本日ここに、第37回一関市議会定例会が開会されるに当たりまして、平成24年度の施政の方針を申し上げます。

1 はじめに

地域全体の長年の悲願でありました平泉文化の世界遺産登録が、昨年の6月に実現し、平泉の新たな歴史が始まりました。
その同じ年、私たちのふるさとは、東日本大震災という未曽有の大災害に見舞われ、私たちにとって決して忘れることのできない年となりました。
また、急速な高齢化と人口減少が続く中、ヨーロッパ発の金融不安やTPP参加による地域経済への影響が懸念されるなど、私たちの身の回りには、先行きの不透明さが増しており、また、歴史的な円高や長引くデフレが足かせとなって、この東北の地は、今、震災の悲しみの中にあって、大きな試練の時を迎えております。
しかし、このような時であればこそ、大震災からの復旧、復興、さらに進んで振興へと、知恵と力を合わせて、震災以前よりもっと発展できるよう、元気なまちをつくっていくことが、何よりも強く求められている時でもあります。
私は、そのような観点から、平成24年度の予算編成に当たったところであります。
それでは、平成24年度の施策について申し上げます。

2 新たな枠組みで力強く踏み出す平成24年度予算

私は、市長就任以来、雇用対策を柱とする経済対策や岩手・宮城内陸地震からの完全復興、子育てしやすい環境づくりを重点施策とし、市民生活の安全安心を第一に、予算を編成し、市政運営に努めて参りました。
こうした取り組みもあって、企業誘致などの面では、他の都市に先駆けて明るい兆しが見え始めているところでありますが、当面の課題であった、4年前の内陸地震からの復興に向けた取り組みを始めた直後に、東日本大震災という未曽有の大災害に見舞われたものであります。
岩手・宮城内陸地震、東日本大震災という相次ぐ大災害を経験した当市であればこそ、今だからこそ、災害に強いまちづくりを強力に進め、明日につながる確実な一歩を力強く踏み出すことを念頭に、積極型の予算案を組むことができたと考えております。
その中で、中東北の拠点都市としての基礎を築くため早急に取り組むべき事業については、昨年度に引き続き特別に事業予算を確保して、その事業実施を図ることとしたところであり、さらには、約35億6千万円の経済対策を講じたところであります。
この結果、平成24年度当初予算の総額を704億9千4百万円、前年度に比べ16.6%の増としたところであります。
当初予算としては平成17年度の合併以降最大であった平成23年度当初予算をさらに上回る規模となり、私は、この予算案を「新たな枠組みで 力強く踏み出す予算」という積極型にすることができたと考えております。
 

3 重点施策

(1) 災害に強いまちづくり

それでは、平成24年度の重点施策について申し上げます。
重点施策の一つ目は、災害に強いまちづくりであります。
岩手・宮城内陸地震、東日本大震災という二つの大きな災害を経験した今こそ、その教訓を生かして、災害に強いまちづくりを進めることが重要であります。
これまでも、防災対策については計画を前倒しして取り組んで参りましたが、市民生活の安全安心を高めるため、さらにスピードを早めて取り組んで参ります。
防災行政情報システムの整備については、計画を前倒しし、平成25年度の運用開始を目指して取り組むことといたします。
さらには、コミュニティFM放送を活用した防災情報の迅速な提供に努めて参ります。
また、市所有の指定避難所のすべてに発電機を配備するほか、飲料水兼用耐震性貯水槽や災害用マンホールトイレの整備など、災害への備えを強めて参ります。
自らが自らを守る「自助」、地域が互いに助け合う「共助」、そして行政が支援する「公助」、これにより対応していくことが必要でありますが、これからの地域づくりでは自助・共助の割合を高めていくことが重要であり、そのための支援にも力を注いで参ります。
このため、すべての自主防災組織を対象として、発電機や大型炊き出し器などの購入費用を助成し、自主防災組織の体制強化を支援して参ります。

(2) 高齢化社会に対応した地域づくり

重点施策の二つ目は、高齢化社会に対応した地域づくりについてであります。
去る1月30日、国立社会保障・人口問題研究所は、2060年の日本の総人口が8,674万人にまで減少するとの推計値を公表いたしました。
高齢化率についても、現在の23%から40%に達するとの見通しであります。
人口減少と高齢化がさらに進む中で、現在の行政サービスのあり方を時代に合ったものに変えていくことが求められております。
例えば、「買い物」ひとつ取ってみても、これまでは、個人の領域の事柄であったものが、地域社会として考えていかなければならないテーマとなって参ります。
このため、公共交通機関のあり方を、高齢者の利用に配慮した運行体制とするなど、行政サービスの見直しも考えていかなければなりません。
また、このことは、単に、交通手段の確保といった問題にとどまらず、それを支える地域コミュニティのあり方など、多方面から検討を加えることが必要となって参ります。
高齢化に関連して、もう一つの大きな課題となっているのが、地域医療の確保であります。
地域にとって、どのような医療サービスが求められているのか、それに合ったものを提供していくことが、強く求められています。
地域における病気や患者の実情に合った医療が提供されるためには、県、医師会など関係機関との一層の連携を図りながら、取り組んでいくことが何よりも重要と考えております。
さらに、高齢化社会への対応を考える時、福祉や介護といった直接的な分野にとどまらず、産業や文化、都市整備など、ハード・ソフトの両面でまちづくりの考え方を設計段階から変えていくことが必要であり、それらの検討にも着手して参ります。
防災への対応も、高齢化社会への対応も待ったなしの課題であります。
時代の変化にどのように対応してゆけばよいのか、行政には、その課題を見いだす役割が求められていると認識しております。
また、地域のコミュニティのあり方が問われており、これらについて、中長期的な視点から検討を加え、どのような施策が有効なのか、一つひとつについて、市民みんなで考えていかなければなりません。
平成24年度は、次なる課題にいち早く踏み込んで参ります。
大胆に、しかし、きめ細かく立ち入って参りたいと思います。

(3) 中東北の拠点都市一関の形成

私は、中東北の拠点都市一関の形成を政策の柱に掲げ、子育て支援や雇用対策、産業振興に努めて参りました。
岩手県南から宮城県北に至る地域を中東北というくくりでとらえ、それぞれの地域が互いに競い合いながら圏域全体で発展していくことを目標に、一関市がそのけん引役を果たして参りたいと考えております。
住みよいまち、安心して暮らせるまちをつくるための施策を一つひとつ積み上げることが、中東北拠点都市としての基礎をつくることにつながります。
そのためには、安心して子どもを育てられる環境づくりが必要であり、小学生の医療費無料化や子宮頸がん予防ワクチンなどの全額公費助成について、昨年度、制度化を図ったところでありますが、さらに、放課後児童クラブやこども園、保育園の整備を進め、子育て環境の一層の充実を図って参ります。
私は、こういった子育て支援策を積み上げていくことが人材育成へとつながり、若者の地元定着に結びついていくものと考えております。
子育て環境とともに大切なのが働く場の整備であります。
雇用を支えるための施策は、雇用する側、雇用される側、そして、それを支援する側、それぞれへの支援が必要であります。
雇用対策は、いわゆる「職に就く」という入口の部分から出口に至るまで、一貫した施策が必要であると考え、技能・技術などの資格取得に対する支援、雇用の安定・定着を図るための地域企業パワーアップ支援事業や中小企業の魅力発信力向上事業を実施してきたところであり、今後もこれを継続していく必要があると考えております。
また、ふるさと就職支援事業を実施し、ジョブカフェなど関係機関との連携を密にして若者の地元定着に努めるとともに、震災等緊急雇用対応事業を実施し、地域で働く人材の育成を支援して参ります。
産業振興については、当市の物産や観光資源のブランド力を高め、全国に売り込んでいくため、「地産外商」の看板を掲げて取り組むこととしたところでありましたが、東日本大震災の影響もあり、平成23年度においては十分な取り組みをすることができませんでした。
このため、平成24年度において改めて「地産外商」の看板を掲げ、一関産ということが、そのまま全国に通用するブランドとなるよう、情報発信と販路拡大の両面から施策を展開することとし、一関ブランドの向上と一関ファンの拡大に努めて参ります。
また、原発事故の影響による風評被害に対しましては、市独自に農林産物の放射性物質の測定を実施し適切な情報発信を図るなど、農林業や製造業、観光業など当市の産業全般にわたる信頼回復に努めて参ります。
一関地方の豊かな自然や歴史文化は、私たち市民の誇りであるとともに、何ものにも代え難い貴重な観光資源でもあります。
各種PRイベントなどの取り組みを通じて、地域の観光資源を内外にアピールするなど、全国、そして海外を意識した発信力を高めて参ります。
さらに、栗駒山を囲む宮城県栗原市、秋田県湯沢市並びに東成瀬村と連携して、中東北としての新たな観光商品づくりに取り組み、観光交流の推進に努めて参ります。
この3月に「東北観光博」が、4月からは「いわてデスティネーションキャンぺーン」が実施されます。
当市においては、一ノ関駅西口に設置してある観光案内所を全面リニューアルするとともに、「平泉・一関ゾーン」の玄関口として、観光客への情報発信に努めて参ります。
また、平泉ナンバーの実現に向けた運動についても強力に進めて参ります。
国内外の関係機関により建設に向けた協議が行われております国際リニアコライダー計画については、岩手県・東北経済連合会・東北大学など、関係機関と連携しながら、情報収集を進めるとともに、(仮称)一関市学術研究都市構想の策定に着手いたします。
陸前高田及び気仙沼両市は、文字通り「近所」のまちでありますが、私は、これを「近いところ同士が助け合う」、いわゆる、助けるの字を充てて「近助」と置き換え、「住民同士のお互いさま」の関係、「行政同士のお互いさま」の関係、これによってこれまで後方支援活動に努めて参りました。
私は、これに加えて「企業同士のお互いさま」の関係を構築することによって、復興をさらに加速させることができると考えております。
沿岸被災地の一日も早い復興のため、一関市として、これからも支援を継続して参りたいと考えております。
 

(4) 放射線対策

重点施策の四つ目は、放射線対策であります。
東京電力福島第一原子力発電所の事故により、当市を含む岩手県南地域は、放射線量の高い地域として、放射性物質汚染対処特別措置法に基づく汚染状況重点調査地域の指定を受け、現在、除染実施計画を策定しているところでありますが、この除染実施計画に基づいて、確実に除染を進めていくことが何よりも重要な課題であると認識しております。
このため、放射線対策室を設置して取り組んで参りますが、この計画の推進のためには市民の皆様の協力が不可欠であります。
地域全体での取り組みで、この課題の解決に向けて全力を傾注して参りたいと考えております。
以上、平成24年度の重点施策について申し上げました。
次に、分野別の主な施策について、総合計画基本構想のまちづくりの目標に沿って申し上げます。
 

4 分野別の主な施策

(1)地域資源を生み育てにぎわいと活力あふれるまちづくり

第1に「地域資源を生み育て賑わいと活力あふれるまちづくり」の施策について申し上げます。
農業については、米、畜産、園芸作物などにおいて、全国に誇れる品質の高い多彩な農畜産物が生産されていることから、安全の基礎となる放射線対策を優先課題として取り組むとともに、生産体制の強化と担い手の育成、高付加価値化と販路拡大を進めて、農業、農村の振興に努めて参ります。
農畜産物のブランド化については、岩手南農協、いわい東農協やいわて南牛振興協会と連携して、消費地での情報発信力を高めながら、消費者に評価され、信頼される産地づくりを目指して参ります。
担い手育成については、各集落において地域農業のあるべき姿を検討していただき、その話し合いを基に、担い手農家や営農組織への農地集積などを推進するとともに、関係機関が連携し経営感覚に優れた農業者や効率的な営農組織の育成に努めて参ります。
また、青年層を中心とした新規就農者の確保、新たな雇用の創出、さらには、加工・販売など6次産業化に向け、起業に着目した人材の育成に努めるとともに、新規学卒者を一次産業に誘導し、担い手として地元に定着させる方策について、具体的に検討して参ります。
集落営農や農地保全については、中山間地域等直接支払制度や農地・水・保全管理支払交付金事業を活用した取り組みを支援して参ります。
水田農業については、需要動向を踏まえて、地域の特色ある特別栽培米や有機栽培米をはじめ、安全・安心でおいしい米づくりを促進するとともに、水田の基盤を生かした作物再編を進めて参ります。
また、国の農業者戸別所得補償制度については、経営の安定化と国内生産力の確保を図るとともに、戦略作物への作付転換を促進し、食料自給率の向上と農業の多面的機能の維持を目指すものであり、関係機関・団体と一体となって、その推進と活用に努めて参ります。
園芸・特産作物については、なす、トマト、小菊、乾しいたけなどを中心に、葉たばこからの転換作物としての誘導も進めながら生産振興策を講じ、市場に信頼される安定産地の確立を目指して、地産外商、地産地消の拡大を進めて参ります。
クマ、ハクビシン、イノシシなどによる被害対策については、一関市鳥獣被害防止対策協議会を中心に、地域での対策に取り組んで参ります。
畜産については、経営基盤の確立や優良素牛の導入による能力と品質の向上、公共牧場の効果的な活用促進により、経営体質の強い畜産農家の育成に努めて参ります。
農林産物の放射線対策については、食の安全を守り産地としての信頼を回復していくため、県や関係団体とも連携し、汚染された稲わら、牧草、堆肥の一時保管や処理を円滑に進めるとともに、農林産物の放射性物質の測定を実施し、安全安心を発信しながら風評被害の防止に努めて参ります。
また、国や県が実施すべき対策や支援を要請する事項については、当市の実情をふまえて要望活動を展開し、被害を受けた農業者に対する損害賠償が迅速かつ万全になされ、経営の再建と安定が一日も早く実現できるよう取り組んで参ります。
農業生産基盤の整備については、夏川地区などの整備を促進するとともに、整備希望地区の合意形成に向け、県と密接な連携を図りながら、ほ場整備事業を促進して参ります。
また、予算の確保について、国、県に対し、強く要望して参ります。
農業用施設の保全については、ため池等整備事業や農業水利施設保全対策事業及び土地改良施設耐震対策事業により、施設の適切な更新や改修を行い、機能確保と長寿命化を図って参ります。
また、国営農地開発事業によって整備された農地の利活用を促進するため、農業生産法人などの新規参入を進めて参ります。
林業については、市有林や民有林の除・間伐を進め、森林の健全な育成と資源の活用を促進するとともに、二酸化炭素の削減や水源の涵養など、森林の持つ公益的機能の維持増進を図り、温室効果ガスの排出削減と森林整備とを結びつける「クレジット化」に取り組んで参ります。
また、国の森林・林業再生プランに基づく、森林整備計画の見直しや森林経営計画制度の創設に対応し、森林組合との連携を図り、適切な森林施業の実行に取り組んで参ります。
なお、TPPへの対応につきましては、全産業分野にわたる日本としての産業の形を決めていくものでありますことから、国においては、農業・農村を守るしっかりとした対策を示し、十分な説明責任を果たすべきと考えており、国民の理解はもとより、特にも農業者の合意が得られない限り反対せざるを得ません。
今後の検討については慎重かつ適切な対応を行うよう、市長会をはじめとして、さまざまな機会を捉えて訴えて参ります。
次に、工業については、地域の特性や資源を生かしながら工業振興施策を展開するため、工業振興計画を策定いたします。
市内の企業の競争力を強化するため、人材育成の視点と経営強化の視点の両面から支援し、ものづくり産業の集積を図って参ります。
人材育成については、企業ニーズの高い技能・技術の資格取得を目指す研修の機会を設けながら、当市を会場に品質管理検定を実施することにより、地域企業の品質管理能力の向上を図り、質の高いものづくりを支援して参ります。
経営強化については、市内企業の積極的な展示会への出展など、企業の魅力の情報発信を支援するとともに、地域企業の自動車関連産業への参入を促進して参ります。
また、工業団地のリース制度や立地企業の設備投資に対する助成措置などにより、積極的な企業誘致を展開するとともに、立地する企業の操業時に新規採用者の人材育成を支援するなど、フォローアップに努めて参ります。
さらに、沿岸地域で被災した企業が当市内で再出発のための操業を行う場合に、事業の早期再開と円滑化を図るための支援を行って参ります。
雇用対策については、地域企業パワーアップ支援事業などのほか、求職者を対象とした情報化研修の実施、職業訓練施設を活用した離職者の再就職訓練事業やキャリア教育の支援に取り組んで参ります。
求職者への相談体制については、本庁内の無料職業紹介所、千厩支所に設置している「ふるさとハローワーク」のほか、関係機関・団体と連携して、一人でも多くの就労が実現するよう、企業に要請するなど、雇用機会の創出に取り組んで参ります。
商業については、中小企業振興資金の融資枠を確保しながら融資制度の活用を図り、中小企業者への支援を図って参ります。
また、一関商工会議所、藤沢町商工会や地元商店会とも連携しながら、ど市、互市、夜市などの各種イベントを通じた商業振興を図って参ります。
旧ダイエー一関店については、市民活動の拠点施設として整備し、中心市街地の活性化を図って参ります。
観光については、地域の多彩な観光資源を生かしながら、観光振興施策を戦略的に展開するため、観光振興計画を策定いたします。
「いわてデスティネーションキャンぺーン」における来訪客へのイベントの充実を図るほか、平泉と市内の観光地を周遊するパンフレットなどの作成に加え、観光地を結ぶ二次交通の整備や一ノ関駅における観光案内を強化するなど、観光客の利便性の向上に努めて参ります。
また、増加が見込まれる外国人観光客に対応した多言語表記のパンフレットも作成して参ります。
物産については、関係団体の活動を支援するとともに、産業まつりや姉妹都市である福島県三春町、友好都市である埼玉県吉川市、和歌山県田辺市などとの交流を通じて、地場産品の宣伝と販路拡大に努めて参ります。
 

(2)みんなで支え合いと共に創る安全・安心のまちづくり 

第2に「みんなで支え合い共に創る安全・安心のまちづくり」の施策について申し上げます。
市民の健康づくりについては、健康いちのせき21計画及び食育推進計画の周知啓発に努めながら、市民の自主的な健康づくりや健全な食生活のあり方について、意識の高揚を図って参ります。
健康づくりの拠点施設として移転整備する一関保健センターについては、実施設計に着手いたします。
健康診査については、疾病の早期発見、早期治療を図るため、循環器系健康診査をはじめ、各種がん検診や妊婦健康診査などを実施して参ります。
国民健康保険については、特定健康診査や特定保健指導の促進、各種制度の周知、税収の確保を図り、事業の健全な運営に努めて参ります。
後期高齢者医療については、岩手県後期高齢者医療広域連合との連携を密にしながら、制度の周知、保険料の収納確保に努め、制度の適切な運営を進めて参ります。
地域医療については、地域医療・介護連携推進事業に取り組み、地域における医療機関相互の連携や機能分担、医療と介護の連携体制づくりを進めるとともに、医師確保を図るため、医師修学資金貸付事業を実施して参ります。
また、医師会などの協力をいただきながら、休日当番医制事業や夜間救急当番医制事業などにより、初期救急医療の確保に努めて参ります。
さらに、一昨年から開催しております市民フォーラムを平成24年度も開催し、予防医療についての意識啓発に努めるとともに、県立病院などの負担軽減を図るため、医療機関の適正受診やかかりつけ医についてのハンドブックを作成し、医療機関、市民、行政、それぞれの役割や連携を強化しながら地域医療体制の充実を図って参ります。
病院事業については、構成する各事業の一体的運営の特色を生かしたサービスの提供や幅広い住民参加型医療によって、安定した経営と新しい地域医療の形を追求しながら適正な運営に努めて参ります。
子育て支援については、第3子以降の保育料無料化を実施するほか、曽慶保育園・藤沢こども園の移転新築や猿沢保育園の耐震補強工事、八幡町・あおば統合保育園の実施設計に着手するなど、保育環境の整備に取り組んで参ります。
また、放課後児童対策については、新たに厳美地区への児童クラブの設立を支援するほか、大東・川崎地域の施設充実を進めるなど、保護者の就労支援と放課後の留守家庭児童の健全育成に努めて参ります。
さらに、増加する児童の養育に関する相談に対応するため、家庭児童相談員の増員を図り、関係機関との連携を強化しながら、要保護児童対策に努めて参ります。
乳幼児健康診査や発達支援相談など、子どもの発達に関わる関係機関との連携を推進し、子どもの発達を総合的に支援するとともに、市民のこころの相談支援を行うため、平成24年度から専門職である臨床心理士を配置し、相談体制の充実を図って参ります。
障がい者福祉については、地域におけるきめ細やかな支援体制のさらなる充実に努めるとともに、日中の活動の場として、地域活動支援センターの整備促進を図り、障がいのある方の地域生活を支援して参ります。
また、障がいのある方の自立と社会参加の促進を図るため、就労の場の確保など、就労支援に取り組んで参ります。
高齢者福祉については、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を送ることができるよう、健康づくりや生きがいづくりの活動を支援するとともに、旧ダイエー一関店を活用した市街地活性化施設整備事業の一環として高齢者の活動拠点を整備し、趣味・教養の向上、レクリエーション活動などを充実させて参ります。
また、高齢者肺炎球菌ワクチン接種事業を実施し、疾病の予防に努めて参ります。
生活保護世帯への対応については、適正な保護の実施に努めるとともに、その自立を支援するため、社会参加推進プログラム事業を実施し、ボランティア活動などの社会参加や就労体験の場の提供に努めて参ります。
一関遊水地事業については、狐禅寺地区管理用通路及び小堤の早期完了を図るとともに、磐井川堤防改修について用地買収や家屋移転についての協力を行うほか、JR磐井川鉄橋架け替えの早期協議開始を要望して参ります。
なお、磐井川堤防改修工事に当たっては、市民行事や景観への影響を最小限に抑えるよう関係機関と協議するとともに、伐採を余儀なくされた桜並木については、水害犠牲者を慰霊し災害復興事業を後世に伝えるという60年前の植樹の想いを引き継ぎ、市民と一緒にその再生を図って参ります。
一関遊水地下流部に位置する狭隘地区の治水対策については、砂鉄川合流点から宮城県境までの川崎地域、花泉地域及び藤沢地域の区間について、一関遊水地事業小堤工事と併せ一体的に事業が推進されるよう関係機関との調整や事業支援を強く働きかけて参ります。
また、災害への備えとなる砂防えん堤の建設、嵩上げや赤荻地区などの里山山腹崩落地の災害復旧事業について、国・県に要望して参ります。
消防防災については、東日本大震災の経験を踏まえて地域防災計画の見直しを行い、今後発生する大規模災害に備えて、公共施設を中心とした避難所に非常用発電設備を整備するほか、市内全域に防災情報を一斉伝達できるよう、防災行政情報システム及び消防救急無線デジタル化などの整備を進めて参ります。
また、イベントなどを活用した防災知識の普及や自主防災組織の結成・育成強化を推進し、市民の防災意識の高揚と被害の軽減を図って参ります。
土砂災害から住民の生命を守るため、土砂災害ハザードマップを作成し、警戒避難情報の周知を図って参ります。
防災拠点となる本庁舎並びに支所庁舎については、災害時にも安定した電源供給が可能な非常用自家発電設備への更新などを計画的に進めるとともに、非常用電源系統の見直しを図って参ります。
また、本庁舎並びに千厩支所庁舎の耐震補強工事の実施設計に着手するとともに、老朽化の進んだ川崎支所庁舎については、隣接する川崎農村環境改善センターを仮庁舎としながら、現在地への改築整備に着手して参ります。
木造住宅耐震改修工事助成事業を実施して、木造住宅の耐震化を図るとともに、緊急経済対策住宅リフォーム助成事業を実施し、雇用機会の創出にも努めて参ります。
東日本大震災により被災した住宅の早期復興を応援するため、被災住宅の復興のために借り入れた住宅融資に対し利子補給を行うとともに、被災住宅の補修工事及び被災宅地の復旧工事に対しても助成して参ります。
また、水道未給水区域における災害復旧対策として、震災により枯渇あるいは水質が悪化した井戸の掘削に要する経費を補助して参ります。
消防救急体制については、防災拠点となる北消防署を建設いたします。
また、消防車両の更新及び飲料水兼用耐震性貯水槽の整備を進めて参ります。
市内すべての中学校で救急救命講習を実施し、地域や家庭への普及を図って参ります。
交通安全及び防犯については、安全安心まちづくり市民大会の開催など、交通安全及び防犯思想の意識高揚を図るとともに、地域が取り組む防犯灯の設置を支援するなど、安全で住みよい地域づくりを進めて参ります。
消費生活相談については、本庁と千厩支所に設置している消費生活センター相談室において、消費生活や多重債務相談へ対応して参ります。
自殺対策については、うつ・自殺予防講演会や地区健康相談、地域での身近な存在となる傾聴ボランティアの養成講座などを開催するとともに、臨床心理士による「こころの健康相談」や保健師などによる訪問・相談体制の一層の充実を図り、自殺予防に努めて参ります。

(3)人を育み文化を創造する生きがいのあるまちづくり

第3に「人を育み文化を創造する生きがいのあるまちづくり」の施策について申し上げます。
人材の育成については、地域の活力を創造し、まちづくりを推進していく土台となるものであり、地域の将来を担う子どもたちが、明確な目的意識を持って学業に取り組み、主体的に自己進路の選択・決定ができる能力やしっかりとした勤労観・職業観を身に付け、社会人として自立できるようキャリア教育に取り組んで参ります。
また、中学生を筑波研究学園都市に派遣し、最先端科学技術に接する機会をつくるとともに、研究者と交流する機会をつくって参ります。
学校施設の整備については、平成25年4月の開校を目指し、大東小学校の建設と川崎地域の統合小学校校舎となる薄衣小学校の整備を進めて参ります。
また、山目小学校と東山中学校の校舎の改築に取り組むとともに、舞川幼稚園、真滝幼稚園、舞川中学校の耐震補強工事、藤沢中学校屋内運動場の耐震診断、室根中学校のプール改修工事を進め、安全確保と教育環境の向上に努めて参ります。
学校給食センターについては、(仮称)千厩学校給食センターの建設工事を進めて参ります。
また、学校給食食材などの放射性物質の測定を実施し、安全な給食の提供に努めて参ります。
図書館については、花泉図書館については平成24年度中に完成、一関図書館については平成24年度に建設工事に着手いたします。
また、読書指導員の増員や図書資料の充実に努めて参ります。
公民館施設の整備については、一関公民館、永井公民館の移転整備を進めるほか、大原公民館の耐震補強工事を実施して参ります。
スポーツ施設の整備については、一関運動公園テニスコートの増設整備や花泉第二体育館、千厩体育館、藤沢体育館の耐震補強工事などスポーツ環境の整備を図って参ります。
また、磐井川堤防改修事業に伴い移転する一関水泳プールを本年7月から供用開始いたします。
男女共同参画の推進については、第2次いちのせき男女共同参画プランの着実な取り組みを、市民との協働のもとに進めて参ります。
骨寺村荘園遺跡については、世界遺産の追加登録に向け、調査研究や国との協議を進めて参ります。
また、世界遺産「平泉」の関連資産としての価値を最大限に活用し、骨寺村荘園交流施設を核に、その魅力を内外に情報発信するとともに、交流館展示棟の展示工事に着手して参ります。
なお、教育行政の具体については、教育委員長より申し上げます。

(4)人と情報が活発に行き交うふれあいと連携のまちづくり

第4に「人と情報が活発に行き交うふれあいと連携のまちづくり」の施策について申し上げます。
国際交流については、昨年11月に国際姉妹都市提携の調印を行ったオーストラリア連邦セントラルハイランズ市との各種交流事業を展開して参ります。
国・県道の幹線交通網の整備については、岩手県復興計画で復興支援道路に位置付けられた国道284号・342号・343号を主体に、急カーブや急勾配、狭隘部の解消を目指し、信頼性の高い道路ネットワークの構築を進めます。
国道284号室根バイパスについては、早期工事着手のため、用地買収を促進するとともに、弥栄地区の道路改良について要望して参ります。
国道342号厳美バイパス及び花泉バイパスについては、全線の早期完成を促進するとともに、花泉バイパス以南から宮城県境までの整備促進について要望して参ります。
国道343号大原バイパス及び主要地方道一関大東線生出・流矢地区については、関係機関と連携しながら整備促進について要望して参ります。
新笹ノ田トンネルについては、陸前高田市と連携を図りながら事業化に向けて要望して参ります。
国道456号については、摩王地区の交差部の整備促進、藤沢バイパスの早期実現と宮城県境のトンネル化について、関係機関と連携しながら要望して参ります。
また、歩行者の通行環境改善と朝夕の渋滞緩和を図るため、国道4号一関大橋以南の四車線化について要望するとともに、国道4号の補完としての広域幹線道路となる栗原北上線の県道昇格を関係市町と一体となって要望して参ります。
市道については、医療、消防、工業団地などの基幹施設と地域を結ぶ重要な路線として、矢ノ目沢金沢線・清水原一関線、中駒場線、松川駅館下線、増沢新沼線などの整備を推進して参ります。
また、市民からの要望が多い路線への歩道設置についても、状況を十分に把握し、順次、整備を進めて参ります。
橋梁については、橋梁点検と修繕計画の策定を進め、長寿命化を図るとともに修繕費用の縮減を図って参ります。
街路については、山目駅前釣山線整備を進め、交通渋滞の緩和を図るとともに、中心市街地の回遊ルートとなる歴史の小道の整備に係る社会実験を進めて参ります。
バス交通については、公共交通利用者予測調査や試験運行の結果を踏まえ、市営バスなどの運行のあり方について具体的に検討して参ります。
また、JR利用者など地域住民の利便性の向上を図るため、駅前トイレの整備を行って参ります。
一ノ関駅東口南駐車場については、平成24年度において新たに拡張整備を図り、利用者の利便性向上に努めて参ります。
コミュニティFM放送の開局に伴い、地域に密着したきめ細やかな情報と防災情報の迅速な提供を行うとともに、さらなる中継局の整備を行い、受信エリアの確保を進めて参ります。
また、行政情報の積極的な提供にも努めて参ります。

(5)水と緑を守り育み自然と共生するまちづくり

第5に「水と緑を守り育み自然と共生するまちづくり」の施策について申し上げます。
地球温暖化対策については、二酸化炭素排出量の削減を図るため、住宅用太陽光発電システムや太陽熱利用機器、高効率給湯器の設置を促進するとともに防犯灯のLED化を進め、新エネルギー・省エネルギーの取り組みを推進して参ります。
また、一関地球温暖化対策地域協議会と連携し、学習会の開催や広報紙の発行などにより意識啓発に努めて参ります。
一ノ関駅前の西口北・南駐車場、地主町駐車場及び西口自転車駐車場の照明灯を改修し、省電力化を進めて参ります。
ごみの減量化、資源化については、市民の意識啓発を図るとともに、不法投棄監視カメラの活用を図りながら、不法投棄を許さないまちづくりを推進して参ります。
公園については、盛岡地方裁判所一関支部隣接地を取得し、釣山公園として拡張整備を行うとともに、既存の公園の整備及び遊具の点検・更新など、適切な管理に努めて参ります。
簡易水道事業については、厳美・萩荘簡易水道事業のほか、17事業を推進し、水道未普及地域の解消に努めるとともに、施設の老朽化に伴う改修・更新について実施して参ります。
水道事業については、上巻及び前堀浄水場の整備を実施するほか、水道施設管理システムの構築など、安全な水の安定供給に努めて参ります。
また、災害時のライフライン確保のため、水道施設の非常用電源設備の拡充及び耐震診断を実施し、施設の計画的な更新を進めて参ります。
公共下水道事業については、管路の整備を推進しながら一関、花泉、千厩地域の供用区域を拡大し、快適な生活環境の向上に努めて参ります。
また、下水道未接続世帯への普及を図るとともに、個人設置型合併処理浄化槽設置整備事業補助金の補助率を引き上げ、水洗化の促進に努めて参ります。
景観形成については、市民が主体的に取り組む景観まちづくり活動への支援を行い、自然と共生するまちづくりを推進して参ります。

5 市政運営の基本

以上、分野別施策の主なものを申し上げましたが、これらの施策については、将来を見据えた明確な目標を持って、計画的に進めていくことが必要であります。
平成24年度は、一関市総合計画後期基本計画の実質的なスタートの年であり、計画の着実な推進に努め、中東北の拠点都市形成に向けたまちづくりに邁進して参りたいと思います。
当市の財政状況は、地方財政健全化法に基づく健全化判断比率などでは、国が定める早期健全化基準以下ではあるものの、少子・高齢化の進行、人口減少などにより、市の財政を取り巻く環境は、厳しさを増していくものと見込まれますことから、多様な市民ニーズや行政課題に的確に対応していくため、より一層、財政の健全化を図り、持続可能な行財政基盤の確立に努めていかなければならないと認識しております。
私は、市民の声を市政に反映させるためには、現場での視点が大切であると考えており、これからの移動市長室などを通じて、地域の方々との対話を深めて参ります。
協働推進アクションプランをもとに、市民との協働による着実なまちづくりを進めるため、その基盤となる地域コミュニティへの支援、市民が主体となって進める横断的な組織づくりを支援して参ります。
また、市民主体の地域づくりを積極的に進めるため、市民活動団体が活動しやすい基盤づくりに努めるとともに、地域おこし事業などにより、その取り組みを支援して参ります。


私たちには、大きな悲しみ、苦しみを乗り越えてきた歴史があります。
この地域においても、カスリン、アイオン台風をはじめ、たび重なる水害に見舞われ、幾度となく壊滅的なまでの被害を受けた歴史があります。
このまちが、今日の成長を築き上げることができたのは、このまちに暮らす人々、その一人ひとりが不屈の精神があったからであり、このまちには、困難から立ち上がる底力があると信じております。
私たちは、ふるさとを、再生させなければなりません。
悲しみを背負ってばかりではいられません。
頑張ろう 陸前高田、
頑張ろう 気仙沼、南三陸、
頑張ろう 登米、栗原、
そして、頑張ろう 平泉、
明日に希望を託して、力強い歩みを進めていきましょう。
頑張ろう いちのせき。

議員各位並びに市民の皆様のご理解とご協力を心よりお願い申し上げまして、平成24年度の施政方針といたします。

(平成24年2月21日 第37回一関市議会定例会)