市長所信表明(令和7年10月21日)
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10月21日に開かれた市議会定例会で佐藤善仁市長が述べた所信表明の全文を紹介します。 |
本日ここに、一関市議会10月招集会議本会議が開催されるに当たり、今後の市政運営について、私の所信の一端を述べさせていただきます。
先ずもって、この度の一関市議会議員選挙におきまして、見事当選の栄に浴されました議員各位に対して、心からお祝いを申し上げます。
おめでとうございます。
私も、この度の一関市長選挙において、引き続き市長の職を担わせていただくこととなりました。
選挙自体は無投票ではありましたが、無投票が無競争を意味するものではないと思っております。また、無投票が白紙委任を意味するものでは決してないとも思っております。佐藤善仁に何票、佐藤善仁ではない候補者に何票という、数字が示されることのない選挙であり、より以上の責任の重さを感じているところであります。
市勢の発展に全力を傾ける決意を新たにいたしました。
これまでの、そしてこれからも大きな課題である人口減少による市民生活への影響、産業や教育、福祉など、多くの面へのダメージは、計り知れないものがあります。
人口減少がさらに加速度的に進む中で、ダメージを最小限に食い止め、まちの活力を維持していくことは、容易なことではないと考えております。
その上で、さらに力強いまちを実現するということが極めて困難なことであることは、十分承知しているつもりであります。
しかし、活力を維持することだけを目標にするのではなく、さらにその上を目指していかなければ、この難局に立ち向かうことはできません。
私は、これまでの4年間、「最大の課題は人口減少」とし、若者や女性が活躍できるまちを目指してきました。
多くの方々のお力添えをいただきながら進めてきたハード・ソフト両面にわたる取組によって、一関市は、着実に次なる飛躍への基礎を固めてきたものと捉えております。
これを確実なものにすることによって、人口減少が加速する中にあって、ふるさと一関の力強い新時代を実現したいと考えております。
そして、子どもたちに「力強い一関」をしっかりバトンタッチしてまいります。
これからの4年間を考えた時、2つのことが言えます。
一つは、これまでの4年間で築いてきた礎は、「これから」の4年間で具体的な動きとなって現れてくること。
そしてもう一つは、これまで築いてきた礎に、若者、女性、外国人、子育て世代、さらにシニア層など、それぞれの対象に応じた施策を実施することによって、さらに厚みを増すこと、であります。
そこで、これからの4年間のまちづくりについて、次の3つの目標を掲げたいと思います。
一つ目は、まちを伸ばす、地域を元気にする。これにより、人口減少に打ち勝つ「力強い一関を実現」する
二つ目は、次代を担う若者が、一関で学び、一関で実践し、一関で活躍する。それが可能となるステージを一関につくる
三つ目は、シニア世代が、健康長寿を実感し、現役時代と変わらず自己実現できる環境づくりを進める
であります。
この3つの目標達成のために行われる施策の数々は、まち、ひと、しごとの3つの区分に整理することができます。
そして、この3つの区分からアプローチしていくことが、政策としての実効性を高めることになると考えております。
さらに申し上げれば、この3区分の関係性、すなわち、
「しごとづくり × ひとづくりが、まちづくり・地域づくりにつながる」
との考え方、アプローチのしかたが、人口減少に対処するための基本方程式になるものと考えております。
この基本方程式に従って、順に申し上げますと、まず、
一つ目は、「しごとづくり」となります。
働く場を増やす、稼ぐ力を強める。
地域の活力を維持していくためには、まず「しごと」です。
二つ目は、「ひとづくり」です。
人が輝く、人を育てる。
一人ひとりが輝く「ひと」が中心の社会でなければなりません。
三つ目は、「まちづくり・地域づくり」です。
まちを伸ばす、地域を元気にする。
「働く・稼ぐ」と「人が輝く・人を育てる」の掛け算で、まちの活力を高めます。
この3本の柱、基本方程式は、これまでの4年間と変わらないものであります。
次に、この3区分それぞれの中身について、順に申し上げます。
まず、一つ目の「しごとづくり」についてであります。
市内の高校を卒業する生徒の約70%が進学、約15%が市外就職で、合わせて約85%が市外へ流出する現状にあります。
進学や就職で一関を離れた若者が学校で学んできたこと、職場で経験してきたことを、市内で生かせる仕事が必要です。
仕事の種類、働き方の多様性、働く場所の数を増やし、若者や女性の希望に沿った働く場をつくっていかなければなりません。
そのため、
・ 若者やその保護者が地元の企業を理解する取組
・ 一関に関心を持ち、一関の課題解決に資する取組や活動に対する資金面などでのサポート
・ 起業やスタートアップ、事業承継、第二創業、就農への支援
・ 行事、イベントなどのアウトソーシングによる地域経済の循環
に取り組んでまいります。
二つ目の「ひとづくり」について申し上げます。
これまで取り組んできた若者や女性、外国人など、引き続き多様な人材が力を発揮できる環境づくりを進めてまいります。
そのため、
・ 市内の高校生が、より深く、より広く学び、自らを高める環境づくり
・ 市内の高校が教育現場で直面している課題の解決
・ 全国の高校生年代の若者が、一関で学び、一関を学ぶ環境づくり
・ 台湾など海外も含めた専門学校生、高専生、短大生、大学生年代の若者が、一関で学び、一関で活躍する環境づくり
に取り組んでまいります。
若者活躍、女性活躍への取組、DXの推進、子育て環境の充実などの面については、数字としては全国トップグループの評価を得るまでに成長しました。
この動きをさらに実感できるレベルに磨き上げてまいります。
また、若者の活躍とともに大切なのは、シニアの活躍です。
シニア世代が健康長寿を実感し、「若いものには負けない」、一人ひとりの思いをカタチにできるよう、仕事の面でも、暮らしの面でも現役時代と変わらず自己実現できる環境づくりに取り組んでまいります。
三つ目の「まちづくり・地域づくり」について申し上げます。
地域の資源や特色を生かした付加価値の高いサービスを生み出し、人や経済が市内で循環し、成長するまちをつくってまいります。
また、市民が日々の利便性や安心安全を実感し、暮らしやすさ、生きやすさをストレートに認識できる環境づくりに取り組んでまいります。
さらに、交通インフラや産業基盤の整備、学校跡地の活用を進めてまいります。
そのため、
・ 一ノ関駅東口工場跡地の開発、一関商工会議所の移転後の跡地活用
・ 一ノ関駅西側中心市街地の土地活用を促す施策や立地適正化計画の策定による、駅を中心としたエリアの活性化に向けたハード・ソフトの両面からの取り組み
・ 国道4号四車線化、新笹ノ田トンネル、JR一ノ関駅東西自由通路、JR磐井川橋梁の架け替えをはじめとする各種インフラ整備の確実なステップアップ
に取り組んでまいります。
次に、個別の重要課題について何点か申し上げます。
まず、これまで取り組んできた東日本大震災の原発事故の影響からの脱却については、確実に前進させてまいります。
特にも、農林業系汚染廃棄物のうち汚染稲わらについては、その処分方法の一つとして国が検討を進めている、放射能濃度を低減する実証事業の導入について、関係機関と調整してまいります。
国際リニアコライダー(ILC)については、世界中の研究者が結集する大型国際科学技術拠点となるものであり、その実現による効果は、国の成長戦略に大きく貢献するものであります。
当市を含む北上サイトが、国内候補地として一本化されてから12年が経過しました。
これまでの学術的検討を踏まえ、国家プロジェクトとして、政府主導による国際的な議論を進めることが不可欠です。
建設候補地の自治体として、国への働きかけをさらに行うとともに、ILCの実現を見据えた人材育成、多文化共生の推進など、受入れ環境の整備にも努めてまいります。
一ノ関駅東口工場跡地につきましては、非常にポテンシャルのある土地であり、人口減少という市の最重要課題に対処するため、雇用や賑わい創出の場、新たなイノベーションが生まれる場をコンセプトとした利活用を進めてまいります。
令和8年の秋には、NECプラットフォームズ株式会社から当市へ土地が引き渡される予定であり、その後、土地の強みや将来性を十分に生かすため、官民連携の手法により段階的な開発を行ってまいります。
広大な市域を有する当市では、市道や上下水道、公共施設などの既存インフラを維持・管理していくことが大きな課題です。
限られた財源の中で、どこに暮らしていても、道路、水道、消防などのインフラを享受できる環境を、行政として維持していかなければなりません。
一方で、一ノ関駅東口工場跡地やJR一ノ関駅東西自由通路、新笹ノ田トンネルなど、これまでの間、検討を進めてきた市の懸案事項が次のステップに進み始めるタイミングでもあります。
有利な財源である合併特例債や過疎債の発行は令和12年度までとなっていることからも、後年度の負担に意を配しながら、インフラの老朽化対策やハード面での整備を進めてまいります。
次に、市政運営の基本について何点か申し上げます。
まず一つ目として、説明責任と市民参画を両輪にして、協働のまちづくりの考え方のもと市政運営を進めてまいります。
二つ目として、将来世代まで見渡した行政運営を行い、安定的な行財政運営に努めてまいります。
令和8年度から始まる新しい総合計画実施計画においては、合併以来続いてまいりました地域ごとの事業費の枠は設けないこととして、まちづくりを進めてまいります。
三つ目として、同じ日常生活圏にある近隣自治体との連携は不可欠であり、そのためにも、平泉町や宮城県北の各市を重要なパートナーと位置づけ、引き続き連携を深めてまいります。
四つ目として、DX(デジタルトランスフォーメーション)をさらに進め、効率性と利便性の両面から、市民の満足度の向上を目指してまいります。
以上、今後の市政を進めるうえでの基本的な方向性を申し上げましたが、まちづくりを進めていくためには、どのような施策に取り組んでいくかの考えをしっかりと持ち、それをどのように進めていくかの視点を定め、着実に取り組んでいくことが必要であると考えております。
私は、先の市長就任式において、職員に対し、「一隅を照らす」という言葉と、「We can change」という言葉の二つを使い、人口減少をはじめとした様々な課題に対し、果敢に挑戦し、見えない出口を突破していくことの重要性を伝え、失敗を恐れず、変えていくこと、挑戦していくこと、そして自らも変わることを目指してほしいと述べました。
人口減少をはじめ、急激に変化する時代にあって、日々の暮らしを守っていくためには、実に多くのものを変えていかなければなりません。
また、何かを変えるためには、自らが変わることが必要となります。
市役所というチームとして、チェンジに挑戦してまいります。
新一関市が誕生して20年となりました。
これまで、合併前のそれぞれの地域で育まれてきた豊かなコミュニティを尊重し、共感し合いながら、一体感の醸成が図られてまいりました。
また、それぞれの地域の自然や文化、伝統などのほか、人々の内面的なものも合わせ「郷土の宝」を探し、見つけ、育ててきた20年でもあります。
令和8年度からスタートする新しい総合計画基本構想は、「ひとりひとりが輝く 挑戦し続けるまち いちのせき」をまちの将来像として掲げました。
合併後のこれまでのまちづくりを踏まえ、今を生きる私たち、そしてこれから産まれてくる子どもたちが幸せを実感しながら暮らすことができるよう、私たち一人ひとりの様々な挑戦を認め合い、暮らしやすさを実感できるまちとするため、一関市長としての責務を果たすべく、全力を尽くす覚悟であります。
市民の皆様並びに議員各位のご理解とご協力をお願い申し上げ、今後4年間の市政運営に対する決意とさせていただきます。
ご清聴ありがとうございました。

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