本日ここに、令和3年一関市議会定例会第83回2月通常会議の開会に当たり、提案をいたしました議案等の説明に先立ち、今後の市政運営について、所信の一端と主要施策の概要について申し上げます。

1.はじめに 

はじめに、
昨年、全世界にまん延した新型コロナウイルスは、今なお世界中で猛威を振るっており、終息の見通しは不透明であります。
この見えない敵と闘うため、私たちは、今もなお、接触や移動の回避を余儀なくされており、これまでの「当たり前」を見直す、時代の転換期に立っていると認識する必要があります。私たちはこの危機を乗り越えるため、「新しい日常」という生活スタイルを実践していかなければなりません。
市民の命と生活を守るため、ワクチン接種体制を整備するとともに、感染防止の取組に全力を尽くしてまいります。
その上で、落ち込んだ市内経済回復のための取組を進め、感染拡大防止と社会経済活動の両立を図ってまいります。
 また、近年、大規模な自然災害が全国各地で頻発し、多くの被害が発生しております。
地域住民の生命や財産を守り、安全安心な地域社会を構築していくことがまちづくりの基本であることから、国土強靭化の取組を着実に進めてまいります。 

2.輝く(Shine)ステージ( Stage)へ スピード(Speed)感をもって みんなで笑顔(Smile)を取り戻そう

「輝くステージへ スピード感をもって みんなで笑顔を取り戻そう」
これは、令和3年度当初予算編成にあたって、キャッチフレーズとして掲げたものであります。
平成17年に新一関市が誕生し、15年が経過しました。
令和3年度は、これまでのまちづくりの取組を踏まえ、総合計画の後期基本計画がスタートする年であります。
人口減少や少子高齢化の進行、多様化する市民ニーズに的確に対応し、総合計画後期基本計画の着実な推進を図るとともに、新型コロナウイルス感染症の対策にも万全を期し、社会経済情勢を見極めながら、さらなる市勢の発展に結び付けていかなければならないと考えております。
この会議に提案している令和3年度予算については、市の総合計画に掲げた将来像「みつけよう育てよう 郷土の宝 いのち輝く一関」の実現に向けた取組を着実に進め、新型コロナウイルスによる難局を乗り越え、未来に向かって決意を新たに、一関の新時代へ前進するための予算として、これまで進めてきた施策を基本としながらも、一関市のすべての事業をSDGsの理念の基に展開していくことを念頭に、積極的な予算編成を行ったところであり、その予算規模を665億円としたところであります。 

3.感染防止と経済活動の推進の両立

次に、感染防止と経済活動の推進の両立についてであります。
現在、国においては、全力を挙げてワクチンの確保に取り組んでおりますが、スケジュールなどを含め、詳細が示されていない状況にあります。
新型コロナウイルスワクチンの接種を最優先課題として捉え、県や一関市医師会など関係機関と連携し万全の体制を整え、市民の皆様への確実かつ早急な接種に努めるとともに、今後とも、生活や経済活動の支援、雇用対策と状況に応じた施策を展開してまいります。
引き続き、市民の皆様が、一日も早く安心して健やかな生活を送ることができるよう、感染防止と経済活動の両立により、市民生活の回復に努めてまいります。

4.持続可能な発展のためのSDGsの実現

次に、持続可能な発展のためのSDGsの実現についてであります。
「誰一人取り残さない」社会を目指す
SDGsの理念の実現と、この一関のまちを確実に未来の世代に引き継ぐために、私たちには今、取り組まなければならない課題が数多くあります。
持続可能な地域社会の構築につながるよう経済・社会・環境の三つの側面から、関係者がSDGsの理念を共有し、理解を深めていくため市が推進役を担うとともに、SDGsの取組を推進するため、内閣府の「SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」へ提案してまいります。
総合計画後期基本計画に掲げる重点プロジェクトを、このSDGsの理念を踏まえ次の三つの項目に重点を置いて取り組んでまいります。
  

(1) 未来に向けた発進 着実な発展に向けたまちづくり

一つ目の項目は、未来に向けた発進と着実な発展に向けたまちづくりであります。
全国各地で発生している異常気象は、地球温暖化の進行による気候変動が大きな要因の一つとされており、国においては、令和2年10月に、2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロを目指すことを宣言したところであり、地球温暖化問題に対する国の姿勢が明確になったものと認識しております。
当市においても、脱炭素社会の実現に向けて、2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロを目指すことを、ここに宣言いたします。

資源・エネルギー循環の推進については、これまで「一関市資源・エネルギー循環型まちづくりビジョン」に基づき、バイオマス産業都市構想やみんなのメダルプロジェクト、オフィス製紙機の導入などの取組を行ってきたところであり、これは市が推進するSDGsの取組そのものであります。
令和3年度においても、新たなビジョンに基づき、資源・エネルギー好循環のまちづくりを目指してまいります。

廃棄物減量化、資源化については、有価物集団回収の支援の対象を非営利団体にも拡大するとともに、引き続き生ごみ減量機器への助成など、市民の皆様のご理解とご協力のもと、一層の推進を図ってまいります。
プラスチック廃棄物の減量については、引き続き市役所からの排出の抑制に取り組むとともに、市民、事業者への啓発にも努めてまいります。 
当市の豊富な森林資源の活用に向けて、市民が主体の集材活動による木質バイオマスの利用を促進し、薪ストーブの普及や統合小学校へのチップボイラーの導入による需要の拡大を図り、地域資源のさらなる活用を進めてまいります。

住み良い地域社会を創る上で、協働のまちづくりは欠かせない仕組みであり、これをさらに充実させていく必要があります。
そのため、第2次一関市地域協働推進計画に基づき、協働のまちづくりがより地域に根付くよう理解を深めるための啓発を行うとともに、各地域、各分野でリーダーとなる人材の育成、地元企業の参画などを促進してまいります。

地域づくり活動については、地域おこし事業などにより、地域協働体や自治会などの活動を支援してまいります。
また、地域協働体の自主的な活動がさらに活発になるよう、新たにモデル事業を実施してまいります。
持続可能なまちづくりを進めるため、令和3年度を初年度とする第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略における次の三つの取組を進めてまいります。

➀ 人が集い稼ぐまち(しごとづくり)

 人が集い稼ぐまち(しごとづくり)への取組であります。
市の独自推計では、今後、人口動向が現在のまま推移した場合、令和27年の人口を74,432人と見込んでおります。
人口減少を可能な限り抑制し、持続可能なまちとしていくため、雇用創出により若者や女性の転出抑制を図るとともに、地域産業全体で付加価値を生み出し、稼ぐ力を高めていくことが不可欠であります。

まず、雇用の創出や若者の地元定着を図るほか、企業の誘致を進めるとともに、地元企業への理解促進を図るため、ハローワークやジョブカフェ一関、大学などと連携した企業見学会やインターンシップへの支援、中学校や高校で地元の産業を紹介し、地元で働く魅力を伝える取組を進めてまいります。
 
また、意欲ある農業者の経営規模拡大、経営の安定化を図るため、周年雇用に向けた取組や営農のグループ化に対し支援するとともに、担い手の確保策として、特に市内新規学卒者の雇用就農に向けた取組を推進してまいります。

➁ 次代を担う子どもを育むまちづくり(ひとづくり)

次の世代を担う子どもを育むまちづくり(ひとづくり)への取組であります。
子育て世代への支援は、少子化が進む当市にあって、極めて重要な施策であります。
一人の子どもが生まれてから社会人として自立するまでの成長過程に応じ、点から線へ、その線をより太いものへ、そして、その太い線がやがて面となるような切れ目のない支援を行うための取組を進めてまいります。

まず、仕事と子育てを両立しながら安心して子育てができる環境をつくるため、保育人材の確保、放課後児童クラブの整備、子ども食堂への支援などに努めてまいります。
また、病児保育の確保に向けた取組を進めるとともに、天候に左右されることなく、親子で気軽に利用できる屋内型のあそび場の整備を進めてまいります。
 
当市が行っている医療費の助成については、高校生までの医療費の無償化を継続するとともに、安心して出産ができるように、妊産婦が医療機関を受診した際の支援を拡充してまいります。

➂ 暮らしやすいまちづくり(地域(まち)づくり)

 暮らしやすいまちづくり(地域(まち)づくり)への取組であります。
人口減少を緩やかにする取組と併せ、地域で安全に安心して暮らせる環境の整備や充実を図っていくことが必要であります。
 
高齢者が住み慣れた地域で自立した日常生活を送り、安心して暮らせる地域づくりを進めるため、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが総合的に提供される地域包括ケアシステムの充実に努めてまいります。

健康で安心して暮らすためには、地域医療の充実が必要であり、医療、介護分野における人材の育成、確保が不可欠であります。
市内の医師や診療科の偏在が深刻な状況にあることから、医師修学資金貸付事業や医療介護従事者修学資金貸付事業の取組を継続するとともに、医療、介護人材の確保に努めてまいります。
また、これまで築いてきた自治医科大学などとの関係をより強固にし、地域医療の確保に努めてまいります。

ライフスタイルに応じ、バリアフリー化や省エネ化など、より良い住環境を形成することが求められています。
安全安心な生活の基盤の確保が重要であることから、新たに住宅環境の向上を図る取組を支援してまいります。

災害に強いまちづくりと安全安心な市民生活の実現に向け、地域防災計画に基づく取組を進めてまいります。 

 (2) ILCを基軸としたまちづくり

二つ目の項目は、ILCを基軸としたまちづくりであります。
欧米各国の動向について申し上げますと、ILC計画への協力姿勢が明確に示されており、我が国がホスト国としてこのプロジェクトを牽引していくという日本政府の意思表示を待っている段階であると認識しております。
国内においても、国際推進チームがILC準備研究所の設立に向けた検討を行っております。
また、昨年8月には東北ILC事業推進センターが設立されるなど、関係各国、関係組織とのベクトル(方向性)も揃ったことにより、ILC実現に向けた大きな前進をみたところであります。
ILC実現の鍵は、日本政府の早期決断にあります!
建設候補地の地元として、関係機関と連携し、日本政府が一日も早くILC計画への決断を下すよう、最大限の努力をしてまいります。 

 (3) 東日本大震災からの復旧復興

 三つ目の項目は、東日本大震災からの復旧復興であります。
東日本大震災から、間もなく10年の歳月が経とうとしております。
三陸自動車道の整備も順調に進んでおり、令和3年度には全線開通が見込まれます。
一方、沿岸被災地と内陸部とのますますの交流活性化を図り、震災復興をさらに加速させるためには、いわゆる横軸道路となる路線の整備が極めて重要であり、特にも、当市と陸前高田市を結ぶ国道343号の交通の難所を解消するため、新笹ノ田トンネルの整備が必要であるということを、これまで様々な機会を通じ県に要望してまいりました。
しかしながら、未だに進展がない状況であることは、誠に残念であります。
新トンネルの早期実現に向け、県に対して新笹ノ田トンネル整備促進期成同盟会とともに強力に働きかけを行ってまいります。

東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質による汚染対策については、原木しいたけ産地再生への支援、農林業系汚染廃棄物の早期処理への支援、損害賠償の迅速化など国や最終責任者である東京電力に対し強く責任を求めてまいります。

また、当市に隣接する陸前高田市及び宮城県気仙沼市に対しては、近いところが助ける「近助」の精神のもと、職員派遣を中心とする後方支援を行ってまいりましたが、これを継続してまいります。 

5.中東北の拠点都市一関の形成

次に、中東北の拠点都市一関の形成に向けた令和3年度の取組について、総合計画のまちづくりの目標に沿って申し上げます。 

(1) 地域資源をみがき生かせる魅力あるまち 

 一つ目の目標は、地域資源をみがき生かせる魅力あるまちについてであります。
まちを持続的に発展させていくためには、地域を支える産業を振興し、一人ひとりが力を発揮できるよう、活躍の場を創出することが必要であります。

農業の振興については、有害鳥獣の被害防止及び捕獲の取組を支援するほか、地域農業マスタープランの実践に向けた担い手への農地集積や担い手の生産性の効率化を推進してまいります。
また、地産外商による生産者のビジネス展開や農業の多面的機能の発揮のための地域活動への支援、国道343号の道の駅の整備に向けた取組を進めてまいります。
なお、束稲山麓地域世界農業遺産については、残念ながら認定に至らなかったところであり、今後の対応については、県及び関係市町と協議してまいります。
 
林業の振興については、森林環境譲与税を活用し、林業への就業支援、住宅や学校校舎などへの市内産木材の利用促進、里山保全活動の支援など、森林資源の活用と管理を図ってまいります。

工業の振興については、一関工業高等専門学校や岩手県南技術研究センターなどの研究機関と連携しながら、地元企業の高品質、高付加価値なものづくりを支援してまいります。
また、次の世代を担う若者の人材育成とIT技術の向上に向け支援してまいります。
さらなる雇用創出のため、工業団地の整備にも取り組んでまいります。
企業の設備投資などへの優遇制度や立地環境の優位性をアピールし、企業誘致や事業誘致に取り組むとともに、近年、関心が高まっているテレワークが可能な企業のサテライトオフィス誘致について取り組んでまいります。

商業、サービス業の振興については、関係機関と連携した経営相談や経営指導の充実、事業資金の低利融資や利子補給、創業支援などを行い、工業分野も含めて、中小企業の経営の効率化、健全化を図ってまいります。
また、商店街の賑わいを創出するため、起業や事業承継などへの支援のほか、空き店舗への入居支援や集客につながるイベントの開催を支援してまいります。

観光は、交流人口、関係人口の拡大や地場産品の消費拡大、雇用創出など、地域づくりや地域経済に大きな効果を生み出す産業であります。
 平泉の文化遺産は本年、ユネスコの世界文化遺産に登録されて10周年を迎えます。
 国内最大規模の観光キャンペーンである東北デスティネーションキャンペーンが実施されるほか、広域連携を進めている宮城県登米市や気仙沼市を舞台としたテレビ番組(NHKのテレビドラマ)が放映されるなど、当地方の注目度が高まる年と言えます。
 いちのせきファンクラブ事業などにより、当市を身近に感じファンになってもらう取組を進め、「観光以上、移住未満」と言われる関係人口の創出を進めるとともに、働き方の多様性の一環として「休暇を楽しみながら、仕事に取り組む」ワーケーションを近隣自治体と連携して取り組んでまいります。 

(2) みんなが交流して地域が賑わう活力あるまち

 二つ目の目標は、みんなが交流して地域が賑わう活力あるまちについてであります。
活力ある地域となるためには、市内外で交流し、連携し、市民活動や経済活動を活性化させていくことが必要であります。
 
市内における光ブロードバンドサービスの未提供エリアを解消するため、光ファイバ網を整備するとともに、ICT(情報通信技術)を活用した行政サービスの充実を図ってまいります。
また、GIGAスクール構想に基づき、小中学校のICT環境の整備を進めてまいります。

当市が管理している市道の総延長は約4,288kmと県内の自治体でも群を抜いており、道路管理における最大の課題となっているところであります。
交流の基盤となる道路については、広域的な幹線市道や生活道路の整備を計画的に進め、市民生活の利便性の向上に努めてまいります。
また、道路環境、交通安全施設については、利便性の向上を図るとともに、その維持管理、長寿命化を図ってまいります。

一関地区かわまちづくり計画に基づき、「まち」と「かわ」を結び付けた新たな河川空間の創出と活用を推進し、賑わいと活力ある中心市街地の形成を進めてまいります。
 
移住定住については、移住を希望している方に対する窓口のワンストップ化と各種支援制度の情報提供を行うとともに、空き家バンクや現地視察に訪れる方への交通費の支援を行い、UIJターンや子育て世帯など新たな人材や若い世代の移住定住を促進してまいります。

公共交通については、千厩地域においてデマンド型乗合タクシーの試験実証運行を行うほか、交通事業者が取り組む一関オンデマンド交通実証運行の支援や市営バスの経路の見直しなどを行い、市民の生活に必要な移動手段の確保に努めてまいります。
 
令和3年度、第34回奥の細道サミットを平泉町と共同開催いたします。
芭蕉の功績を敬い、記念イベントを行うとともに、全国の芭蕉ゆかりのまちとの交流を深め、当市の魅力を発信してまいります。

(3) 自ら輝きながら次代の担い手を応援するまち 

 三つ目の目標は、自ら輝きながら次の世代の担い手を応援するまちについてであります。
将来にわたって誇れるまちづくりを進めるためには、家庭、地域、学校、企業、行政などが一体となり、次の世代を担う人材を育てることが必要であります。
 
次の世代を担う子どもたちの育成のため、「教育に関する大綱」で定めた基本目標である「学びを広げ、人と地域が共に育ち、一関の未来を創る」この実現に向けて、教育委員会と連携して取り組んでまいります。

学校施設の整備については、室根小学校及び花泉地域統合小学校の新校舎建設を進めてまいります。
また、大東地域における統合中学校の施設整備と合わせ、一関のセンター校ともいえる一関小学校の整備についても検討してまいります。

社会教育については、生涯の各時期に応じた多様な学習機会を提供するとともに、市民センターの指定管理者に対する社会教育事業に関する支援を継続してまいります。
小学生及び中学生の英語力やコミュニケーション能力の向上など国際感覚を養う取組を実施し、国際的視野を持つ人材の育成に取り組んでまいります。
 
令和3年度は、東京2020オリンピック・パラリンピック並びに北京2022年オリンピック・パラリンピックの開催が予定され、市民のスポーツに対する関心が高まることが期待されることから、関連事業を積極的に展開してまいります。
また、誰もがいきがいや健康づくりを目的にスポーツを楽しむことができるよう、スポーツ推進計画に基づき、幼児期からのスポーツの体験機会の創出をはじめ、関係団体と連携した各種教室やイベントの開催、一関運動公園の駐車場の拡張整備など、スポーツの振興と利用者のサービス向上を図ってまいります。
第40回となる一関国際ハーフマラソン大会については、記録を重視した競技性の高いイベントとして開催してまいります。
 
地域文化の伝承については、令和2年度に新たに市指定無形民俗文化財に指定した下猿澤伊勢神楽や渋民伊勢神楽をはじめとする民俗芸能団体の伝承活動を支援するなど、地域の歴史や文化への理解をより深められるような環境整備に取り組んでまいります。
 
骨寺荘園遺跡については、世界文化遺産「平泉」への拡張登録の実現に向けて、文献研究や発掘調査を継続するなど、県、関係市町と連携して取組を進めてまいります。

(4) 郷土の恵みを未来へ引き継ぐ自然豊かなまち 

 四つ目の目標は、郷土の恵みを未来へ引き継ぐ自然豊かなまちについてであります。
豊かな自然は市民の心の支えであり誇りでもあります。この貴重な自然の恵みを確実に次の世代へ引き継いでいかなければなりません。

汚水処理については、住宅や事業所が集積する地域において、下水道の管路整備を集中的に進めるとともに、浄化槽の設置を促進しながら、公共用水域の水質保全と快適な生活環境の確保を図ってまいります。
また、下水道への早期接続を進める普及活動と、施設の長寿命化に向けた予防保全型の維持管理を行い、効率的で持続可能な事業経営に努めてまいります。

水道事業については、老朽化した施設の計画的な更新と耐震化、長寿命化を進めるとともに、効率的な維持管理と適切な財源確保を図り、水道水の安定供給に努めてまいります。
また、水道未普及地域においても、早期に安全な飲用水が確保できるよう、飲用井戸の整備などに対し、集中的に支援を行ってまいります。
 
公園の整備については、新たに萩荘地区への整備を行うとともに、遊具の安全点検や更新を行ってまいります。

(5) みんなが安心して暮らせる笑顔あふれるまち 

 五つ目の目標は、みんなが安心して暮らせる笑顔あふれるまちについてであります。
誰もが健康で心豊かに自立した生活を送るためには、市民みんなが一体となって安全な環境を築き、互いに支え合い、安心して暮らせることが必要であります。
 
高齢者や障がいのある方々が住み慣れた地域で自らが希望した暮らしを実現できるよう、サービスの提供体制の充実に向けて取り組むとともに、自立と社会参加の促進を支援してまいります。

国民健康保険については、国庫負担割合の引上げなど国保財政基盤強化のための財政支援の拡充や低所得者層に対する負担軽減策の拡充強化などを継続して要望してきたところであり、特定健康診査などの推進を図り、医療費の適正化と安定化に努めてまいります。
 
消防、救急・救助については、災害などに対応するため、消防施設や設備などの計画的な整備を進めるとともに、防災行政情報システム、FMあすもなどの多様な手段により、災害時の迅速で的確な情報提供に努めてまいります。

北上川の治水対策の要でもある一関遊水地事業は、昭和47年の事業着手から50年目を迎え最終段階に入っております。今後、地役権設定が円滑に進み、早期の供用開始に結び付くように国土交通省と連携してまいります。
 
土砂災害警戒区域などの周知、農業用ため池の防災対策、耐震性に問題のあるブロック塀の除去など、地域防災上のリスク軽減を図る取組を進めてまいります。
 
交通安全及び防犯については、安全に対する意識高揚を図るとともに、地域が取り組む交通安全、防犯活動を支援してまいります。
日常的に管理が行われていない空家への対応については、所有者による適切な管理を促すことを基本としつつ、必要な対策を講じてまいります。
 
以上、令和3年度の取組の中から主なものを申し上げました。

6.市政運営の基本

 次に、市政運営の基本について申し上げます。
当市を取り巻く環境は、人口減少やグローバル化、ICT化の進展による社会情勢の変化、近年の気候変動などを要因とする自然災害や異常気象への対応、そして、新型コロナウイルスによる感染症の対応など、これまでにない課題に直面しております。
令和3年度は、総合計画後期基本計画がスタートする年であり、計画を実行に移し、課題を見逃さず、果敢に挑戦し、未来に向かって大きく踏み出さなければならない年であると言えます。
世界共通の持続可能な開発目標SDGsの理念を踏まえながら、未来を見据え重要課題に重点的、戦略的に取り組むとともに、社会情勢の変化にも柔軟かつ機動的に対応できる市政運営を進めてまいります。

一極集中とも言われた東京都の人口は、新型コロナウイルス感染症の影響により、人口動向に変化が生じ始めています。
昨年の東京都の人口推計によると1956年の調査開始以来、6月として初めて前月比で人口が減少しました。
東京の「密」を避けるため、転入者数が伸びなかったことが要因とも言われ、「コロナ禍が東京一極集中を変える歴史的な転換点になる可能性がある」と見る識者もおります。
この地方回帰の兆しを捉え、人口減少対策に取り組んでいく必要があります。
そのためには、近隣自治体との連携によって、圏域全体を発展させていくことが重要なポイントになると認識しております。
私は、中東北の拠点都市一関の形成を市長就任時からスローガンに掲げ、地方創生の要として県境の垣根を越え、宮城県栗原市、登米市、そして当市及び平泉町からなる「栗登一平」の連携を進めてまいりました。
今後とも3市町との連携を深め、圏域全体の発展がそれぞれの地域の発展に結び付くようにスピード感をもって取り組んでまいる決意であります。

これまで申し上げましたような各種施策を確実に推進していくためには、その裏づけとなる財政の健全性が求められます。
このため、令和3年度を初年度とする第4次行政改革大綱・集中改革プランを推進し、市民との協働や民間活力の活用により、質の高い行政サービスを持続的に提供できるよう、組織の見直しや事務事業の効率的な取組の推進、歳出の徹底的な見直しなど、一層の行財政改革を進めてまいります。
また、公共施設等総合管理計画に基づき、施設保有の見直しの取組を進めてまいります。

7.おわりに

むすびとなりますが、
「疾風に勁草を知る」という言葉があります。
これは「激しい風が吹いて、はじめて丈夫な草が見分けられる」という意味であります。
強い風が吹きつけるような逆境のときこそ、本当の強さを持つものの存在が分かるものという例えであります。
世界では今、新型コロナウイルス感染症という疾風が吹き荒れています。
一関においても今、経験したことのない人口減少や高齢化という風が今後一層強く吹き寄せてくることが明らかであります。
さらには、地球温暖化やAIなどのテクノロジーの進化の波も急速に押し寄せてまいります。
そのような環境下にあっても、一関市は勁草の如く強く立ち続けていられるような都市であり続けたいと願うものであります。
そのためには、市民の皆様お一人お一人との絆をより強固なものとし、市民の生命と生活を守り、新型コロナウイルス感染拡大防止と社会経済活動の両立を図り、ふるさと一関の発展のために全力で取り組んでまいる覚悟でありますので、よろしくご理解、ご協力をお願い申し上げまして、令和3年度の施政に臨む方針とさせていただきたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。