平成30年度施政方針
本日ここに、第65回一関市議会定例会が開会されるに当たり、提案をいたしました議案等の説明に先立ち、今後の市政運営について、所信の一端と主要施策の概要について申し上げます。
1.はじめに
人口減少や少子高齢化が進み地方自治体を取り巻く環境が厳しさを増す中、国では、少子高齢化という壁に立ち向かうため、生産性革命と人づくり革命を両輪とした施策の推進や、誰もが生きがいを持って充実した生活を送ることができる一億総活躍社会の実現に向けた施策を推進することにより、経済の好循環を更に加速させ、その効果を地方まで波及させるための施策を実施していくこととしています。
当市にあっても、平成30年1月1日現在の人口は119,278人となっており、この1年間で1,791人の人口が減少し、高齢化も一層進む中で、人口減少や少子高齢化など、市が直面する課題や市民ニーズに的確に対応し、市民生活の向上に向けた取組を一層進める必要があります。
2.新たな時代への堅固な第一歩
私は昨年10月に、市民の皆様から引き続き3期目の市政運営を負託され、第63回一関市議会臨時会において、今後4年間の所信を申し述べたところであります。
今議会に提案している平成30年度予算については、市の総合計画の将来像に掲げた「みつけよう育てよう 郷土の宝 いのち輝く一関」この実現に向けた施策を、体系的かつ効果的に展開していくため、これまで進めてきた施策の継続を基本としながらも、所信の中でお示しした5つの政策の柱の具体的な推進を重視した、新たな時代へ向けた堅固な第一歩となるよう予算編成を行ったところであり、その総額を620億5千8百万円としたところであります。
3.明るい未来につながる持続可能なまちづくり
(1) ILCを基軸としたまちづくり
私はこれまで、さまざまな機会を設け、市民の皆さんにILCを基軸としたまちづくりについて申し上げてまいりました。
国においては、文部科学省が設置した有識者会議において進められてきた、実現に係る諸課題の検証の最終報告がまもなく取りまとめられると見込まれております。
昨年11月に、カナダで開催された国際会議において、ILCを段階的に整備する、いわゆる「ステージング」が承認され、また、本年1月には、わが国の国会議員連盟と産業界、研究者、関係省庁がフランスとドイツを訪問し、国際交渉に向けた第一歩を踏み出すことができたと報告を受けたところであり、早期誘致に向けた動きが加速するものと大いに期待しているところであります。
市では、政府等に対し早期にILCの日本誘致を表明するよう、関係自治体、関係団体と連携して、要望活動をこれまで以上に展開するとともに、ILC実現に向けた地域の熱意、地域の取組などを国内外に広く情報発信をしてまいります。
また、ILC実現を見据えたまちづくりについては、市民の皆さんと一緒に考え、取り組んでいくことが何よりも重要であることから、ILCの最新の動向をタイムリーに市民の皆さんにお知らせをしてまいります。
(2) 資源エネルギー循環型のまちづくり
ILCを基軸としたまちづくりと合わせ、これからのまちづくりにおいて中心となる取組が、資源・エネルギー循環型のまちづくりによる「エネルギーの地産地消」であります。
当市は、岩手県で初めてバイオマス産業都市として選定されたところであり、バイオマスなどのさまざまな地域資源をエネルギーとして活用する“エネルギー好循環のまち”を目指し、地域資源の更なる活用や廃棄物の資源化の推進などを図ってまいります。
また、一関地区広域行政組合によるエネルギー回収型一般廃棄物処理施設の整備についても、廃棄物を資源として活用し、その焼却によって発生するエネルギーを有効に活用する機能を持った施設とし、併せて、人々の交流や環境教育などの機能を持たせることにより、地域の発展につながるものにしたいと考えており、市民の皆様のご理解をいただけるよう同組合、平泉町と連携しながら取り組んでまいります。
当市が東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に提案したことで始まりました「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」により、2020年東京オリンピック・パラリンピックの金・銀・銅のメダルをつくるため、小型家電からリサイクル金属を回収する取組が全国各地の自治体で展開されております。
このプロジェクトの小型家電の回収に、多くの市民の皆さんからご協力をいただいているところであり、これを機に今後とも廃棄物の排出抑制や資源化に努めてまいります。
4.重点的に取り組む施策
それでは、平成30年度において重点的に取り組む施策について申し上げます。
(1) 若者の定着
まずは若者の定着についてであります。
当市においても、進学や就職を機に若者が地元を離れる傾向が続いており、若者の地元定着を図るための取組が一層重要となっております。
この若者の地元定着を進めるためには、働く場の確保が不可欠であることから、地場産業に対する支援や女性、若者の起業・創業への支援に取り組むとともに、若者の地元企業への理解促進を図るため、ハローワークやジョブカフェ一関、大学などと連携し、企業見学会やインターンシップへの支援、さらには女性がいきいきと働くためのキャリアアップの支援に取り組んでまいります。
また、雇用の場の確保だけではなく、地域への誇りや愛着を持ってもらうことが何よりも大切であり、そのためには、若者自身とふるさと一関をつなぐものが必要であると認識しております。
私は、若者と一関をつなぐものとしては、地域の歴史や文化というものが非常に重要な役割を果たすのではないだろうかと考えており、そのために、地域文化に対する理解を促進し、また、その保存や伝承にこれまで以上に積極的に取り組んでいく必要があると考えております。
自分たちの地域や文化に誇りを持ち、胸を張って「ふるさと」を語ることができるそういう若者を育てていく努力をすれば、自ずと一関という地域の継続と発展の力となると信じているところであります。
(2) 子育て環境の充実
次に、子育て環境の充実についてであります。
当市の人口減少の大きな要因として、少子化の進行が挙げられます。
市の将来を担う子どもたちへの支援は、これからのまちづくりには欠かせない取組であり、これまで取り組んできた施策の継続を基本としながら、一人の子どもが生まれてから社会人になるまでの成長過程に応じ、点から線、線から面へと支援をしてまいります。
まず、安心して出産・子育てができるよう、助産師の育成・確保に向け助産師の有資格者に対する復職促進の取組などを進めるとともに、妊娠期から出産後間もない時期の支援の充実と、乳幼児と家族が安心して屋外でのイベントなどに参加できる環境づくりを推進してまいります。
地域全体で子育て家庭を支援していく取組の普及・啓発を進めるとともに、引き続き子育て支援広場を開催し、就学前の親子に交流の場を提供してまいります。
また、施設統合による認定こども園の整備と併せて、小学生が放課後に安全に活動できる居場所を確保するため、放課後児童クラブの整備を進めてまいります。
医療費無料化の対象年齢を、県内の市では初めて高校生まで拡大するとともに、すべての妊産婦の医療費を無料化するなど、子育て世代の経済的負担の軽減を図ってまいります。
(3) 移住・定住の促進
次に、移住・定住の促進についてであります。
若者の地元定着と併せ、UIJターンなどによる当市への人の流れを強める取組も進めていくことが重要となってまいります。
まず、移住定住の促進については、移住を希望している方への空き家情報の提供や住宅取得に対する助成などにより、市外から人を呼び込み、新たな人材を地域で受け入れるための環境整備に取り組んでまいります。
また、引き続き農村定住・就農支援員による相談窓口を開設し、就農意欲のある定住希望者が安心して当市での暮らしをスタートできるよう支援をしてまいります。
さらには、子育てや多世代同居に必要な増改築やバリアフリー改修への支援などを推進するとともに、公共施設におけるトイレの洋式化を集中的に進め、市民が安心して住み続けることができるまちづくりを進めてまいります。
(4) 一関の情報発信
次に、一関の情報発信についてであります。
全国的に知名度が高まってきている全国地ビールフェスティバルや一関・平泉バルーンフェスティバル、全国ご当地もちサミットなど、これらのイベントをはじめ、今年、熊野大社の分霊をこの地に勧請し1300年を迎える室根神社の特別大祭など、一関のイベントを通じて当市の観光情報を全国に発信してまいります。
また、首都圏における地産外商の取組やもち食文化等の地域資源を活用した取組など、当市の魅力を市内外に効果的に情報発信するとともに、市内の多くの産業分野の振興に波及するよう取組を進めてまいります
(5) 高齢化社会に対応したまちづくり
次に、高齢化社会に対応したまちづくりについてであります。
少子高齢・人口減少社会にあって、高齢者は、地域の担い手として期待されており、「支えられる側」から「支える側」へ、そして相互に支え合う関係の構築が重要となってきます。
住み慣れた地域で、いつまでも健康でいきいきとした生活を送ることができるよう、地域包括ケアシステムの構築への取組を進めるとともに、一人ひとりが役割を持って活躍できる地域社会の実現に向けて取り組んでまいります。
支援を必要とする高齢者は、今後増加していくと見込まれており、介護人材の確保、育成、定着に向けた取組を推進する必要があります。
また、地域が一体となって要支援・要介護者を支える地域づくりに向け、地域の実情に応じた介護予防活動や地域の支え合い活動の推進を図るとともに、高齢者の社会参加、社会貢献活動を促進してまいります。
(6) 健康長寿のまちづくり
次に、健康長寿のまちづくりについてであります。
子どもからお年寄りまで、市民自ら健康づくりを実践できるよう支援するとともに、生活習慣病予防と重症化予防の取組の強化に努めてまいります。
また、ピロリ菌検査の実施により、若年期からのがん予防について啓発するとともに、がん検診受診の促進を図ってまいります。
誰もがスポーツを楽しむことができる環境整備に努めるとともに、各種教室やイベントを開催し、市民の運動習慣の定着にも努めてまいります。
(7) 人財の育成
次に、「人財」の育成についてであります。
当市の基幹産業である第一次産業の振興のため、将来の中心的な担い手となる新規就農者の育成を図るとともに、子どもたちの英語力や国際感覚を培い、グローバルな人材の育成に取り組むほか、産業技術分野や地域文化をつなぐ人材の育成にも取り組んでまいります。
また、スポーツの分野においても、一関の若者が活躍しており、このような市民の活躍は、地域に元気と活力を与えてくれます。
現在、韓国の平昌で開催されている冬季オリンピックのスノーボード競技に、当市の岩渕麗楽選手が日本代表として出場しております。
昨日はビッグエアの予選を3位で通過し、決勝での活躍を願い市民の皆さんと共に大きな声援を送りたいと思います。
当市出身のアスリートが、「みんなのメダルプロジェクト」により都市鉱山から回収された金で作られた金メダルを胸に、ふるさとに凱旋する「金の里帰り」が実現することを願い、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたアスリートの育成にも力を入れてまいりたいと考えております。
(8) 世界の財産を生かすまちづくり
次に、世界の「財産」を生かすまちづくりについてであります。
一関・平泉を中心としたこのエリアには、平泉の世界遺産を中心とした世界に誇れる数多くの地域資源があり、その地域資源を生かしたプロジェクトも今後のまちづくりの大きな柱となってまいります。
骨寺村荘園遺跡の世界文化遺産「平泉」への拡張登録及び束稲山麓地域の世界農業遺産の認定については、県と関係市町が一体となり、実現に向けて取組を進めてまいります。
また、食と農の景勝地など、地域特性を生かしたインバウンド観光を推進する取組を進めてまいります。
(9) 東日本大震災からの復旧復興
東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質による汚染対策については、農林業の生産基盤の再生、側溝土砂の最終的な処分方法など、未だ解決に至らない課題も多く、国へ対応を強く求めていくとともに、原発事故前の環境を一日も早く取り戻すため、引き続き重点的に取り組んでまいります。
農林産物については、汚染された牧草等の一時保管施設での安全管理を継続しながら、引き続き牧草の処分を進めるとともに、稲わらや堆肥等の処分方法については、あらゆる可能性について検討してまいります。
また、汚染されたほだ木や落葉層の処理を適切に進めるとともに、原木しいたけ生産の再開に係る助成を継続し、平成30年度からは新規参入や規模拡大に対する助成も行うなど、産地再生に向けた生産者の取組を支援してまいります。
東日本大震災から、間もなく7年の歳月が経とうとしております。
私は、沿岸津波被災地と内陸部の地域経済の発展、地域間交流を活発にするためには、いわゆる横串道路となる路線の整備が重要であるということを、さまざまな機会を通じ国や県に要望してまいりました。
岩手県の県央部においては、東北横断自動車道釜石秋田線や宮古盛岡横断道路の整備が進められておりますが、県南部においては、規格の高い道路整備の計画がない状況であります。
このような中、国道343号は、当市だけではなく陸前高田市等の沿岸自治体にとっても極めて重要な路線であることから、交通の難所を解消するため、平成26年には、9万余名の署名を集め、県に対して新笹ノ田トンネルの早期事業化を要望したところでありますが、未だに整備計画が示されないところであり、このような状況は、非常に残念であります。
今後においては、新笹ノ田トンネル整備促進期成同盟会とともに、新トンネルの実現に向けた関係機関への働きかけを今まで以上に強く行ってまいります。
また、当市に隣接する陸前高田市及び宮城県気仙沼市に対しては、職員派遣等を中心とする後方支援を行っているところですが、沿岸津波被災地の復興は、いまだ道半ばという状況にあり、隣接する当市としてこれを継続していくことが、当市としての「近助」の精神に沿うものと考えており、この後方支援を継続してまいります。
5.中東北の拠点都市一関の形成
次に、中東北の拠点都市一関の形成に向けた平成30年度の取組について、総合計画のまちづくりの目標に沿って申し上げます。
(1) 地域資源をみがき生かせる魅力あるまち
まず一つ目の目標は、地域資源をみがき生かせる魅力あるまちについてであります。
まちを持続的に発展させていくためには、地域を支える産業を振興し、一人ひとりが力を発揮できるよう、活躍の場を創出することが必要であります。
当市の基幹産業である農業の振興のためには、農業所得の向上が不可欠であり、そのために農畜産物の高付加価値化や販路拡大等の取組を進めるほか、集落営農組織の育成や担い手への農地の集積を図り、農業の振興と農村地域のコミュニティを維持、発展させる取組を進めてまいります。
併せて、森林資源の活用を図りながら、林業の振興に努めてまいります。
工業の振興及び企業の育成については、技能、技術の習得を目指す研修の機会を設けるとともに、地域企業の品質管理能力の向上を図り、質の高いものづくりを支援してまいります。
また、企業間の活発な交流を促進し、新産業、新技術の創出などの支援に努めてまいります。
さらに、企業の設備投資等への優遇制度や立地環境の優位性などをアピールし、企業誘致と併せ事業誘致にも積極的に取り組んでまいります。
商業の振興については、関係機関と連携した経営相談や経営指導の充実、起業支援など、工業分野も含めて、中小企業の経営の効率化、健全化を促進してまいります。
また、商店街の賑わいを取り戻すため、新規創業や事業承継などへの支援を行うほか、空き店舗への入居支援や集客につながるイベントの開催を支援してまいります。
一次産業、二次産業、三次産業が連携し、一関産の農林畜産物を活用した商品開発や販路拡大に向け、農商工連携を積極的に推進してまいります。
人口減少社会の中で地域経済を維持し、所得向上や雇用創出を図るため、一関・平泉エリアにおける観光地域づくりをマネジメントする組織として活動を始める、日本版DMO候補法人を平泉町とともに支援してまいります。
また、昨年9月に一本化された一関市観光協会を支援し、オール一関での観光地域づくりを推進してまいります。
(2) みんなが交流して地域が賑わう活力あるまち
二つ目の目標は、みんなが交流して地域が賑わう活力あるまちについてであります。
活力ある地域となるためには、市内外で交流し、連携し、市民活動や経済活動を活性化させていくことが必要であります。
人々の交流の基盤となる道路の整備や維持管理については、安全安心で快適に利用できる道路環境、交通安全施設の整備や道路インフラ、橋梁の長寿命化に努めてまいります。
公共交通については、高齢化の進展に伴い、高齢者の生活の足の確保が何よりも重要であることから、市営バスやデマンド型乗合タクシーなどにより市民の生活の足を確保してまいります。
また、地域の実情に合った、効果的で効率的な公共交通ネットワークの構築に向け、新たな公共交通計画の策定に取り組んでまいります。
地域づくり活動を活発化させるために、自治会等の活動の支援やいちのせき元気な地域づくり事業、地域おこし事業などにより地域づくり活動を支援してまいります。
若者が地域の中で交流することにより地域が活発になる、そのような環境を作り出していくことも行政の役割であると考えています。
その一つとして、独身男女の出会いの場を提供する結婚活動の支援に努めるとともに、結婚に伴う新生活のスタートアップに係る支援も行ってまいります。
(3) 自ら輝きながら次代の担い手を応援するまち
三つ目の目標は、自ら輝きながら次代の担い手を応援するまちについてであります。
将来にわたって誇れるまちづくりを進めるためには、家庭、地域、学校、企業、行政等が一体となり、次の世代を担う人材を育てることが必要であります。
次の世代を担う子どもたちの育成のため、総合教育会議での意見を踏まえ定めた、「教育に関する大綱」に掲げる基本目標である「学びを広げ、人と地域が共に育ち、一関の未来を創る」この実現に向けて、教育委員会と連携して取り組んでまいります。
学校施設の整備については、平成30年度から東山小学校の校舎等の改築に着手するほか、花泉地域統合小学校の新校舎建設に向けた取組を進めてまいります。
社会教育については、生涯の各時期に応じた多様な学習機会を提供するとともに、市民センターの指定管理者に対し、社会教育事業に関する研修や指導、助言体制を充実させてまいります。
(4) 郷土の恵みを未来へ引き継ぐ自然豊かなまち
四つ目の目標は、郷土の恵みを未来へ引き継ぐ自然豊かなまちについてであります。
豊かな自然は市民の心の支えであり誇りでもあります。この貴重な自然の恵みを確実に次の世代へ引き継いでいかなければなりません。
低炭素社会を実現するために、住宅用の新エネルギー利用設備の設置を支援するなど、新エネルギー・省エネルギーの取組を推進するとともに、空き家の適正管理、利活用等の環境対策を進めてまいります。
汚水処理については、公共下水道の整備を進めるとともに、浄化槽設置の促進を図り、公共用水域の水質保全と快適な生活環境の向上に努力してまいります。
また、水洗化率を向上させるため、下水道等に未接続の世帯や事業者に対し早期の接続を促すとともに、施設の適切な維持管理に努めてまいります。
水道事業については、施設の適正な維持管理と経営基盤強化を推進するとともに、老朽化した施設の更新や耐震化を計画的に進め、水道水の安定供給に努めてまいります。
(5) みんなが安心して暮らせる笑顔あふれるまち
五つ目の目標は、みんなが安心して暮らせる笑顔あふれるまちについてであります。
誰もが健康で心豊かに自立した生活を送るためには、市民みんなが一体となって安全な環境を築き、互いに支え合い、安心して暮らせることが必要であります。
安心な暮らしの実現のためには、医療の確保が極めて重要になりますが、地域医療については、市内の医師の不足や偏在などが深刻な状況であり、また、周産期医療を取り巻く環境も厳しさを増していることから、医師確保のため当市独自の医師修学資金貸付事業の継続した取り組みを進めるとともに、新たに助産師の資格取得に向けて、修学資金貸付制度の拡充をするなど、医療人材の確保に努めてまいります。
併せて、地域医療を守るため、国保藤沢病院と市内県立病院等が取り組む総合診療専門医等の養成事業を支援するとともに、医療機関の適切な受診のあり方の周知に努めてまいります。
障がいのある方々への支援については、障がい者自身が一層の自立と社会参加を目指せるよう、基幹相談支援センターを中核とした相談支援体制の充実を図るとともに、医療的ケアを必要とする障がい者を介助する家族の負担軽減を図るなど、障害福祉サービスの提供体制の拡充に向けた取組を推進してまいります。
国民健康保険については、平成30年度からの国保都道府県単位化に伴い、県が示した標準保険料率などにより国保税率等の見直しを行います。
平成30年度はアイオン台風から70年目となることから、より一層の防災意識の啓発に努めるとともに、地域防災力の向上を図ってまいります。
また、自主防災組織や防災リーダーの育成強化に努めるとともに、消防施設や設備等の計画的な更新整備、防災行政情報システム、FMあすも等により災害時の迅速で的確な情報提供に努めてまいります。
治水対策は、一関にとって地域を守る生命線でもあります。一関遊水地事業をはじめとする治水事業の早期完成を目指して取り組んでまいります。
また、土砂災害の警戒が必要な危険箇所の点検を実施するとともに、土砂災害警戒区域等の情報や警戒避難体制の周知を図ってまいります。
以上、平成30年度の取組の中から主なものを申し上げました。
6.市政運営の基本
昨年末に、旧一関市の第二代市長松川昌藏氏のご息女から、一関市に対して、後藤新平先生の書を寄贈いただきました。
「雲従龍」(雲は龍に従う)という書であります。
これは、「物事を成し遂げようとする固い決意をすれば、同じ志を持つものが共鳴して一気にエネルギーが融合し、個々の力では到底なし得なかったことが実現できるようになる。」そのような意味が込められていると伺ったところであります。
この意味するところは、私が考えている協働のまちづくりの、まさに原点とも相通じるものがあると感じたところです。
協働のまちづくりは、地域の将来を築いていくためには欠かせない仕組みであり、これを、さらに充実させていく必要があります。
そのため、新しい一関市地域協働推進計画の策定に取り組むとともに協働のまちづくりがより深く根付くよう各地域、各分野でリーダーとなる人材の育成や企業の参画を促進してまいります。
当市の財政見通しは、今後も厳しい状況が見込まれています。
こうした中で、各種施策を推進していくためには、その裏づけとなる財政の健全性の確保が必要であります。
このため、引き続き市民起点に立った質の高い行政サービスの提供ができるよう、一層の行政改革を進める必要があります。
また、公共施設等総合管理計画に基づき、持続可能な施設運営の取組を進めてまいります。
近隣自治体との連携、すなわち中東北エリアでの連携については、これまで若者の地元企業への就職支援や男女の出会いの場の創出、観光分野での連携などに取り組んできたところでありますが、これまでの連携が一層深いものになっていくよう取り組み、スケールメリットを生かした地域課題の解決につなげてまいりたいと考えております。
また、近隣自治体に限らず、友好都市である和歌山県田辺市との関係をより親密なものにするなど、当市と歴史的ゆかりのある自治体との交流にも積極的に取り組んでまいります。
私は、市長就任以来、市政の主役は市民であると申し上げてきました。
古く平安時代には、主役は「貴族」でした。それから400年経った鎌倉時代になると主役は「武士」に変わり、そしてさらに400年経過した江戸時代になると主役は「役人」に変わりました。このように、これら各時代における主役は、およそ400年の間隔で転換期を迎えています。
現在は江戸時代から、とうに400年が経過しています。
とすれば、今、私たちは既に役人気質からの脱皮をしていなければならないはずなのです。
市民の側も「お上」という見方を捨て「協働のパートナー」としての意識・自覚を持たなければなりません。
今、主役は「市民」です。その主役である市民の皆さんと行政の信頼関係を築いていくために、市民への説明責任を果たしながら、行政サービスの品質の向上に向け職員と一丸となって取り組んでまいります。
7.おわりに
私にとって20年来の念願でもあるILCが、実現に向け着実に進んでおります。
ILCの誘致が実現することにより、この地域が、この一関が、30年、50年、100年以上にわたり、科学技術の研究拠点として世界をリードしていく地域となり、そして人口減少等の市が直面する課題に対しても、光明が差し込むものになるものと信じております。
ILC受入れを見据えて、ILCと、当市が目指すべき資源・エネルギー循環型のまちづくりを融合させ、新しい産業の創出、雇用の創出、これにつながるような取組をしていかなければなりません。
私は、この国際プロジェクトを一関発展の基軸として位置づけ、次の世代を担う子どもたちが、夢と希望と誇りを持って活躍できる地域となるよう、ふるさと一関の発展のために必ずやILCを実現させるよう全力で取り組んでまいります。
平成30年度は、まさに一関市の大きな節目の年となります。
一関というまちを明るい未来につなげる「持続可能なまちづくりの堅固な第一歩」となるよう、全力で市政運営に邁進する決意でありますので、議員各位並びに市民の皆さまのご理解とご協力を心からお願い申し上げます。
以上、今後の市政運営についての所信の一端と、施政方針について申し述べさせていただきました。