本日ここに、第47回一関市議会定例会が開会されるに当たり、提案をいたしました議案等の説明に先立ち、今後の市政運営について、所信の一端と主要施策の概要について申し上げます。

1.はじめに

経済のグローバル化が進展し、世界との結びつきがますます強まっている中、わが国の経済状況は、安倍内閣による経済政策、いわゆるアベノミクスの三本の矢の成長戦略により、明るい兆しが見えつつありますが、地方においては、未だ、景気回復が身近に感じられていない状況にあります。

また、農業政策については、環太平洋戦略的経済連携協定、いわゆるTPPの交渉状況や減反政策の見直しなど農政の大転換による地域経済への影響も懸念されるところであります。

さらに、少子化や高齢化の進行により、我が国は、これまでの人口が増加する社会から、人口が減少する社会へと変わり、社会保障制度の改革などへの対応が避けて通れない喫緊の課題となっております。

地方においては、この傾向はさらに強く、超高齢、人口減少社会へと進む中で、行政に対するニーズも多様化してきていることから、これまでの行政運営から、社会構造の変化を見据え、時代に合ったものへと抜本的な見直しが求められていると考えております。

このようなことから、景気回復の実感が大都市圏のみならず地方にも確実に及ぶよう、引き続き経済対策に取り組むとともに、地方がそれぞれの特色を出しながら独自の施策に取り組めるよう、財源の充実と地方分権改革によるさらなる権限移譲や規制緩和の推進を期待するものであります。

私は、昨年の市長選挙において、市民の皆さんから、引き続き今後4年間の市政運営を負託されたところであり、平成26年度は、直面する市政課題の解決に向けて、対応をさらに加速させていく年にしたいと考えております。

今議会に提案いたしました平成26年度予算案をはじめとする議案は、当市の未来に向けて、国際リニアコライダー、いわゆるILCの実現を見据え、夢を現実のものにするべく、多様な市民ニーズや課題に的確に対応していくため熟考を重ねたものであります。

2.ふるさとの新時代を拓く 平成26年度予算

私は、市長就任以来、「中東北の拠点都市一関の形成」を政策の柱に掲げ、施策を推進して参りました。
実質1年目となる、平成22年度予算から平成25年度予算まで、それぞれ前年度の予算総額を上回る積極型予算を編成してきたところであり、住みよいまち、安心して暮らせるまちの実現に向けた取り組みの継続により、私が目指す地域像の実現に向けて、概ね順調に推移してきたものと認識しております。

このような中、平成26年度予算については、平成17年度の合併以降最大であった平成25年度当初予算額を、1.3パーセント下回る、703億8百万円としたところであり、厳しい財政状況下ではありますが、これまでと同様に、早急に取り組むべき事業については、可能な限り積極的な予算編成に努めたところであります。
 

3.国際リニアコライダー(ILC)の実現とまちづくり

(1) ILC実現に対する期待

市民の皆さんから、様々な機会を通じて、ILCの実現を前提としたまちづくりや人材の育成について、多くのお話を伺っており、改めてILC実現への期待が膨らんでいることを実感しております。
ILCについては、昨年8月に、国内の研究者による評価において、当市を中心とする南部北上高地が国内の建設候補地に選定されたところであり、また、ILCの国際推進組織からは、今後は世界で唯一の建設候補地として、南部北上高地を前提とした詳細設計を進めると明言されたところであります。

このような中、国は、平成26年度予算案にILC調査検討費を計上したところであり、このことは、日本がILCを積極的に推進する姿勢を国内外に示す大きなメッセージとなり、実現に向けた関係国との調整も大きく前進するものと期待しているところであります。

 (2) ILCを基軸としたまちづくり

私は、ILCを「一関発展の基軸」と位置付けて、まちづくりに取り組んで参ります。
平成26年度は、ILCの実現に向けた具体的な動きが見えてくる、正に新時代への幕開けの年であり、当市にとって非常に大きな意味のある1年になるものと考えております。

ILCを見据えたまちづくりについては、どこにもその手本はなく、全くゼロからのスタートでありますが、あらゆる可能性に挑戦して参ります。
市民の皆さんに、ILCに関する情報を適時適切に提供するとともに、ILCが一関を中心としたこの地域に実現されることを踏まえ、研究者とその家族などの受け入れや国際化に向けて、どのようなまちづくりをしていけば良いのか、そのためには何が必要なのか、そのような視点で、市民と行政が共に話し合い、また、企業の協力もいただきながら、まちづくりを進めて参ります。

具体的な取り組みとしては、まず、海外の研究者や研究所に対し、一関の素晴らしさを情報発信して参ります。
また、児童生徒がILCに関連して、地域について改めて理解を深める活動やILC実現に向けた地域の取り組み、地域の盛り上がりを世界に向けて発信して参ります。

次の世代を担う人材の育成については、引き続き中学生の筑波研究学園都市への派遣や研究者による講演会を実施するほか、英語での生活を基本とする英語の森キャンプ事業、外国語指導助手の増員による外国語活動の充実など、子どもたちが国際感覚を身に付ける機会の提供に努めて参ります。
さらに、ILC関連産業への地域企業の関わりや参入の促進を図るため、新たに科学技術アドバイザーを設置いたします。

ILC建設ルートの大半を占める当市が先頭になり、奥州市や気仙沼市をはじめ、岩手県、宮城県、近隣市町や東北経済連合会、東北大学など、関係機関と連携して、ILCの早期実現に向けた取り組みを進めるとともに、学術研究都市構想の策定に向けた取り組みを継続して参ります。

4.最優先で取り組むべき施策

 (1) 東日本大震災からの復旧復興

それでは、平成26年度に最優先で取り組む施策について順次申し上げます。

まず、一つ目は、東日本大震災からの復旧復興であります。
東日本大震災から、間もなく3年が経とうとしております。
被災した方々は、震災前の生活に未だに戻れない状況が続いており、復旧復興に向けて、更なる支援が必要となっております。

一関市内においても、今なお、住宅の再建がままならず、避難先の住宅での生活を余儀なくされている方が数多くおられるところであり、引き続き住宅や宅地の復旧復興を支援するとともに、「近助」の精神のもと、隣りまちの陸前高田市、気仙沼市への職員の派遣など、沿岸津波被災地への後方支援活動を継続して参ります。

放射性物質による汚染問題への対策については、生活空間の環境モニタリング、除染、農林業の生産基盤の再生など、市民の不安解消への対策を最優先に取り組んで参ります。
除染については、地域住民の皆さんのご協力をいただきながら、引き続き生活空間における放射線影響の低減に向けた取り組みを行って参ります。

側溝土砂については、土砂の堆積により側溝機能が著しく損なわれている箇所を対象として、早急に仮置場の確保を進め、土砂の除去を行って参ります。
なお、土砂の最終処分については、国に対して、具体的な処理方針を示すよう、引き続き強く申し入れを行って参りますが、私は、早期の除去に向けて、解決を先延ばしすることなく、市独自での対応も念頭に取り組んで参りたいと思います。

農林産物については、食の安全を守り、産地としての信頼をより強固なものとするため、汚染された牧草、稲わら、堆肥、ほだ木などの一時保管と処分を進めるとともに、農林産物の放射性物質の測定を実施し、食の安全安心を発信することにより、国や県及び関係団体と連携して、風評被害の払拭に一層努力を傾注して参ります。
原木しいたけの生産については、施設栽培での出荷制限が一部解除されるなど、明るい兆しもありますが、今なお、多くの生産農家からは、生産再開への展望が描けず、生産を断念せざるを得ない状況であるとお聴きしているところであります。

県内有数の産地を守るため、ほだ場の環境整備や施設整備をはじめ、原木購入への支援などにより、生産意欲の向上と産地再生に全力で取り組んで参ります。
なお、国や県が実施すべき対策については、引き続き強く要望して参ります。
また、東京電力に対する損害賠償請求については、農家経営の再建と安定が一日も早く実現できるように、地域の食文化や地域コミュニティの維持のため、県や県市長会などと連携して、早急な対応を要求して参ります。

放射性物質による汚染は、今なお農林産物の生産環境や農山村の食文化、さらには、市民の生活環境に色濃く影響を落としておりますが、
このふるさと一関の未来のため、
安心して暮らせる環境を取り戻すため、
市民の皆さんと協力して、継続して取り組んで参ります。

(2) 高齢化と人口減少社会への対応

次に、高齢化と人口減少社会への対応でありますが、
当市の本年1月1日現在の住民基本台帳人口は、12万5,950人であり、昨年に比べ、1,588人の減少となっております。
また、高齢化率については、65歳以上の高齢者数は3万9,390人であり、前年比591人の増加、高齢化率は31.27パーセントであり、前年比0.85ポイントの増加となっております。
少子化、高齢化及び人口減少の進行により、これまでの行政サービスのあり方では対応できなくなってきており、特にも高齢化社会を見据え、行政サービスをお年寄りにやさしいものに変えていく必要があると認識しております。
これまでも、行政サービスの見直しについては、機構改革などと合わせて、継続的に検討してきたところでありますが、これを単なる理念で終わらせることなく、検討チームを立ち上げ、具体的な協議を進めて参ります。

高齢者が、できる限り住み慣れた地域で、自分らしい生活を送るためには、医療、介護、住まい、生活支援、介護予防が日常生活の場で適切に提供される、地域包括ケア体制の構築が求められております。

このため、一関地区広域行政組合と連携して、中長期的な視点に立った介護保険事業計画の策定、医療と介護連携の強化などを進めるとともに、引き続き地域の医療資源を有効活用した医療と介護の連携を推進して参ります。
高齢者世帯の見守りについては、地域包括支援センターなどの相談機関と連携して、地域における見守り体制の充実に努めて参ります。

今後、介護を担う人材の確保が不可欠であることは明らかであり、介護技術の習得、介護人材の発掘などを目的に、新たに介護担い手育成事業を実施して参ります。
また、地域の助け合いによる福祉の推進に向けて、地域福祉計画の策定に着手します。
高齢者の生きがい、健康づくりについては、生活習慣病予防や介護予防を推進し、高齢者一人ひとりの生きがいづくりや自己実現のための取り組みを支援して参ります。
また、なのはなプラザ内に設置した、シニア活動プラザの利用を促進し、シニア世代の社会参加や社会貢献活動を積極的に推進して参ります。

人口減少は、当市においても、早い速度で進行しておりますが、中東北の拠点都市として、市勢の継続的な発展のためには、その速度を少しでも緩やかにする必要があります。

人口減少に歯止めをかけるためには、子育て支援や雇用対策などの若者の定住対策をはじめ、市外からの移住定住の促進による人口減少抑制策も不可欠であると考えております。
子育て支援については、これまでも、子どもを生み育てやすい環境づくりを進めて参りましたが、今後は、さらにこれを充実させ、子育て支援、キャリア教育、就職支援、地元定着支援へと、子どもの成長過程に合わせて、保健、医療、保育、教育、就職、結婚などの各分野において、点ではなく、それぞれが線でつながる一連の施策により、子育て世代を支援して参ります。

このため、全ての所得階層における保育園保育料の軽減や第3子以降の幼稚園・保育園保育料の無料化、小学生の医療費無料化などを継続するほか、新たに水痘ワクチンやおたふくかぜワクチンの予防接種費用の公費助成を実施し、子育て世代の経済的負担の軽減を図って参ります。
また、待機児童の解消に向けて、私立保育園の改築を支援して参ります。
新保健センターの整備に合わせ、子育てを総合的に支援していくための拠点を整備し、子育て支援体制の充実を図って参ります。
平成27年度から開始する新たな子ども・子育て支援制度に向けて、子ども・子育て支援事業計画を策定して、実施体制の整備を進めて参ります。

雇用情勢については、国全体の数字が上向いている一方で、地方には効果が出てこないのではないかと懸念する声も上がっており、引き続き、雇用する側、雇用される側、そして、それを支える側、それぞれへの支援を進めて参ります。

移住定住の促進については、平泉町と連携して、より住みよい圏域の実現に向け、一関・平泉定住自立圏共生ビジョンに基づく定住施策を進めて参ります。
また、地域コミュニティの維持と活性化を図るため、新たな人材を地域に受け入れるための環境整備に引き続き取り組むとともに、結婚活動への支援を継続して参ります。

住みよいまちをつくるためには、道路や上下水道などの都市基盤の整備も必要であります。
国道4号の交通安全対策の促進や復興支援道路に位置付けされている国道284号、342号及び343号の急カーブや急勾配、狭隘部の解消による道路網の強化を促進して参ります。

市道の整備については、医療、消防、工業団地などの基幹施設と地域を結ぶ重要な路線となる、清水原一関線や中駒場線などの整備を推進して参ります。
歩道の設置についても計画的に整備を進めるとともに、橋梁の長寿命化を図って参ります。

公園については、石堂コミュニティ公園を整備するほか、市街地の回遊や散策ができるよう、歴史の小道の整備を進めて参ります。

水道事業については、厳美・萩荘簡易水道、興田・猿沢簡易水道などの拡張事業の実施による水道未普及地域の解消や川崎浄水場の建設に着手するとともに、老朽施設の改修及び更新事業を実施し、安全な水の安定供給に努めて参ります。

公共下水道事業については、管路整備の推進により、一関、花泉、千厩地域の供用区域を拡大し、快適な生活環境及び公共用水域の水質保全の向上に努めて参ります。
水洗化の向上に向けて、下水道未接続世帯への早期の接続を呼びかけるとともに、合併処理浄化槽の整備を進めて参ります。

併せて、これら都市基盤施設の維持管理にも努めて参ります。

 (3) 「協働によるまちづくり」の推進

最優先で取り組む三つ目の施策は、協働によるまちづくりの推進であります。

私は、ILCの実現という大きな夢を抱きながら、市民の皆さんと一緒に国際化に対応したまちづくりに取り組んで参りたいと考えており、そのためには協働によるまちづくりという視点が不可欠であると考えております。

これまでややもすれば、行政からの「一方通行」気味だった、市政に対する市民の関わり方を、行政との「双方通行」に転換していくことが必要であると考えております。
市政全般について、市民により多くの情報を提供し、それに対して意見提言をいただき、市民一人ひとりが市政への関心を高め、まちづくりの当事者としての意識を持って取り組めるよう、市民との協働を基本とした市政運営に努めて参ります。

このため、協働アクションプランを着実に推進するほか、引き続き、いちのせき元気な地域づくり事業や地域おこし事業を展開するとともに、地域づくりの活動の主体となる地域協働体の設立とその組織体制の充実を支援して参ります。

また、市民生活の足を確保するため、持続可能なバス公共交通体系の確立に向けて、市民、運行事業者、関係機関と連携して、利用促進策を講じるとともに、予約利用型の乗合タクシーの導入、料金体系と負担軽減制度の再構築に向けた検討を進めて参ります。

このほか、なのはなプラザの情報発信に努め、更なる利用を促進し、市民活動を支援するとともに、市民が主体的に取り組む景観まちづくり活動を支援して参ります。

5.重点施策:中東北の拠点都市一関の形成

次に、中東北の拠点都市一関の形成に向けた重点施策について申し上げます。

まず、雇用対策については、昨年、2年連続で、新規高卒者の100パーセント就職を達成したところでありますが、引き続きジョブカフェ一関などの関係機関と連携して、若者の地元企業への就職、職場定着に積極的に取り組むとともに、新しく事業を起こす、女性や若者の起業支援に努めて参ります。

また、震災からの復旧復興への対応や支援に係る事業を中心とした緊急雇用創出事業を実施し、雇用の場の確保と地域で働く人材の育成を支援して参ります。

次に、工業の振興及び企業の育成についてでありますが、企業ニーズに応じた技能、技術の習得を目指す研修の機会を設けるとともに、地域企業の品質管理能力の向上を図り、質の高いものづくりを支援して参ります。

また、関係機関との連携を強化して、地域の特性や資源を生かした振興を図るため、技術移転を含めた事業誘致への積極的な取り組みを進めるとともに、地域企業間の活発な交流を促進し、新産業、新技術の創出支援や農商工連携などの支援に努めて参ります。

さらには、立地企業の設備投資に対する助成の拡充を図り、当市の持つ優位性をアピールするとともに、多様なネットワークを活用した積極的な誘致活動を展開して参ります。

また、操業開始時における新規採用者の人材育成や地域企業との連携を支援するなど、立地後のフォローアップに努め、当市への産業集積を図って参ります。

農林業の振興については、国は「攻めの農林水産業」を成長戦略に位置付け、米政策の転換や生産現場の構造改革を推進するための新たな制度や事業を創出しており、当市の基幹産業である農業の振興と地域コミュニティの維持、発展のため、これらを積極的に導入して参ります。

当地方は、米、畜産、園芸作物などにおいて、全国に誇れる品質の高い、多彩な農産物が生産されており、本年3月の、いわて平泉農業協同組合の誕生により、市内一円の生産販売系統の確立とスケールメリットを生かした営農対策の充実が期待されております。

新JAとの連携を強化しながら、生産体制の強化や担い手の育成、農産物の高付加価値化や6次産業化を進めるとともに、販路拡大など農業所得の向上に向けた取り組みや農業基盤整備を契機とした集落営農組織等による中山間地域農業の活性化に努めて参ります。

当市の高品質な農産物を、優れた観光資源とともに全国に売り込んでいくため、一関産ということが、そのまま全国に通用するブランドとなるよう「地産外商」の取り組みを積極的に展開して参ります。
併せて、首都圏などを中心とした情報発信や販路の開拓を進め、消費者ニーズを的確に捉えながら、一関ファンの拡大に努めて参ります。

林業については、本年1月に発足した、一関地方森林組合の組織力を生かした木材生産コストの削減や地元産木材の利用促進への取り組みが期待されるところであり、当市の林業振興施策などとの連携を強め、地域林業の振興と森林資源の活用を図って参ります。

当地方の歴史と伝統のある「餅」文化については、昨年、ユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」の提案書に例示されるなど、地域の食文化としての価値が認められたところであり、引き続き全国ご当地もちサミットや各種イベントなどの取り組みを通じて、全国に情報発信をして参ります。

一関・平泉バルーンフェスティバルについても継続開催し、いずれは、全国地ビールフェスティバルと同様に、東北を代表するようなイベントに育てて参りたいと考えております。

また、観光客の誘致に向けて、平泉の世界遺産と猊鼻渓、厳美渓の周遊観光に向けた二次交通確保への支援を継続するとともに、新たに、映像による当市の魅力発信や仙台圏における観光キャンペーンを実施して参ります。

教育、人材育成については、一関の未来を担う子どもたちの、しっかりとした職業観と勤労観、そして社会人基礎力を育てるために、キャリア教育に取り組んで参ります。

学校施設の整備については、平成27年4月開校予定の、磐井中学校校舎の整備を進めて参ります。
また、山目小学校校舎や一関小学校プールの整備、東山中学校校舎の耐震改修と大規模改修、金沢小学校校舎の大規模改修を進めて参ります。

学校給食センターについては、仮称ではございますが、西部第二学校給食センターの整備と花泉学校給食センターの設備増設を行って参ります。

新一関図書館については、本年7月の開館を目指して整備を進めるとともに、読書指導員の増員や図書資料の充実に努め、読書環境の充実を図って参ります。

保健、福祉、医療の連携強化については、市民の誰もが、健康で心豊かに自立した生活を送れるよう、市民の健康意識の向上を図るとともに、新保健センターを拠点施設として、生涯を通じた健康づくりに総合的に取り組んで参ります。

地域医療については、医師修学資金貸付事業を継続して、医師確保対策に努めて参ります。
また、医療と介護を考える公開講座の開催などにより、医療機関の適切な受診のあり方の広報に努めるとともに、医師の負担軽減を図るため医療機関、市民、行政それぞれの役割分担や連携を強め、地域医療体制の強化を図って参ります。

障がいのある方々に対しては、それぞれの障がいに対応した支援計画の検討など総合的な支援を行う基幹相談支援センターを設置し、きめ細かな相談支援体制の充実に努めて参ります。

国民健康保険については、加入者の医療費水準が高い一方で所得水準が低いなどの構造的な問題を抱えており、引き続き厳しい運営が見込まれております。
国保運営の都道府県単位化を含め、社会保障制度改革による大きな転換期を迎えているところであり、特定健康診査の推進など医療費の適正化に取り組むとともに国保制度改正の動向や財政見通しを踏まえながら、運営の安定化に向けて、最大限の努力をして参ります。

環境対策については、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素排出量の削減を図るため、住宅用太陽光発電システムの設置を促進するとともに、公共施設への太陽光発電システムの導入や防犯灯、道路照明灯、公園灯、商店街街路灯などのLED化を計画的に進め、新エネルギー・省エネルギーの取り組みを推進して参ります。

ごみの減量化、資源リサイクルについては、資源集団回収事業などの活動を支援し、市民の環境意識の啓発を図るとともに、不法投棄やポイ捨ての防止を図るなど、住みよい快適なまちづくりを推進して参ります。
また、空き家の実態調査を継続して進め、その利用を含めた対応策などについて検討して参ります。

防災のまちづくりの推進については、地域防災計画に基づき、大規模災害に備えた訓練を実施するほか、となりきんじょ防災会議の日や自主防災組織に対する支援を継続して、市民の防災意識の高揚を図って参ります。
防災情報の提供については、平成25年度中に一関、花泉、室根及び藤沢地域において、防災行政情報システムの運用を開始し、他の地域については、引き続き整備を進めるとともに、コミュニティFM放送を活用し、迅速な情報提供に努めて参ります。
併せて、消防救急無線などのデジタル化により災害対応の強化を図って参ります。
防災拠点となる一関北消防署東山分署の建設及び一関南消防署藤沢分署の実施設計を進めて参ります。

一関遊水地事業については、順調に事業が進められておりますが、小堤及び水門や磐井川堤防の整備促進と併せて狭隘地区の治水対策を促進して参ります。
また、JR磐井川鉄橋架け替えに向けた早期の協議を要望して参ります。

中小河川の治水対策については、昨年夏の大雨災害を教訓として、関係機関と連携して、抜本的な対策の実施に向けて、取り組んで参ります。

危機管理事案の庁内における情報共有、連絡体制の確立や洪水危険河川の監視計画の見直しなど、災害発生の兆しを捉え、迅速かつ万全な対応に向けた初動態勢の整備に努めて参ります。

災害対策基本法に基づき、災害時に自ら避難することが困難な方々の名簿を整備し、災害時の避難支援や日頃の見守りなどにより、地域における支え合い活動の推進を図って参ります。また、土砂災害から住民の生命を守るために、土砂災害ハザードマップを作成し、警戒避難情報の周知を図って参ります。

世界遺産「平泉」と連携した地域づくりにも、重点的に取り組んで参ります。
骨寺村荘園遺跡については、世界遺産拡張登録の実現に向けて、白山社及び駒形根神社内に新たに確認された建物跡と塚群や梅木田遺跡の発掘調査を重点的に実施するとともに、陸奥国骨寺村絵図について、文献研究を進めて参ります。

また、重要文化的景観に選定されている、「一関本寺の農村景観」を構成する重要な要素である小区画水田の保全活用方針の策定を進めて参ります。

このほか、平成26年度に導入される平泉ナンバーの普及を進めるとともに、世界遺産「平泉」を核として、この地域の一体的な地域づくりに、より一層取り組んで参ります。

6.市政運営の基本

以上、重点施策の中から主なものを申し上げましたが、さらに、各分野にわたる個々の施策についても、市総合計画に基づき着実な推進を図って参ります。
また、岩手県南、宮城県北の自治体をはじめ、産業経済や教育文化の交流連携など広域行政の推進に取り組んで参ります。

当市の財政見通しは、今後、合併特例期間の経過に伴い、普通交付税の算定の特例、いわゆる合併算定替が段階的に縮減されるなど、厳しい財政状況が見込まれております。
このため、第2次行政改革大綱及び集中改革プランを着実に実行し、歳入、歳出全般にわたる徹底した見直しを行い、行政改革に努めながら、施策を効果的に展開して参ります。

平成26年度は、現総合計画期間の9年目を迎えるところであり、最終年である平成27年度を見据え、計画事業の着実な実施を図って参ります。
また、平成28年度を初年度とする新たな総合計画を策定し、さらなる市勢の発展に結び付けていかなければならないと考えており、ILCの実現を見据えた将来のまちづくりに向けて、市民の参画をいただきながら策定を進めて参ります。

このほか、事務の効率化や災害時の迅速な対応を図るため、千厩支所庁舎内に、仮称ではございますが、土木整備センターを配置するなど、市民ニーズや行政課題に的確に対応できるよう、より良い行政サービスの確立に向けて、組織機構の見直しを進めて参ります。
また、職員の法令遵守について、さらに徹底を図って参ります。

私は、これまで移動市長室を実施して参りましたが、市民の皆さんの声を直接聴くこと、そして、市からの情報発信が、この移動市長室の趣旨であります。
今後は、職員それぞれが現地に出向き、その場で現地の話しを聴き、その場で考え、その場で判断する、そのような現場主義を、より徹底して参りたいと思います。

本年は、国において、様々な制度の転換期となる年でありますが、これと併せ、市政についてもこれまで以上に説明責任が求められるものと認識しております。
昨年は商工会議所の合併があり、本年は森林組合やJAの合併、ILC実現への動き、定住自立圏構想の策定など、当市を取り巻く情勢が新たな段階に向かっており、従来の考え方や流れの中で事を進めるのではなく、新しい環境を見据えた施策の推進が必要であると考えております。

そのため、より効果的、戦略的な情報発信に努めるとともに、行政に対する市民の満足度を高めることを基本とし、職員自らも分かりやすい説明を心がけ、相手が期待する以上のサービス、相手に感動されるようなサービスを提供し、職員一人ひとりが自覚を持って、行政サービスのさらなる向上に努めて参ります。

私は、一関市として、国や県に対しても、決して臆することなく提案すべきことは積極的に提案する、言うべきことは言う、そういう姿勢で臨んで参りたいと考えております。
今年の仕事始めの式において、職員に対して「脱藩の気概をもって臨むように」と話しをしたところであります。県境を意識しない発想で、県境に接する一関であればこそ可能となる施策に、この脱藩の気概をもって取り組んでいくよう指示をしたところであります。

 7.おわりに

おわりに、先日行われた、安倍総理の施政方針に、「創造と可能性の地。新たな東北の姿を、世界に向けて発信しましょう」という言葉がありました。ILCの実現は、東北の持つ可能性や素晴らしい魅力を発信していく絶好の機会であり、東北が世界に向けて飛躍するチャンスであると捉えております。

私はこれまで、ILCに20年以上に亘り関わってきましたが、今、一関の市長として、実現に向けた第一歩を踏み出せることに、非常に感慨深いものを感じております。
この東北の地に、今後、宮城県に放射光施設、山形県に重粒子線施設、そして青森県に国際熱核融合実験炉関連の施設が、それぞれ加速器技術を用いた施設として順次建設される予定であります。
私は、これらのプロジェクトと連動する動きの集大成として、ILCの実現に至るものと考えております。
このため、東北全体が一丸となって取り組んでいくことが何より重要であります。
政府が国家プロジェクトとして位置付けて、取り組みが推進できるよう地元自治体としての役割を果たすべく、これまでにも増して強い信念で取り組んで参ります。

昨年、ILCについて講演をした際に、小学生から「将来、ILC関係の仕事に就きたい」「科学者になりたい」そういう話を私に伝えてくれました。
また、別の学校では、ILC実現に向けた大きな夢を、手紙に書いて渡してくれた小学生もおりました。
いろいろな場面において、子どもたちから大きな夢を託されたところであります。
この子どもたちの 夢が叶えられるよう、 
この子どもたちが ふるさと一関を誇りに思ってくれるよう、
「世界の人々から親しみを持たれ、信頼される地域」を目指す、
そんなまち一関を、市民の皆さん 一緒につくっていきましょう。

私は、ILCを一関発展の基軸と位置付けて、10年先、50年先、100年先の姿を見据えながら、ふるさと一関の発展のための取り組みを進めて参ります。
「ともに拓こう ふるさと新時代」これをキャッチフレーズとして、未来に向けて、積極果敢に挑んでいく覚悟で、市政運営に誠心誠意努力をして参りますので、議員各位並びに市民の皆さんのご理解とご協力を心よりお願い申し上げます。

以上、今後の市政運営についての所信の一端と、施政方針について申し述べさせていただきました。