市長所信表明(令和3年10月19日)
10月19日に開かれた市議会定例会で1期目のスタートにあたり佐藤善仁市長が述べた所信表明の全文を紹介します。 |
本日ここに、一関市議会10月招集会議本会議が開催されるに当たり、今後の市政運営について、私の所信の一端を述べさせていただきます。
先ずもって、この度の一関市議会議員選挙におきまして、見事当選の栄誉に浴されました議員各位に対して、心からお祝いを申し上げます。
おめでとうございました。私も、この度、先の一関市長選挙において、市長の職に就くこととなりました。責任の重大さを感じており、身の引き締まる思いであります。
また、市政の遂行に全力を傾ける決意をあらたにしたところであります。私は、この度の市長選挙を通じて、新型コロナへの対応についてと人口減少への対処が最大の課題であると訴えてまいりました。
また、出馬表明を機に市内各地域に出向き、直に市民の皆様の声をお聞きする機会を得ました。
企業、団体、商店、農家の皆さんとの意見交換は、限られた時間ではありましたが、今後の課題解決を考える時間となり、地域づくりに向けた取組へのヒントになりました。さて、新型コロナウイルス感染症は、ワクチン接種が進み、感染者が減少傾向にはありますが、専門家の間では第6波の到来が懸念されており、依然として予断を許さない状況にあります。
歴史を振り返ると100年前に発生したスペイン風邪の蔓延は終息まで3年間にわたり、世界中に猛威を振るいました。
一昨年の暮れに確認された新型コロナウイルス感染症は、新たなパンデミックとなり、間もなく2年となる今もなお終息の目途が立っておりません。
今、私たちができる最善の取組により、この感染症の拡大を抑制することが基本であると考えております。
市民の皆様には長期間に及ぶ自粛や行動の制限などに協力をいただいており、感染対策の徹底とワクチン接種の早期完了を目指し、経済活動、社会活動の面において一日でも早く失われた日常を取り戻してまいりたいと考えております。
また、飲食業や観光業への影響に止まらず他の産業分野にも影響を及ぼし、長期にわたるコロナ対策で市内経済は疲弊しており、喫緊の課題として捉えております。
さらには、新型コロナウイルス感染症の影響による米価の下落は、本市の基幹産業である農業にも大きな影を落としており、生産者に対する支援策の検討が必要と感じております。
今後、ワクチンの接種率が高まるとともに、治療薬の開発、新型コロナウイルス感染症への医学上の知見の蓄積により、これからの対応策は新たな段階に入ってくるものと考えられます。
今後においては、その時々の状況を見極めながら感染防止、生活支援、経営支援という3つの柱の組み合わせにより新型コロナウ イルス感染症への対策を講じてまいります。次に、今後の市政運営における重要項目について、市が、昨年度策定した、一関市総合計画後期基本計画に掲げる、3つの重点プロジェクトにそって申し上げます。
重点プロジェクトの一つ目は、まち・ひと・しごとの創生であり、私は、最大の課題は人口減少であると認識しております。
現在の一関市のエリアにおける人口のピークは、昭和30年の174,342人であり、以来、人口は減少を続け、令和2年の国勢調査人口の速報値では111,970人、ピーク時の昭和30年と比較して62,372人もの減少となっております。
言い換えれば、昭和30年から人口減少は続いていた、この65年間、人口は減り続けていた、ということであります。
今後はさらに加速度的な人口減少が見込まれ、地域の経済、医療、福祉、介護、教育、文化、生活の利便性など様々な分野に影響を及ぼすものと予想されます。
人口減少そのものを止めることは市町村のみの努力では困難でありますが、「人口が減る」ことによるダメージを少なくするとともに、地域の活力を高める施策を展開してまいりたいと考えております。
そのため、
・ 社会減に向けた対策、
・ 健康長寿のまちづくり、
・ 現役世代への支援をはじめとした、
すべての政策を総動員して、この課題に対処してまいります。先ず、一点目は、
働く場を増やす 稼ぐ力を高める
ことについてであります。
地域の活力を維持していくためには、まず「仕事」です。
・ 従来のような画一的・単一的な雇用形態に合わせるだけではなく、多様性のある産業構造や社会環境を作り上げ、特に若者や女性などの現役世代の働く場をつくり、多様な働き方の実現を支援してまいります。
・ 新しいビジネスや起業を支援するとともに市内企業の技術力、競争力を高め、所得の向上をめざしてまいります。
・ 農業・林業分野における雇用就労と多様な働き方を創出するとともに、各産業における人材の集積を図り、事業承継を支援してまいります。次に、二点目として
人が輝く 人を育てる
ことについてであります。
一人ひとりが輝く、「ひと」が中心の社会でなければなりません。
・ 女性が結婚、出産後も家庭や子育てを犠牲にすることなく普通に頑張れる社会、自分の子供が世の中で一番大切だと思っているお母さんが当たり前に活躍できる社会、普通に活躍できる社会をめざしてまいります。
また、従来のような福祉的、介護予防的な面だけではなく、60代、70代など、いくつになっても生涯現役で働く意欲と体力を維持できる社会となるよう、女性活躍と健康長寿ナンバーワンのまちをめざしてまいります。
・ また、「子育て」を負担に感じることなく、「子育て」をエンジョイし、「子育て」の中で親が成長できる社会をめざしてまいります。
・ さらに、仕事だけではなくプライベートも充実させる考え方であるワークライフバランス(仕事と生活の調和)の取組を進め、働き方や社会としての多様性を高めてまいります。三点目でありますが、私は、只今、申し上げた、
「しごとづくり(働く・稼ぐ)」と「ひとづくり(人が輝く・人を育てる)」
を足し算・掛け算することで、まちづくり・地域づくりがさらに進むものと考えており、それが人口減少に対応する基本方程式であると認識しております。
そのためにも、
・ 人や経済が市内で循環し、成長する「まち」
・ 暮らしやすさ、生きやすさを実感できる「まち」
をめざし、
・ コロナ後(アフターコロナ)を見すえ、
「まち」の形や仕組みをデザインしてまいります。そして、これらの取組により、
・ まちを伸ばす
・ 一関市を伸ばす
・ 地域を元気にしてまいります。次に、総合計画後期基本計画の重点プロジェクトに掲げております、東日本大震災からの復旧復興についてであります。
平成23年の震災から11年目を迎えた現在もなお、未だに大きな傷跡が残されております。
稲わら、たい肥、牧草、しいたけの農林業系廃棄物は処理が進まず、埋設一時保管をしている汚染された道路側溝土砂、学校や保育園などの敷地内の土砂については、未だに国から処理基準が示されておりません。
さらには被害農家などの経営再建、損害賠償の迅速化など解決しなければならない多くの課題を抱えております。
放射性物質による汚染問題を風化させることなく、国や県と連携しながら対策を講じるとともに、原因者である東京電力への責任をあらためて求めてまいります。次に、総合計画後期基本計画の重点プロジェクトに掲げております、
ILCの実現についてであります。
少子高齢化や人口減少、新型コロナウイルス感染症により地域経済活動などへの影響が懸念される中、国際プロジェクトであるILCは本市の未来を大きく変える可能性を持った夢のあるプロジェクトであり、我が国が初めて主導することとなる国際プロジェクトであります。
私は、このプロジェクトの実現に向けて努力していく必要があると考えており、それだけの価値のあるビッグプロジェクトであると認識しております。
プロジェクトとしての大きさゆえに、実現までは簡単な道のりではないと思いますが、国の成長戦略に位置付け、着実に推進されるよう市民の理解促進を図り、地元自治体として受入れ環境の整備に努めてまいります。
以上、3つの重点プロジェクトについて、申し上げました。次に、個別具体的な課題について一点触れさせていただきます。
NECプラットフォームズ事業所跡地についてであります。
このNEC跡地は新幹線駅に接した広大な整形地であり、様々な用途に活用できる非常に資産価値の高い土地であると考えております。
私は、このような将来性のある土地を市の最重要課題である人口減少に対処するため、雇用を生み出す場、雇用を創り出す場として活用してまいりたいと考えております。
JR一ノ関駅東口に位置する同事業所跡地の活用の効果は、国道284号並びに一関大東線へのアクセスを介して、西磐井地区はもとより東磐井地区全域にも効果の拡大が期待されるところであります。
ただいま申し上げた、雇用を生み出す場としての具体案をまとめ上げる検討作業を早速にでもスタートさせたいと考えております。
また、NEC側に対しては、時間的な猶予の申入れを行うため、同社を訪問する日程の打診をしているところであります。以上、今後の市政を進めるうえでの基本的な方向性を申し上げましたが、まちづくりを進めていくためには、どのような施策に取り組んでいくかの考えをしっかりと持ち、それをどのように進めていくかの視点を定め、着実に取組んでいくことが必要であると考えております。
そのため、一つ目として
・ 説明責任と市民参画を両輪にして、協働のまちづくりの考え方のもと市政運営を進めてまいります。・ 二つ目として、将来世代まで見渡した財務経営を行い、安定的な行財政運営に努めてまいります。
・ 三つ目としては、県境を意識しない、同じ日常生活圏にある近隣自治体との連携は不可欠であり、そのためにも、平泉町と宮城県北の各市は重要なパートナーと位置づけ、引き続き連携を深めてまいります。
・ 四つ目として、デジタル化やICT(情報通信技術)の活用を進め、効率性と利便性の両面を満足させてまいります。
以上、どのようなまちづくりをめざしていくか、それをどのようにして進めていくかについて、申し上げました。
むすびとなりますが、新型コロナについても、人口減少についても、いずれも出口の見えない課題であります。
だからこそ、私はこの課題に果敢に挑戦し、見えない出口を突破しなければならないと考えております。私は、過日の市長就任式において、職員に対して、
・ 失敗を恐れず
・ 変えていく市役所
・ 挑戦していく市役所
をめざしてほしいと述べたところであります。任期満了を迎える4年後は、平成17年の市町村合併の年に生まれた子供が二十歳(はたち)になり、また、一関市も合併から20年の節目を迎えることとなります。
今後、加速度的に進む人口減少の荒波の中で、ふるさと一関が安心して住み続けられる「まち」となるよう、私は、情熱をもって行動し、一関市長としての職責を果たすべく、全力を尽くす覚悟であります。
市民の皆様並びに議員各位の市政に対するご理解とご協力をお願い申し上げ、今後4年間の市政運営に対する所信表明とさせていただきます。
ご清聴ありがとうございました。