であり、また、現総合計画期間の最終年度でもあります。
刻々と変化する社会経済情勢に的確に対応しながら、計画事業の着実な実施を図って参ります。
また、ILCの実現を見据えつつ、市民一人ひとりの希望につながる将来のまちづくりを進め、さらなる市勢の発展に結びつけていくため、平成28年度を初年度とする新たな総合計画について、総合計画審議会を中心として、市民の参画をいただきながら、現計画後期基本計画の検証と併せて、策定を進めて参ります。

また、「一関市まち・ひと・しごと創生本部」を設置し、一関市版の人口ビジョンと総合戦略の策定を進めて参ります。

当市の財政見通しは、合併特例期間が経過することに伴い、普通交付税の算定の特例、いわゆる合併算定替が平成28年度から段階的に縮減されるなど、厳しい財政状況が見込まれております。
このため、現行の行政改革大綱及び集中改革プランの着実な実行はもとより、平成28年度からの次期行政改革大綱及び集中改革プランの策定を進めるとともに、引き続き、行政改革に努めながら、施策を効果的に展開して参ります。

また、公共施設については、全ての施設を対象に、その効率的な利活用を進めるため、維持管理に関する基本的な方針となる公共施設等総合管理計画の策定を進めて参ります。

私は、市長就任以来、移動市長室を実施して参りましたが、市民の皆さんの声を直接聴き、そして、市からの情報を発信することが、この移動市長室の趣旨であります。
また、「市長へひとこと」などにより、直接ご意見を伺う機会を設けているほか、市民の参画については、各種審議会の開催、ワークショップなど様々な機会を設けておりますが、今後、人口減少が進む中にあって、特にも若者や女性から意見をいただきながら、まちづくりを共に進めていくことが必要であると考えており、具体的な取組について検討を進めて参ります。

市民ニーズの多様化、高度化に伴い、市民の皆さんと一緒になって地域課題に対処していくためには、現場主義を徹底し、より市民に近い視点で市政を行うことが重要であると認識しており、直接、市民と接する場面が多い担当者からの情報を流れやすくし、私のもとに素早く情報が集約され、スピード感をもって政策を決定、推進する仕組みが必要であります。

このため、組織機構の見直しを行い、市民ニーズや行政課題に的確に対応し、政策推進の強化を図るため、市長公室を設置し、また、協働のまちづくりの推進を図るため、まちづくり推進部を新たに設置するとともに、子育て支援、健康長寿のまちづくりの推進、組織の統合による事務の効率化、迅速化を図って参ります。

当市は岩手県の南端に位置し、県境を抱えております。
今、この県境周辺の地域から県の中央部に、国の機関の集約が進んでおり、このままでは、岩手・宮城の県境を挟んだこの地域は国の機関の空白地域となってしまい、また、県の施策も県央部からの視点になることが少なくなく、県境付近の自治体においては、多くの共通課題を抱えているところであります。

一方で、今日の社会経済情勢の中、産業振興、雇用、地域医療、移住定住等あらゆる分野において、一つの施策やサービスが一つの自治体では完結せず、県境を越えた近隣市町村と連携した取組が欠かせないものと認識しております。
人口減少など社会構造の変化に対応した施策の展開や地域の発展のためには、同一の経済圏、同一の生活圏、同一の医療圏、同一の通勤・通学エリア、さらには同一の伝統文化などの圏域で、そういう括りの中で、県境を意識しない発想での取組が必要であり、宮城県登米市、栗原市、さらには秋田県湯沢市、東成瀬村との連携も視野に入れて、新たな連携強化に取り組んで参ります。
県境に接する一関であればこそ可能となる施策に取り組んで参りたいと考えております。

 7.おわりに

私はこれまで、ILCに長年に亘り関わってきましたが、ILCの実現が正に目の前に迫ってきました。
私が、ILCの講演をすると、講演を聴いた子どもたちは、どの学校でも、誰もが目を輝かせて、「将来、科学者になりたい」「研究者になりたい」「ILCができると、どんな仕事があるの?」などと話してくれたり、手紙を書いて渡してくれました。
子どもたちの心の中で、確実にILCへの期待が膨らんでいることを実感しております。

ILCが実現すれば、この地域には、世界遺産「平泉」と共に世界に誇れる二つの大きな宝物ができます。
次代を担う子どもたちが夢と希望と誇りをもち、活躍できる地域となるよう、地域からの盛り上がりを岩手、東北に広げ、東北全体が一丸となって、ILC実現に取り組んで行くよう、これまでにも増して強い信念で取り組んで参ります。

この地域の特徴を生かしながら、自然と共生し、資源が循環する、世界最先端の技術が集積するまちを創造するとともに、地域住民と研究者やその家族、そして来訪者が文化的な交流を図り、互いに絆を深めていくことにより、
一関が、日本と世界とを繋ぐ懸け橋となる、
「世界の人々から親しみを持たれ、信頼される地域」
そのようなまち 一関 を、必ずや実現して参ります。

私は、ILCを一関発展の基軸と位置付けて、中長期的な視点に立って、ふるさと一関の発展のための取組を進めて参ります。

ILCの実現は、今を生きる私たちに課せられた大きな使命だと思っております。

そのため、未来に向けて、積極果敢に挑んでいく覚悟でありますので、議員各位並びに市民の皆さんのご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。

以上、今後の市政運営についての所信の一端と、施政方針について申し述べさせていただきました。