令和6年度施政方針
本日ここに、令和6年一関市議会定例会第109回2月通常会議の開会に当たり、提案をいたしました議案などの説明に先立ち、今後の市政運営について、所信の一端と主要施策の概要について申し上げます。
1.はじめに
昨年は、3年続いたコロナ禍からの出口が見え始めた中で、4年ぶり、5年ぶりと多くの行事やイベントが復活した一年でありました。
一方で、物価高の影響は、生活や生産のあらゆる分野に及び、また、海外に目を転じれば、ウクライナやパレスチナでの戦火が続いております。
能登半島地震や航空機事故など大変な状況の中で新しい年が始まり、年が変ればいいことがあるはずだという期待感や高揚感の下にあるものは、やはり不安定で不確実な社会の現実であることに気づかされた新年のスタートでありました。
年度が変わっても、人口減少への対処が最大で最優先の課題であることに変わりはありません。
人口が減っていく中で地域の活力を高めていく。
きわめて難しい仕事ではありますが、そのための処方箋について申し述べたいと思います。
2.地域の活力を高めるまちづくり
(1) まち・ひと・しごとの創生
まち・ひと・しごとの創生が、人口減少に対する基本戦略とされておりますが、やっていくことはその逆からと考えております。
(1) 働く場を増やす 稼ぐ力を高める(しごとづくり)
働く場を増やす・稼ぐ力を高める「しごとづくり」を一つ目の項目として申し上げます。
そのため、仕事の種類、働き方の多様性、働く場所の数を増やす取組を進めてまいります。
駅東工場跡地については、市の最重要課題である人口減少に対処するため、「雇用を創り出す場」として民間活力による土地開発が図られるよう、引き続き活用策の検討を進めてまいります。
また、市へ土地が引き渡される令和8年度に向けて、この土地の管理運営を担う法人を設立し、管理運営体制の確立に取り組んでまいります。
拡張整備を終えた一関東第二工業団地への企業誘致を進めるとともに、(仮称)一関インター西産業用地の整備、学校跡地の産業用地としての活用により、多様なニーズに対応した企業誘致・事業誘致に取り組んでまいります。
起業後の持続可能な事業モデルの構築や経営の安定化につながるノウハウの習得を支援してまいります。
また、起業家コミュニティを形成し、起業しやすい環境づくりに努めるとともに、新たな事業の創出のため、地域内発型産業の振興や地域企業の技術力・経営力の強化に取り組んでまいります。
企業の成長と競争力強化を図るため、市内企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)への取組や市内企業の事業所の改築、社員寮の整備などを支援してまいります。
一関エリアへのインバウンドの誘客やビジネスでの結びつきをより強くするため、台湾やベトナムなどの海外企業や関係団体との一層の信頼関係の構築に努めてまいります。
(2) 人が輝く 人を育てる(ひとづくり)
二つ目の項目は、人が輝く・人を育てる「ひとづくり」についてであります。
一人ひとりが輝く、「ひと」が中心の社会でなければなりません。
女性や若者が活躍できるまち、健康長寿のまちを目指してまいります。女性や若者の地元定着、地元就職を促進するため、職場環境や働き方の改善を進めるためのセミナーを開催するとともに、働く場の環境整備を支援してまいります。
また、若者などの人材確保への支援やIT人材を育成するための取組を進めてまいります。若者の地元定着への支援については、学校法人や事業者などが行う学生寮の整備を支援してまいります。
また、市内に通学する生徒の下宿などの家賃を支援してまいります。
さらに、市外で暮らす若者などが働きながら一定期間一関に滞在し、地域の文化や生活に触れ交流するワーキングホリデーの機会を提供してまいります。子育て支援については、一関保健センター内に「こども家庭センター」の機能を置き、各相談機関との連携を強化しながら、様々な家庭環境などに対応する包括的な相談支援の充実を図ってまいります。
また、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない伴走型相談支援及び経済的支援を推進してまいります。
産後間もない時期の母子を支援するため、従来の訪問型に加え、新たに通所型の産後ケア事業を実施し、安心して出産・子育てができる支援体制を整備してまいります。認定こども園や放課後児童クラブなどの整備、病児保育の確保など、仕事と子育てを両立しながら、安心して楽しく子育てができる環境を整備してまいります。
また、養育環境などに課題を抱える学齢期の児童が、放課後などに安心して過ごせる「こども第三の居場所」の運営を支援してまいります。
子育て世代の経済的負担の軽減を図るため、乳幼児から高校生までの医療費無償化を継続してまいります。
学校給食については、物価上昇に伴う食材費高騰分について、引き続き市で負担してまいります。
外国人市民への支援については、あらゆる分野での人材を確保するため、高等教育機関との交流事業や外国籍就労者が働きやすい職場環境づくりを支援してまいります。
農業については、新たな農業の担い手に対し、経営開始資金と経営を発展させるために必要な機械や設備などの導入を支援してまいります。
移住定住については、各種制度による支援を効率的かつ効果的に活用し新たな人材や若い世代の移住定住を促進してまいります。
高齢者の生活習慣病の重症化予防と心身の機能が低下する状態、いわゆるフレイルの対策を推進するため、医療、介護、健康診査の情報の活用による高齢者の保健事業と介護予防を一体的に実施してまいります。
(3) 地域・まちを元気にする(まちづくり)
三つ目の項目は、地域やまちを元気にする「まちづくり」の取組についてであります。
これまで申し上げた「しごとづくり」、「ひとづくり」を展開することにより「まちづくり・地域づくり」がさらに進むものと考えております。
地域やまちを元気にする取組として、何点か申し上げます。当市をふるさととする方や一関を支援したい方などによる新たなネットワークづくりを行い、関係人口の創出と拡大に向けたプラットフォームの形成を図ってまいります。
若年層を中心とした多くの皆さんにワクワク感と一関の良さを感じていただくため、昨年に引き続き「TGC teen ICHINOSEKI 2024」を開催します。
スポーツ交流の推進を図るため、引き続きスポーツ合宿の誘致に取り組むとともに、各種スポーツ大会やスポーツイベントを開催してまいります。
ふるさと応援寄附を促進し、財源の確保を図るとともに返礼品を通じた地域資源の活用を図ってまいります。
「地域おこし協力隊制度」を活用し、地域づくり人材を受け入れるとともに、着任した隊員が、不安なく地域での活動や生活が行われるようサポートしてまいります。
また、企業の有するノウハウや専門知識、人脈を生かす「地域活性化起業人制度」を活用し、地域の活性化を図ってまいります。
地域公共交通については、市民の日常生活や来訪者の移動手段の確保を図るため、引き続き、交通事業者への運行支援や利用促進を図るとともに、交通事業者や関係機関と連携し、誰もが利用しやすい公共交通サービスの提供に取り組んでまいります。
JR大船渡線については、沿線自治体と連携し利用促進策に取り組むとともに、開業100周年に向けた機運の醸成を図ってまいります。
花泉地域の一部及び川崎地域においてデマンド型乗合タクシーを本格実施するほか、東山地域の一部においては試験運行を行い、地域公共交通の維持に取り組んでまいります。
中心市街地の活性化については、新規店舗の出店や住居建設など土地や建物の新たな利活用の可能性を広げるため、中心市街地の空き店舗の解体や建物の構造調査などを支援してまいります。
また、商店街地域の方々がそのあり方について懇談する場を持ち、専門家による相談やまちづくりの手法を学ぶ機会などの提供に努めてまいります。
JR一ノ関駅の東西の通り抜け手法については、ソフト的な解決手法に加え、ハード的な整備手法も含めて、具体的な検討に着手してまいります。
脱炭素への取組については、公共施設に太陽光発電設備や蓄電設備を導入するなど、2050年二酸化炭素排出量実質ゼロの達成に向けて引き続き取り組んでまいります。
また、市有林の間伐によって増加した二酸化炭素吸収量をJ-クレジットとして販売し、民間企業などにおける二酸化炭素排出量のオフセットに貢献してまいります。3.総合計画の着実な推進
次に、総合計画後期基本計画に掲げるまちづくりの目標に沿って、令和6年度に新規・拡充する施策のうち主なものについて申し上げます。
(1) 地域資源をみがき生かせる魅力あるまち
一つ目の目標は、「地域資源をみがき生かせる魅力あるまち」についてであります。
農業については、本年1月のオーガニックビレッジ宣言を踏まえ、有機農業の産地づくりに向けた取組を支援してまいります。
また、国道343号の道の駅の整備を進めてまいります。
林業については、林業事業体への就業支援や新たな担い手となる自伐型林業者の育成を図るとともに、住宅や事業所などへの市産木材の利用を促進してまいります。
有害鳥獣の被害防止を図るとともに、狩猟免許の取得や銃器などの購入を支援してまいります。
観光については、市内高齢者の健康増進を図るため、一関温泉郷への誘客を支援してまいります。
(2) みんなが交流して地域が賑わう活力あるまち
二つ目の目標は、「みんなが交流して地域が賑わう活力あるまち」についてであります。
国際交流については、国際姉妹都市提携30周年を迎えたセントラルハイランズ市との中学生海外派遣・高校生受入事業を5年ぶりに再開します。
国県道の整備については、特にも、国道343号の笹ノ田峠における新トンネルの整備や国道4号の交通事故対策の早期完成並びに4車線化拡幅整備の事業化に向け、関係市町及び各同盟会とともに、国や県への働きかけを強力に行ってまいります。
(3) 自ら輝きながら次代の担い手を応援するまち
三つ目の目標は、「自ら輝きながら次代の担い手を応援するまち」についてであります。
学校施設の老朽化の状況などを踏まえ、より良い教育環境を確保するため、一関小学校の校舎などの改築に係る設計を進めてまいります。
骨寺村荘園遺跡については、地元の意向を踏まえながら、今後の地域づくりへの支援を検討してまいります。
(4) 郷土の恵みを未来へ引き継ぐ自然豊かなまち
四つ目の目標は、「郷土の恵みを未来へ引き継ぐ自然豊かなまち」についてであります。
磐井川堤防改修事業を促進するとともに、「一関地区かわまちづくり計画」に基づく社会実験事業の実施並びに磐井川の水辺整備に取り組んでまいります。
資源・エネルギー循環の推進については、住宅及び事業所用の自家消費型の太陽光発電設備や蓄電設備の導入を支援してまいります。
水道事業については、有収率の向上を図るため、漏水調査や老朽化施設の更新に取り組み、施設の耐震化、長寿命化を進めるとともに、施設の統廃合調査を実施してまいります。
また、距離の長い給水管の整備に対する支援を行ってまいります。
さらに、水道未普及地域については、安全な飲用水を確保するための飲用井戸の整備などを支援してまいります。
(5) みんなが安心して暮らせる笑顔あふれるまち
五つ目の目標は、「みんなが安心して暮らせる笑顔あふれるまち」についてであります。
地域医療体制の維持については、医療・介護分野における人材の育成、確保に向けた取組を進めてまいります。
また、医療機関と連携し、救急医療体制の確保に努めてまいります。
新型コロナワクチン接種については、予防接種法上の定期接種として高齢者などを対象に実施されることから、高齢者などの新型コロナウイルス感染症の重症化を予防し、自己負担の軽減を図るため、予防接種費用の一部を助成してまいります。
災害に強いまちづくりについては、土砂災害警戒区域などの周知や大規模盛土造成地の調査、農業用ため池の防災対策や木造住宅の耐震化など地域防災上のリスク軽減を図る取組を進めてまいります。
一関遊水地事業については、遊水地の運用開始に向け、引き続き国土交通省と連携し、早期の地役権設定に取り組んでまいります。
4.総合計画後期基本計画に掲げる重点プロジェクト
次に、総合計画後期基本計画の重点プロジェクトに掲げる国際リニアコライダー(ILC)実現への取組と東日本大震災からの復旧復興について申し上げます。
国際リニアコライダー(ILC)については、平成25年8月に国内候補地が北上山地に決定してから10年が経過いたしました。
昨年、ILC実現建設地域期成同盟会を結成したところであり、我が国の産業競争力や技術開発力、国土開発、経済安全保障などの観点から、ILCが国家プロジェクトとして取り組まれるよう、早期実現に向けた運動を加速してまいります。
次に、東日本大震災からの復旧復興についてであります。
東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質による汚染に対し、原木しいたけの産地再生への支援、農林業系廃棄物や学校などに埋設一時保管している除去土壌、側溝土砂の最終処分など、早期解決に向け、引き続き取り組んでいくとともに、国や最終責任者である東京電力に対し、責任を果たすよう強く求めてまいります。
また、陸前高田市への職員派遣を継続してまいります。
5.市政運営の基本
次に、市政運営の基本について申し上げます。
当市では、地域づくりの基本として、市民と行政の協働によるまちづくりを掲げ、地域協働体を対象として支援をしてきたところであり、引き続き地域協働体の自主的、主体的な取組を促進してまいります。
長期的視点からのまちづくりの方向性を示すため、令和8年度を初年度とする総合計画を策定することとし、市民の意向や行政ニーズを的確に把握するため、市民などへのアンケート調査を行ってまいります。
これからのまちづくりを着実に推進していくためには、将来世代まで見据えた安定的な行財政運営に努めていくことが必要であります。
このため、組織の見直しや事務事業の効率化、歳出の徹底的な見直しなど、第4次行政改革大綱・集中改革プランの取組を推進し、市民との協働や民間活力の活用により、質の高い行政サービスを持続的に提供できるよう、一層の行財政改革を進めてまいります。
DXの推進については、一関市DX推進計画に基づき、生成AIを活用した音声ガイドシステムの導入や保有するデータのオープン化の検討を進めるなど、庁内事務の効率化と行政手続のオンライン化の拡大に取り組むことにより、市民の利便性向上につなげてまいります。
民間事業者の知識や技術、資源を活用し、市民サービスを継続的に実施するため、公民連携の取組を進めてまいります。
公共施設等総合管理計画に基づき、施設保有の見直しを進めるとともに、一関市公共施設等総合管理基金を活用し、施設保有量の適正化及び長寿命化等を図ってまいります。
様々な施策を進めていく上では、同じ日常生活圏にある近隣自治体との連携が施策の効果をより高めるものと考えております。
特にも平泉町と宮城県北の各市を重要なパートナーと位置付け、暮らしに必要な機能を総体として確保するとともに、より強く魅力あふれる圏域の形成を目指してまいります。
また、地域経済圏の強化を図るため、関係自治体の商工会、観光協会を交えた意見交換を行ってまいります。
今後においても「誰一人取り残さない」グローバル社会の形成と持続可能な地域社会の構築につながるよう経済・社会・環境の三つの側面から、関係者が理念を共有し、SDGsの推進に取り組んでまいります。
6.おわりに
市の独自推計では、今後、人口減少が加速度的に進行し、今年生まれる子どもが二十歳になる、令和26年の市の人口は約7万5千人と見込んでいます。
人口減少によるダメージを少なくし、地域の活力を高めていくためには、若者や女性が活躍できる社会の形成が不可欠であります。
先に申し上げました、各種の施策を展開し、「しごとづくり(働く・稼ぐ)」、「人づくり(人が輝く・人を育てる)」、このことにより、まちづくり・地域づくりを推進し、今住んでいる土地にこれからも住み続けていける「まち」を目指してまいります。
さらには多様化する市民ニーズへの的確な対応を図り、さらなる市勢の発展に結びつけてまいりたいと考えております。
市長就任以来、この2年間で取り組んでまいりました各種の施策は、これからの2年への礎になるものと考えております。
職員一丸となって挑戦し、ふるさと一関の発展のため全力で取り組んでまいります。
子どもたちが夢や希望を抱き、すべての市民がこの一関に誇りと愛着を持ち、これからも住み続けられるまちを目指してまいりますので、議員各位並びに市民の皆様のご理解、ご協力をお願い申し上げ、令和6年度の市政に臨む方針とさせていただきます。
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